2004年8月6日(金)
#230 安全地帯「Juliet」(キティ H12K 20109)
CDなる音楽メディアが登場してから、20年余りがたつ。
最初のうちは再生用ハードウェアもやたら高価だったし、単価もアナログ盤よりやや高めで、なかなか普及しなかった。
しかし、登場して数年後には、アナログ盤に追いつき追い越し、さらに何年か後には、アナログ盤の製造を廃止させるほど優勢になった。
そう、80年代後半は、なんともめまぐるしい、メディア交代劇の時代であったのだ。
そんな中で、それぞれのアーティストも、既存のアナログメディア(ビニール盤、カセット)、新しいデジタルメディア(CD、MD)、いずれを使ってどのようにリリースしていくのが効果的か、頭を悩ましていたにちがいない。
今日取り上げたのは、安全地帯の16枚目のシングル。87年12月リリース。
これはCDシングルなのだが、当時としては非常に珍しい12cm盤。かといって、現在「マキシシングル」と呼ばれるカテゴリに入るものではない。たった2曲しか入っていないし(笑)。
この次の曲の「月に濡れたふたり」からは、またいつもの8cmサイズ、紙ケース入りのCDシングルに戻ったという記憶がある。
つまりは、非常に「実験」的な商品だったのだと思う。
8cmシングルという商品、レコードショップの店頭に並べて売るとき、そのハンパなサイズが昔からネックとなっていた。
ダウンサイジングは世の中全般の流れではあるのだが、ときには、不都合も生じる。
あまりにジャケットが小さく、ラックでは見出し(アーティスト名&曲名)の面しか見えないので、お目当てのアーティストの一枚を探すのが不便極まりない。
そういう意味で、12cmの、のちにマキシと呼ばれる形態のCDシングルの登場は、不可避だったのだと思う。
筆者の手元にも、8cmサイズのCDシングルが何十枚かあるにはあるのだが、いったんボックスにしまってしまうと、なかなかひっぱり出して聴くということがない。
それに対し、12cmものはアルバムと同サイズなので、ラックに並べて保管出来、聴きたいときにすぐ取り出すことが出来る。あきらかに後者の「勝ち」なのだ。
実際、2004年現在のCDシングルは、ほとんどが12cmでリリースされている。
メディアの形態は、リスナーの使い勝手に合わせて、次第に変化していく、そういうことなんだろうな。
さて、肝心の安全地帯の音楽について、語ることをすっかり忘れていた。スマソ。
安地(これって、あまりいい略称だとは思わないけどね。なんか遺体の「安置」とか、「アンチ〈Anti〉」を連想させるんで)の人気は、87年には残念ながらピークを過ぎていた。別に音楽の質が低下してしまったとは思わなかったけど、他のもっと若いバンドに人気がシフトしてしまった、そういうことだと思う。
もともと、ヴィジュアルより音楽性そのもので勝負するタイプのバンドなんで、それはいずれは避けられない事態だったと思うのだが。
以前のような、数十万枚のセールスから、10万枚未満、さらには数万枚台に落ち込むようになってしまった安地。
この状況を見て、そろそろ潮時と考えたのか、93年には活動停止を宣言するまでになる。そして、玉置浩二はソロ活動に専念してしまう。
でも、最近では、再び昔のメンバーを呼び集めて、マイペースながら活動を再開している。
これは、なんともうれしいことだ。「売れる・売れない」に振り回されることなく、自分たちのやりたい音楽をやっていく。これは、プロ、アマチュアを問わず、あらゆるバンドにとって理想のありようなんだから。
過去のように大ヒットを出そうが出すまいが、安全地帯は安全地帯。大人が聴くにたえうる、良質の音楽を生み出し続けて欲しい。応援してるよ。
<独断評価>★★★