2006年6月25日(日)
#322 ジョー・パス「BLUES FOR FRED」(ビクター音楽産業VDJ-1164)
昨日のパーティ&二次会で燃え尽きてしまい、いまは完全に放心状態なので(笑)、きょうは短評にて失礼。
ヴァーチュオーゾこと、ジョー・パスのソロ・レコーディング。88年録音。エリック・ミラーによるプロデュース。
不世出のダンサーにして、俳優、歌手でもあったフレッド・アステア(1899-1987)にささげた一枚。
アステアの代表的レパートリーに、自作のブルース2曲を加えた構成。
もうこれが最高の選曲。アーヴィング・バーリンの「チーク・トゥ・チーク」をはじめ、ガーシュウィン兄弟の「オー、レディ・ビー・グッド」「フォギー・デイ」、コール・ポーターの「ナイト・アンド・デイ」など、ジャズ・ヴォーカル・ファンならなじみの深い名曲ぞろい。
これらを、オーバー・ダビングなし、すべて一発録りで演奏するわけだが、さすがギターの匠(たくみ)、ジョー・パスは、愛用のアイバニーズ一本で、見事弾き倒している。
考えてもみて。まったくバックにリズム楽器がない状態で、すべてのナンバーを弾いてるんだぜ。
スローなバラードだけならまだしも、非常にスウィンギーな曲調も、すべて自分自身の内側にあるリズム感だけで弾くわけだから、これを名人技といわずしてなんといおう。
エラとのコラボ盤のときにも強く感じたことだが、彼の弾くベース・ライン、本当によくスウィングしている。
本盤録音当時、パスは59才。まさに酸いも甘いもかみわけた世代。音楽のありとあらゆる要素を、ギター一本にぶちこんで、その可能性を最大限に追究している。
そして、単なるテクニックひけらかしに終わっていないのも、素晴らしい。
なにより、フレッド・アステアの「粋」なひととなりを愛し、その「粋」を音楽で表現してみせた。ジョー・パスもまた、アステア同様、偉大なエンタテイナーであった。
パスもこの世を去って12年になるが、その歌心あふれるプレイは、末永く聴きつがれていくに違いない。
<独断評価>★★★★