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「帰る」という動詞

2014-08-27 | くらべて文法(西・英)
『くらべて西和』でございます。

日本語で何気なく使っている「行く」「来る」「帰る」という動詞について、他言語と比較してみると思わぬ迷路に入り込んでしまいます。今日はその中で「帰る」について考えてみます。

家に帰る。国に帰る。などに使うこの「帰る」ですが、例えば会社で働いていて定時がすぎ、タナカさんの机がきれいに片付いているとき、同僚がやってきて:
「あれ、タナカさんは帰ったの?」
「もう帰りましたよ」
…というふうにも使います。

「帰った」「帰りました」
過去形でしょうか。タナカさんはまだ家に着いてないでしょうが、電車で家に向かっているところかもしれないし、もしかして寄り道してるかもしれません。でもそんなことは知ったこっちゃないのです。とにかく、タナカさんはタイムカードを押して会社を出ました。「帰っています」ではなく「帰りました」という過去なんですよね。

この場合タナカさんは、スペイン語的には:
regresó とか volvió というより、se fue (irse:立ち去る)…したのですよね。

日本語の「帰る」という動詞には「立ち去る」という意味も含まれているのだ、というあたりまえのことに今更気づかされます。

では「帰る」が「帰っています」という形になるとき、どういう意味なのでしょうか。
タナカさんの奥さんが里帰り中で居ない、というときは「いま妻は実家に帰っています」と言えますよね? これはスペイン語だと:
Mi mujer está en la casa de sus padres.
という風に、動詞は単に estar の現在形で良いのではないでしょうか。

辞書で探して、つい「○○=◇◇」とインプットしてしまいますが、守備範囲は各言語で違うものです。いつも何気なく使っている日本語の動詞を、場面ごとに吟味してみると、意外なことを発見してしまいます。

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