2024年2月24日(土)
#324 ジョン・メイオール・アンド・ザ・ブルースブレイカーズ「All Your Love」(Decca)
#324 ジョン・メイオール・アンド・ザ・ブルースブレイカーズ「All Your Love」(Decca)

ジョン・メイオール率いるブルースブレイカーズ、66年リリースのアルバム「Bluesbreakers With Eric Clapton」のトップ・チューン。オーティス・ラッシュの作品。マイク・ヴァーノンによるプロデュース。
オーティス・ラッシュはこの曲を59年にコブラよりシングル・リリースして、ヒットさせた。ラッシュの一番の代表曲ともいえるナンバーだ。
7年後、白人ブルース・ミュージシャン、ジョン・メイオールがこうしてカバーしたことで、さらに世界的にも知られるようになったのだ。
バックのブルースブレイカーズはスタート当初、ロジャー・ディーン、ジョン・マグヴィー、ヒューイ・フリントというメンバーだったが、65年にギターのディーンが脱退して、その後釜に元ヤードバーズのエリック・クラプトン(当時わずか20歳)が加入したのである。
若き天才ギタリスト・クラプトンの参加により、先駆者メイオールの存在も、一躍注目を浴びるようになった。クラプトンもまた、メイオールの元で自らのブルース演奏、そして歌をさらに深めることが出来た。
言ってみれば、両者はウィン・ウィンな関係にあったといえる。クラプトンは、わずか1年数か月の在籍ではあったが。
この「All Your Love」では、メイオールがリードボーカルをとっている。オリジネイター・ラッシュの渋めの声とは対処的な、ややうわずった甲高い声が印象的だ。
彼の歌は、いわゆる上手い歌ではないのだが、ブルースとは技巧よりも個性で勝負する音楽ジャンルだと言えるので、こういうのも十分あり、だろう。
愛を求める悲痛な心の叫び、これがメイオールの「All Your Love」の本質だと思う。
そんな彼の歌を、完璧にサポートしているのが弱冠21歳のクラプトンだ。
ヤードバーズ時代はテレキャスターを使って明るく軽いトーンでプレイしていたが、ブルースブレイカーズではレスポールに持ち替えて、その太く厚みのあるトーンでギターを最大限に泣かせている。これも本曲の聴きどころ。
原曲より心持ちスローなテンポで、繰り広げられる重厚な演奏を楽しんで欲しい。
このカバー・バージョンがあったからこそ、われわれ日本のリスナーもオーティス・ラッシュという、不世出の黒人ミュージシャンを知ることが出来た。
ロック史、ブルース史上、この1ピース無くして「物語」は始まらなかった、マジでそう思うよ。