まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

春の夕餉

2010-03-03 15:19:53 | 飲んで幸せ・食べて幸せ
単身赴任の私には、東京にも別宅がありました。
この3年ほどは東京タワーの足下、増上寺を臨む東麻布のマンションに居を構えていました。
このたび、そこの借り主 (要するに私の妻ですが) の事情により、
引っ越すことになりました。
東麻布を離れるにあたって、2つ残念なことがあります。
ひとつは行きつけの飲み屋 Bar 510 とお別れしなければいけないことです。
もうひとつは、これも行きつけだったイタリアンレストラン Osteria Sughero とも、
お別れしなければいけないということです。
シェフの佐志原さんは一時期、テレビに出演して料理を作ったりしていましたし、
先日、「出没!アド街ック天国」 で東麻布が取り上げられたときも、
この店は取材されていました。
(ちなみに Bar 510 のほうは取材を申し込まれたけれどお断りしたそうです)
私たちは、そうやってテレビなどで取り上げられる以前から、
たまたまご近所に (徒歩1分) 美味しいイタリアンのお店を発見して、
それ以来ヘビーユーザーとして通いつめていたのですが、
引っ越してしまえばもうそういうわけにもいかなくなるでしょう。

というわけで、名残を惜しむようにスゲロでお食事をしてきました。
いつものようにまずはグラスでスプマンテを頂きつつ、
今日は何を食べようかじっくり作戦を立てます。
メニューには春らしい食材の名前がたくさん並んでいました。
文句なしに一発で決まるものもあれば、
あっちとこっち両方はムリだけどどっちにしようかと決断に悩んでしまうものもあります。
ああだこうだ議論したあげく下記のような構成にしてみました。

まずは、サヨリのマリネ・レモン風味です。
サヨリがプリプリです。
下に敷いてある葉っぱはチコリの一種だそうですが、
薄い黄色にピンクの斑点が春っぽさを醸し出しています。

次に、燻製サバとアスパラのオーブン焼きです。
鯖をシェフ自ら燻製にしたのだそうですが、
これは香りといい味といい絶品です。
アスパラガスも立派で、サバにかかっていたバルサミコ酢のソースを少しつけて食べると、
またゴージャスな感じになります。

そして、新物たけのこのロースト・アンチョビバターソース
春と言えばタケノコでしょう。
半分に切った切り口にアンチョビバターソースを塗って焼いてあります。
ソースのついていないところだけ食べて、タケノコ本来の味を楽しみ、
塗ってあるところを食べて、シェフの料理の腕を楽しみます。
タケノコはどこまで食べてよくて、どこからが皮なのかはっきりしないのですが、
アーティチョークのように口の中に入れてしゃぶりつつ、
食べられるギリギリの線を見極めていきました。
食べ終わったお皿の上はちょっと見苦しいことになっていますが、
タケノコを味わい尽くすためにはしかたないところです。

続いて、ハマグリと菜の花のスプマンテ蒸しです。
ひな祭りにハマグリは欠かせませんね。
スプマンテというのはスパークリングワインのイタリア語です。
日本料理屋なら酒蒸しにするところでしょうし、
それを洋風にして白ワインで蒸したりすることもありますが、
スプマンテ蒸しというのは初めてです。
スプマンテはほんの少量で、
そこにニンニクとハマグリから出た出汁で味がついていますから、
ものすごく濃厚なスープになっています。
当然それもスプーンで全部飲み干します。

そろそろ締めで、春野菜のオーブン焼きを選びました。
肉料理 (だったらホロホロ鳥とか) か魚料理 (だったら黒鯛だな) を
頼もうかどうしようか悩んだあげく、腹具合とも相談しつつ、
けっきょく最後は春野菜とパスタで攻めることにしようと決断しました。
野菜のオーブン焼きは毎回必ず頼むのですが、
今日はいつもと顔ぶれが変わっています。
写真では下のほうに隠れていてほとんど見えないのですが、シュガーキャベツ。
その名の通り、キャベツとは思えないほど甘みがあります。
右上の大きいのはモロッコいんげんだそうで、初めて食べました。
もちろん皮まで全部食べられます。
その上に乗っかっているのは沖縄産の島にんじん。
ゴボウみたいな見た目ですが、たしかににんじんです。
ヤングコーンとパプリカとほうれん草はこの季節に関係なくよく頂きますが、
パプリカの右下にちらっと見えているのは蕾菜だそうです。
初めて聞く名前です。
この時期に出回る山菜の一種なのでしょうか。
ほんのりとした苦みが春の味を感じさせました。

オマケの椎茸焼き
野菜を美味しい美味しいと言って食べていたら、
シェフが椎茸も焼いてあげましょうと言って出してくれました。
お父様がものすごく立派な椎茸を大量に持ってきてくれたのだそうです。
肉じゃないので肉汁ということばを使ってはいけないのでしょうが、
切り口から肉汁がしみ出してくる感じです。
ほんのわずかのオリーブオイルと塩だけで、素材の味をそのまま楽しみます。

自家製ソーセージのタリアテッレ・パプリカのクリームソース
自家製ソーセージをメインディッシュにするという手もあったのですが、
パスタも食べたかったので折衷案に落ち着きました。
タリアテッレというのはきしめんのような細長いパスタです。
フェットチーネとまったく見分けがつきませんが、
精確に言うと粉の配合とかが異なるのだそうです。
パプリカで作った黄色いソースが春らしさを演出してくれていました。

うーん、みごとな春の夕餉だっ。
こうやって書いていても、もう一度食べたくなってきます。
この店ではこういう幸せな時間を何度も過ごさせて頂きました。
スゲロとお別れするのは実に残念です。
でもまあたぶん、引っ越したあともはるばる通うことになるんだろうなあ。