総務省や文部科学省、宮内庁などのIPアドレスから、行政に関わる内容からエンターテインメント関連までさまざまな項目が編集されていたことが、「WikiScanner」日本語版を使った調査で分かったちいうニュース。
すでに、各種掲示板で、話題になっている模様。
念のために説明すると「WikiScanner」とは、のWikipediaを編集した組織や企業が分かるツール。WikiScannerは、IPアドレスを入力すれば、そのIPから編集された内容を一覧表示できる。IPアドレスと組織名を対応させる仕組みも備えており、特定の組織が編集した記事や内容を確認できる。
これを利用して行政機関からの編集について調べたところ、総務省や文部科学省、宮内庁など(のパソコン)から、行政に関わる内容からエンターテインメント関連まで、さまざまな内容について編集があったことが判明したとのことだ。
詳しくは、各種掲示板で盛り上がっているので参照されたし。
さて、昨日、書きかけて止まってしまった続きだが、
今回、私が思ったことは、ウィキペディアの創業者、ジミー・ウェールズの精神についてだ。
ウィキノミクスの中で、
「誰もが無料で人類の英知にアクセスできる世界を想像してみてください。それこそ我々が目指す世界なのです」
とウェールズは語っている。
ウィキぺディアの目的は世界最大の百科事典をつくることにあり、誰でも編集者になれるオープンプラットフォームを用い、すべてボランティアで作られたものを無償で提供している。その背景には、複数のユーザー同士がコラボレーションすれば
長期的にはコンテンツが改善されていく、という考え方がある。
当然ながらウィキぺディアは完璧ではない。
質を保つ多大な努力は払われているがコラボレーションによるプロダクションというモデルにはリスクがつきものだからだ。
また、編集戦争や破壊行為にもさらされやすい。しかし、オープンであるからこそ
成長を続け、項目を増やし、継続的に事実の確認と更新が行われる。
(ここまで「ウイキノミクス」より)
「WikiScanner」はまさに、これらのリスクを回避するために重要な道具だ。
「WikiScanner」を開発したのは、カリフォルニア工科大学の大学院生Virgil Griffith氏。Wikipediaの項目を編集した人のIPアドレスを追跡する検索ツールを開発した。Griffith氏がこのツールを開発した直接のきっかけは、米連邦議会の議員事務所からその議員のデータが編集されたという報道だったとのこと。大企業や他の組織でも同じように利己的な姿勢で何かやっているのではないかと好奇心にかられ、知りたくなったという。
このデータベースは、Wikpediaのポリシーと、公開されている情報によって可能になっている。
Wikpediaでは、誰でも項目を編集できるが、すべての変更に関する詳細なログが保管されている。
ログインしたユーザーはユーザーネームでしか追跡できないが、無記名で編集するとIPアドレスの記録が残る。
ウィキペディアは自分で自分のことを編集すること自体は禁じていない。
あくまでも自分又は自らの組織に関して、百科事典づくりという視点で、好ましくない編集や削除が加えられることのみが問題なのである。
省庁や企業の場合、その組織の利益となるような、削除や編集がこれにあたる。
当初、私は各省庁が恣意的な書き込みや削除を行う危険性について危機感を感じた。
モチロン、そうしたことはこれまでもあったし、これからもなくならないだろう。
しかし、これまでも好ましくない編集や削除が行われた場合、事例による差はあれど、それらに対するチェック機能が働き、長期的には、内容は正しい方向に向かって進化してきた。
そして、今回の騒ぎにより、無記名の編集や削除は激減し、更にその流れは強まるだろう。
これに気付いたとき、マス・コラボレーションの持つ大きな力を感じた。
それにしても、どんな情報にしても、複数の情報をとったり、比較したり、裏をとったりすることは大切だ。
あらためて、「情報」とのつきあい方を考えさせてくれた一件だった。
というわけで、私が昨日、必死で読み返した本のご紹介。
まあ、今更なんだが、読むタイミングとしては、面白いかもしれない。
当然、ウィキペディアについても、詳しく書いてある。
「ウィキノミクス」~マス・コラボレーションによる開発・生産の世紀へ
(以下、アマゾンより)
内容紹介
不特定多数に開かれたもの造りが始まった。「フラット化」の次に来る、真のもの造り革命である。ウィキノミクスの行動原理は四つ――オープン性、ピアリング、共有、グローバルな行動。活発な“事業エコシステム”として数十万(あるいは何百万)ものパートナーが協力するという、今まで夢でしかなかった生産の形態が登場しつつあるのだ。先行するP&G、ボーイング、BMW、レゴ、メルク、IBMはすでにその大きな配当を享受している。
この潮流の敗者たちは、「単にウェブサイトを立ち上げ」、「囲った“庭園”をつくり」、「自らのみで革新を進め」、「データとソフトウェアを頑なに守ろうとする」。しかし、この大波に乗じる勝者たちのほうは、「活気あるコミュニティを立ち上げ」、「開かれた“広場”をつくり」、「ユーザーを巻き込んで革新に取り組み」、「データとソフトウェアを全世界に公開してみせる」。そして、本当の変革はこれから始まるのだ。
目次から
第1章 ウィキノミクス
第2章 嵐のなかの嵐
第3章 ピア開拓者
第4章 アイデアゴラ
第5章 プロシューマー
第6章 新アレクサンドリア人
第7章 参加のプラットフォーム
第8章 世界工場
第9章 ウィキワークプレイス
第10章 コラボレーションの精神
第11章 ウィキノミクス攻略法を作ろう
※詳細な目次は「目次を見る」をご覧ください
著者について
ドン・タプスコット(Don Tapscott);
シンクタンク兼戦略コンサルティング会社New ParadigmのCEOとして企業、各国政府を相手に活躍中。長年、情報技術の進展と、ビジネス、経済社会、文化のかかわりを見つめ続けてきた。著書はベストセラー『Paradigm Shift』、『The Digital Economy』をはじめ多数。
アンソニー・D・ウィリアムズ(Anthony D. Williams);
New Paradigmのリサーチ・ディレクターを務めるイノベーションと知的財産分野のエキスパート。
(以上、アマゾンより)
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