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[さる] 言葉を解く

2005-04-12 | ほうげん・ひょうげん

「~さる」言葉は否定文でよく使う→「~さらない」
使用例:
1)このペン書かさらない。─インク固まってるんでないの?
2)ファックス送らさってない。─切り替え式だべか?
3)シャッター押ささらない。─フイルム巻かさってないんでないかい?

これ、北海道弁です。前回の記事[~さる]言葉 の続きです。

みなさまからのコメント及び宇三九斎さんの記事(というかカテゴリ)「胡散臭い日本語学」から、色々勉強させていただきました。結局どういうことなのか、道産子の立場からまとめてみます。

対象を「物」に絞って話を進めます。
A-誰かが、または何かが「物」をどうのこうのする→誰か何か、が主語になる
B-「物」がどうのこうの…の状態になる→物なので意志はないが、物自体が主語になる
日本語には「A-どうのこうのする」と「B-どうのこうのになる」という、対応する動詞(ペアと呼びます)があるようです。

A とかす(太陽が雪をとかす) B とける(雪がとける)
A 割る(子どもが皿を割る) B 割れる(皿が割れる)
…というように。

でもAだけの場合もあるし、Bだけの場合もある。。。つまりペアがない。

例文 2)を解く
A 送る(私がファックスを送る) に対してのペア(B)がなかったので、作っちゃった!
B 送らさる(ファックスが送らさる) 
この場合、否定「送らさらない」の形ばかり使用されます。「送らさらない」の主語は私でもファックス機でもなく、ファックス・データというかデータが印字された紙切れ、ということでしょうね。

例文 3)を解く
A 押す(私がシャッターを押す) に対してのペア(B)がなかったので、作っちゃった!
B 押ささる(シャッターが押ささる) 
この場合も、否定の表現が多いです。「押ささらない」の主語は私でもカメラでもなく、シャッター・ボタン、ということになります。


では例文 1)はどうするのよ? …コレが悩みのタネでした。

A 書く(私が字を書く)  B 書かさる(字が書かさる)
この「書かさる」の主語は、私でもペンでもなく、字・線・図柄だと考えるとスッキリするんですけど、おかしいですか? ペンからインクが出ない状態だけじゃなく、紙がツルツルで書けない場合にも「書かさらない」は使うんですよ。

今一度、上記例文1)2)3)をご覧ください。動詞の手前に、「は」も「が」も「を」もありませんよね?
言ってる本人が、文法的に何が主語かわかっていないので、曖昧な表現をすることが多いのではないでしょうか。私も考えずに使ってましたから。

なぜ否定の場合が多いか、についてですが、肯定(できた場合)には主語は「私」で問題ないので、Aの表現でこと足りるからではないでしょうか。


実は、スペイン語にもこのような動詞の「ペア」があるんですよー。
A 割る・壊す→他動詞 ROMPER 
  El niño rompió el plato. 「子どもが皿を割った」

B 割れる・壊れる→再帰動詞 ROMPERSE 
  Se rompió el plato. 「皿が割れた」

そう、これが有名な?再帰動詞なんです。
ちなみにスペイン語では、皿が割れた責任を人が背負うような言い方より、Bの表現が好まれます。「だってボクが皿を落としたんじゃなく、皿がボクから落ちたんだよ」って、マジメに言いますから。

コメント
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