まんぼ~&ポパイ(魔法の言葉編)

2023年05月26日 | その他

ここは、1990年代のフランス領ポリネシア。

タヒチという名前の方が、一般的には通っているかも知れません。

現在ほどタヒチや水上バンガローの存在が世間には知られておらず、
訪れる人も少ない時代と言えば良いでしょうか。

とある調査機関から依頼を受けて、水上バンガローの桟橋の強度と
デザインについて、研究を行っているポパイ博士がいます。

強度を優先するとデザインが野暮ったくなり、反対にデザインを優先
すると強度に不安が残るため、折り合いの付く場所はないものか。

ポパイ博士は、そのような研究を1人で行っています。



ついに研究は最終段階まで来ており、試行錯誤のうえで辿り着いた
デザインで強度に問題がなければ、晴れて実験は成功になります。

しかし、カナズチのポパイ博士には、自分が実験材料となって桟橋
を渡るだけの勇気がありません。

誰か代わりに渡ってくれないかな~。

と思っているところですが、研究費用は既に底をついていますから、
もうアルバイトにお願いして桟橋を渡ってもらうのも難しい。

約束の期日も迫っているため、状況は決して良くありません。

博士は、無事に最後の実験を乗り越えることが出来るのでしょうか。



あっ! ヤンキースのTシャツを着て、野球帽にホットドッグ。

あれはアメリカ人じゃないかな。

数々の映画作品からも分かるように、アメリカが世界を救うことに
美徳を感じてるだろうし、あの魔法の言葉をかければ大丈夫だろう。

ちょっと、すみません。
強度の低い桟橋があるので、試しに渡ってくれませんか。

これまでに誰も渡った人はいませんから、あなたが世界初の挑戦者
ですし、ヒーローになれるチャンスですよ。

世界中があなたの挑戦や勇気に感動し、あなたの銅像がここに建ち、
あなたの顔がタヒチの紙幣になるのです。

あなたは伝説として、後世に永遠と語り継がれることでしょう。

「ヨシ、俺が最初に行ってやる。 ヒーローは誰にも譲らないぜ」

(簡単だな。 ヒーローになれるという言葉に弱いんだから)



あっ! ヒゲを生やしてスーツ、さらに裸足で革靴をはいている。

あれはイタリア人じゃないかな。

綺麗な人には、声を掛けないと失礼だと思ってるだろうし、ナンパが
挨拶代わりだろうから、あの魔法の言葉をかければ大丈夫だろう。

ちょっと、すみません。
強度の低い桟橋があるので、試しに渡ってくれませんか。

この桟橋の向こうに綺麗な人がいましたし、危ない桟橋を渡る勇気が
あることをアピールすれば、女性にモテますよ。

キャー、あの人は危ない桟橋を渡ってるー。 かっこいい~。

もちろん、ネットや雑誌で紹介されますから、さらにモテますね。
活躍の場を広げて、ドラマや映画にも出演しますから、またモテます。

この桟橋は、あなたを夢の世界へと導く架け橋なのです。

「私が渡りましょう。 この桟橋の先に綺麗な人がいるんですね」

(単純だな。 女性にモテるという言葉に弱いんだから)



あっ! カメラを持ち歩いていて、絶望的に服装がダサい。

あの人はまんぼ~さんじゃないか。 たしか日本人だったな。

軍事教育により、整列や行進が得意で、全員が同じ方向に進む習性
があるだろうから、あの魔法の言葉をかければ大丈夫だろう。

ちょっと、すみません。
強度の低い桟橋があるので、試しに渡ってくれませんか。

みんなが渡って行ったので、同じように渡って頂くだけなんです。

みんなが渡ったのに、1人だけ渡らないでいると、周囲から変わり者
みたいに思われますから、早く渡った方がいいですよ。

「みんなが渡ったと言われると、渡るのが嫌になってくるんだよな」

「誰もハンモックで寝ていないから、僕はハンモックで昼寝をすること
にしよう。 悪いけど、他の人をあたってよ」

(チッ、この人は整列や行進を乱すタイプの日本人だったな)



じゃあ、まんぼ~さん。 危ない桟橋を渡ればヒーローになれます。

「僕はヒーローになりたいと思わないし、なれる器だと思わないね」

「それにさ、みんなが渡った後だから特別感はないし、ヒーローに
なるのは僕よりも先に渡った人だと思うよ」

じゃあ、まんぼ~さん。 危ない桟橋を渡れば女性にモテますよ。

「仮にそうだとしても、みんなが渡ったことで、ある程度の安全性が
証明されているから、女性にモテるとは思えないけどな」

「桟橋を渡らせたいんだろうけど、そうは行かないよーだ」

「誰もやってないから、シュノーケリングを楽しんでこようかなっと」

(クソっ、いちいち腹が立つ人だな。 あの切り札を出すか)



まんぼ~さん。正直に言うと、僕は桟橋の強度の実験をしてます。

ギリギリまで強度を下げており、既に何人かが渡ってくれましたが、
そろそろ限界が近いのではないかと思ってます。

そう、いつ壊れてもおかしくない状態。

次の人が渡った時に桟橋が壊れて、海に落ちるかも知れませんね。
つまり、とても美味しいことになる可能性が高いのです。

美味しいところは、まんぼ~さんに持って行ってほしいな~。
本当は泳げるのに、泳げないフリとかも上手なんだろうな~。

というわけなので、この桟橋を渡ってくれませんか。

「渡ろうじゃないか。 本当の落ち芸というものを見せてあげるよ」

「水深や水温、風向きとかも気になるから、入念に調べておいてね」
「あと、落ちる時は斜め上から撮るようなカット割りでお願いします」

「壊れるということは、撮り直しが出来ないから気合いが入るぞ」

(チョロイな。 美味しいって言葉に弱いんだから)



結果的に桟橋は壊れることなく、実験は無事に終わりました。

3人が危ない桟橋を歩いたことで、ポパイ博士の欲しかったデータは
取れましたし、その内容は調査機関へと送られました。

現在のタヒチの各リゾートホテルに採用されている桟橋のデザインは、
彼らの行動が基礎になっているとか、いないとか。

・いつになれば俺はヒーローになれるんだ!
・桟橋の向こうに綺麗な女性はいなかった!
・壊れなくて、ぜんぜん美味しくないだろ!

このようなクレームが寄せられましたが、この程度は博士も織り込み
済みであり、知ったことではありません。

沢山の人が、オシャレで安全な桟橋を歩けるようになったのですから、
これで良かったのでしょう。

博士に踊らされ、納得がいかなかったまんぼ~も、タヒチ旅行専門店
としては、その後の近未来に満足しているのでは。

桟橋に関する物語だけに、オチなくていいのです。

めでたし。 めでたし。








































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