2004年7月25日(日)
#224 氷室京介「メモリーズ オブ ブルー」(東芝EMI TOCT-6890)
ひさしぶりの更新である。長いこと休んでしまい、申し訳ない。
で、きょうはヒムロックこと氷室京介のソロ・アルバム。93年リリース。
カメリアダイアモンドのCFソングとして使われ、大ヒットした「KISS ME」をフィーチャー、全10曲を収録。
氷室といえば、最近はあまり表舞台に出てこないが、このアルバムを出した93年あたりはフル回転で活躍してたな。
筆者が思うに、彼の魅力はひとえに「声」。これに尽きると思う。
彼の声って、筆者が考えるに、シンガーにとってひとつの理想形といえるんじゃないかな。
そりゃあ、彼のルックスとか、彼の持っている世界観とか、行動美学とか、そういったものもファンたちにとっては大きな魅力なんだろうけど、筆者にとっては、そのへんはあまり琴線に触れてこない。正直いって。
やはり、あの少しハスキーで張りのある「声」あってこその氷室。他は「おまけ」みたいなものだ。
さて、当作品はアレンジャー兼キーボーディスト西平彰を軸に、数多くの実力派ミュージシャンを集め、ロック・アルバムとしても一級品の仕上がりとなっている。たとえば、ギターでは故大村憲司、佐橋佳幸、小倉博和(ふたりは現在「山弦」というデュオとして活躍中)といった顔ぶれ。
彼らの気合いの入ったソロもまた、氷室のヴォーカル同様、本アルバムの聴きどころといえそうだ。
個人的に好きなのは、やはり「KISS ME」。この曲、カラオケで何十回歌ったことか…。
普通のエイトビートなんだが、ものすごくスピード感があってカッコいい演奏。そしてなんといっても、氷室のスムースな、ヴェルヴェットをおもわせる歌声は最高だな。
ほかにはエアロスミス風ハードロック「SON OF A BITCH」もごキゲン。ノリのよさでは「KISS ME」と互角の出来。
でも、その一方ではしっとりしたバラード「RAINY BLUE」でも圧倒的な歌のうまさを見せつけるし、ラストの「WILL」ではこれまでの彼のイメージをがらっと変えるような、くぐもった声で「語り」に近いヴォーカル・スタイルを聴かせる。
これすべて、彼の作曲によるもの。サウンドにもさまざまな変化をつけ、一枚を飽きさせることなく聴かせる。さすがである。
ところで、現在彼があまりマスメディアに登場しなくなった(出来なくなった?)背景について、少し触れておきたいのだが、やはりそのあまりに「オレはカリスマ」的な自己演出が、災いしているとしか思えない。
筆者にいわせれば、その人間がカリスマかどうかは世間が決めることであって、自分から言い出すことじゃないだろ、とんねるずみたいな「ネタ」としてのカリスマでもない限り。
音楽誌はもとより、一般誌に登場するときまで、カリスマ演出をメディア側に強要すようになっちゃ、そりゃ煙たがられるでしょうが。
氷室さん、あんたはその「声」だけで十二分にスゴいひとなんだから、過剰な演出なんて不要なんだよ。ステージ以外のところでまで、妙なナルシスキャラを演ずるなんて意味ないって。
その点、元同僚の布袋寅泰のほうが、自然体で気取ってなくてずっといい感じだ。B'Zの稲葉浩志だって、変に二枚目ぶってないから、人気があるんだと思う。歌番組でコメディアンにいじられたって、歌をうたう瞬間に最高にカッコよけりゃそれでいいじゃん。
せっかくの稀有な才能なんだから、一部のコアなファンの専有物的存在にならずに、もっと広いグラウンドで活躍してほしいと思うよ、氷室京介には。
彼になら、自分自身の音楽活動だけでなく、他のアーティストのプロデュースも期待出来そう。なんたって、すべてのロックバンドの記録を塗りかえたひとなんだから。彼の今後に期待したい。
<独断評価>★★★☆