2009年9月27日(日)
#93 ミッキー・ベイカー「Midnight Midnight」(Atlantic Blues: Guitar/Atlantic)
シンガー/ギタリスト、ミッキー・ベイカーの59年のインスト・シングル曲を。ベイカーとカーティス・アウズリーの共作。
ミッキー・ベイカーといってもピンとこないムキも多いだろうが、R&Bデュオ、ミッキー&シルヴィアの片割れのミッキーといえば、少しは通りがいいかもしれない。
ミッキー&シルヴィアは56年にデビュー、「Love Is Strange」(邦題・恋は異なもの)をヒットさせた男女デュオ。ふたりともエレクトリック・ギターを弾くというのがその特徴で、実際ベイカーがシルヴィアにギターを手ほどきしていた。
ふたりはその後も何曲かヒットを放ち、3年後にコンビを解消している。シルヴィアはその後、ロス・インディオスに参加‥‥というのはもちろん冗談で、70年代にソロで「Pillow Talk」というお色気たっぷりなディスコ・ナンバーをヒットさせたから、そこのお父さんもご存じかも。
相方のミッキー・ベイカーのほうも、その後ソロとしてギターに歌に活躍しておりまして、きょうの曲は、アトランティック在籍時代にヒットさせている。
これが実にカッコよろしい。ミディアム・テンポのシャッフル・ビートに乗せて、メリハリあるギター・プレイを聴かせてくれるのだ。
ジャズ、ブルース、R&B、ロックンロールと、さまざまな要素を匂わせるそのプレイは、なんともクール。
その手のブルーズィな音楽を志すギタリストたちにとって、格好のお手本といえますな。
ファースト・ソロ・アルバム「The Wildest Guitar」にも収録されているが、そこで演っている曲を見ると「夜も昼も」「枯葉」「オールド・デヴィル・ムーン」「落葉の子守り唄」といったジャズ・スタンダードあり~の、自作のブルースあり~のと、実に選曲の幅が広い。
あえて歌はうたわず、ギターのみで勝負しているが、フレーズの豊富さ、表現の巧みさにより、決してあきさせるということがない。コール・ポーターの「夜も昼も」が見事なゴーゴー風ダンス・ナンバーになってしまっているのには、ただただビックリ。
ピー・ウィー・クレイトンの「ブルース・アフター・アワーズ」の流れをうけ、後にはフレディ・キングの一連のインスト・ナンバー(「ハイダウェイ」「ザ・スタンブル」など)にもつらなっていく、ギター・インストの傑作、それが「Midnight Midnight」。
とにかく、ビートがメチャご機嫌なのであります。
ベイカーは今年、84才。音楽活動の話はここのところとんと聞きませんが、いまも元気でギターをつまびく生活を送っているというんだったら、いいんですが。生涯現役プレイヤーを貫いて亡くなった、あのレス・ポール翁のように。
レス・ポールにもまさるとも劣らぬ、「リビング・ギター・レジェンド」、それがミッキー・ベイカーであります。必聴。