NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#438 サム・クック「You Send Me」(Keen)

2024-06-17 07:57:00 | Weblog
2024年6月17日(月)

#438 サム・クック「You Send Me」(Keen)




サム・クック、1957年9月リリースのシングル・ヒット曲。クック自身の作品。バンプス・ブラックウェルによるプロデュース。

米国のシンガー、サム・クックことサミュエル・クックは1931年1月、ミシシッピ州クラークスデイル生まれ。牧師を父として、8人兄弟の5番目に生まれる。

33年に家族がシカゴに移住。クックは父の教会の聖歌隊で歌い、6歳の時に兄弟と共にシンギング・チルドレンというグループに所属する。

14歳でゴスペル・グループ、ハイウェイQC’Sに参加してリードシンガーとなる。

19歳で人気ゴスペル・グループ、ザ・ソウル・スターラーズのリードボーカルの座を、R・H・ハリスより継ぐ。同グループで「Jesus Gave Me Water」(スペシャルティ)を初レコーディング。

テキサス州トリニティを拠点としたスターラーズは、女性を中心に若いオーディエンスを集めており、ルックスのよいクックはその人気の中心だった。

56年、ゴスペル以外の曲をソロでスペシャルティより初リリース。ゴスペルナンバー「Woderful」をリメイクしたポップ・バラード「Lovable」だった。レコーディングはニューオリンズにて行われた。

このシングルはゴスペル・ファンを遠ざけないよう、デイル・クックという別名でリリースされたが、その特徴ある歌声でクック本人だとすぐ分かってしまったという。

当時所属のスペシャルティレーベルのオーナー、アート・ループの思惑と、クックと担当プロデューサー、バンプス・ブラックウェルが追求しようと考えるポップ・ミュージック像にズレがあり、両者は決裂。クックたちは同レーベルを去る。

57年、彼らはロサンゼルスで設立されてまもない独立系レーベル、キーンに移籍、そこで新たなスタートを切った。

本日取り上げた一曲「You Send Me」は同レーベルでのファースト・シングルである。それまでクックは「Sam Cook」と名乗っていたが、この曲以来eを付けて「Sam Cooke」の芸名を使うようになった。

作曲はクック自身であったが、彼の弟(32年生まれ)のLC・クックの名前でクレジットされている。曲は55年にはすでに書かれており、その年の冬にはギター伴奏のみのデモ版が作られ、最初のスタジオ録音は56年に「Lovable」と共に行われている。57年6月、再びロサンゼルスで録音されて、この曲はようやく日の目を見た。

曲調は「Lovable」同様、ゆったりとしたテンポのラブ・バラード。クックのちょっと鼻にかかったようなソフトな歌声が印象的な本曲は、小レーベルからのリリースにもかかわらず、全米で火がつく。

当初はカップリング曲の「Summertime」と両A面的扱いだったようだが、ラジオでオンエアされたのは圧倒的に「You Send Me」の方だった。瞬く間に全米で2週連続1位、R&Bチャートでも1位、約150万枚というスーパー・ヒットとなったのである。

このヒットによりたちまちクックは、老若男女を問わず米国中から注目を浴びるスター・シンガーとなった。いうところのオーバーナイト・センセーションであった。

当時、R&Bチャートでヒットするような黒人アーティストが、ポップチャートの首位にまで進出することは珍しかったが、クックは初手からその垣根を易々と超えて、白人層にも強くアピールしたのである。

本曲のヒットが、ソウル・ミュージックが全米を席巻するきっかけとなったのだ。

以降、クックはポップ、R&B両方のチャート常連となった。代表的なヒットには「Woderful World」「Chain Gang」「Cupid」「Twistin’ the Night Away」「Another Saturday Night」などがある。

不幸な事件によって64年12月に33歳で他界するまでの約7年、サム・クックはトップ・スターであり続けた。

その影響力の物凄さは、彼の曲をカバーするアーティストの数を見ただけで一目瞭然である。

デビュー・ヒットの「You Send Me」一曲に限っただけでも、ナット・キング・コール、ドリフターズ、エヴァリー・ブラザーズ、フォー・シーズンズ、ボール&ポーラ、ホセ・フェリシアーノ、アレサ・フランクリン、オーティス・レディング、サム&デイヴ、パーシー・スレッジ、シュープリームス、マンハッタンズ、ホイットニー・ヒューストン、スティーヴ・ミラー・バンド、ロッド・スチュワート、ヴァン・モリスン、マイケル・ボルトンといった具合であり、書き出すと際限がない。

ソウル・ミュージックを作った男、あるいはソウルの王様。呼称はいろいろとあるが、とにかく顔よし、声よし、曲よし(自作も多い)と三拍子揃った、希代のモテ男サム・クック。

彼のファーストヒットに、すでに凝縮されていたその才能と魅力を確認してみてくれ。





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