2000年11月某日
#360 フラワーカンパニーズ「怒りのBONGO」(アンティノス AICL-2041)
フラカンといえば、95年のメジャーデビュー以来、ネオGSみたいな扱いをされていたので、私もてっきり「へなちょこバンド」「なんちゃってバンド」のひとつかと思っていた。
しかし、今年の5月4日に日比谷野音でやったイベント「MUSIC DAY 2000」にシークレット・ゲストで出てきたフラカンをたまたま聴いて、ブッとんだ。
とにかく、他の若手出演バンドとは音の集約力がまるきり違うというか、メンバー4人の音がピタッとすきまなく重なっていて、もの凄く「耳にクる」音なんである。(この際、音の大きさは殆ど関係ない。)
幾何学的にたとえていうなら、角度の違う4本の直線が、完全にただひとつの点だけで交差している、そういう感じである。ふつう、どんな上手いバンドでも、一点だけで交わる、という状態はまれである。たいてい二点、三点で交差するようなばらけた状態になるのに、その日の野音のフラカンは、まさに単点交差の状態であった。
乗合いのイベントゆえ、たった4曲だけのライブであったが、全身全霊での演奏、もうそれだけで燃え尽きたという感じがあった。ステージを終わってインタビューを受けていたメンバー達はヴォーカルの圭介を始め、みな、表情が空ろだった。
実際、その前後の「怒りのBONGO」ツアーのレヴューをいろいろなHPで見たが、結構ステージには出来不出来があったようで、いってみれば、私はフラカンにとって空前絶後の瞬間を目撃したのかも知れない。
しこうして、このアルバム「怒りのBONGO」、通称イカボンである。
このアルバムは、その狂気に紙一重のステージほどではないにせよ、もの凄い質・量のパワーがこめられている。特に素晴らしいのは圭介のマウスハープの音色で、ブルース畑のひと以外でここまでこの楽器を極めた日本人ミュージシャンはいない、とまで言えるだろう。
また、竹安堅一のギターも進境著しい。すぐれたロック・ギタリストの条件として「ピッキングのノイズまでもがイカしている」というのがあげられると思うが、M⑫「JUMP」あたりの音は、その域にまで達している。間といい、抑制といい、ニュアンスに富んでいて、文字通りシビレる。若手アマチュアミュージシャンは、どうしてヴィジュアル系ギタリストなんかを真似て、彼のようなギタリストをフォローせんのかねー。残念だ。
現在のフラカンのセールス状況にはかなり不満があるが(アルバムでせいぜい1、2万枚だろう)、まあいい。いいものが売れるとは限らんのがこの業界の常だが、本物のわかる人にはいずれわかる。それまで解散せんで、活動し続けて欲しいと切に思う私である。
<独断評価>★★★★