まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

「反省ゲーム」 の闘い方 (その2)

2010-03-04 12:28:08 | お仕事のオキテ
「反省ゲーム」 で勝つためには、こちらが反省しているということを、
マスコミならびに一般視聴者に納得してもらわなければなりません。
こちらがどれだけ心底、反省しているかいないかはこの際問題ではありません。
相手から見て、こちらが反省しているように見えるか見えないか、
心から悔いているんだなと納得してもらえるかもらえないかが勝負です。
私がこれは Games of Perceptions であると主張し続けている所以です。

ぶっちゃけたことを言えば、本当にこのゲームに勝ちたいのなら、
プロを雇うのが一番です。
はっきり言って素人がこのゲームを闘い抜くのは至難の業です。
プロの助言をもらい、プロにセッティングしてもらって、
このゲームに臨むに越したことはありません。
いまどきの広告代理店などは、当日のシナリオを用意してくれるばかりでなく、
どんな服を着たらよいか、どんな言葉を選び、どんな表情をすればよいか、
お詫びのお辞儀は何秒くらいしていたらよいか、
いかなる質問にも感情的にならずに対応するにはどうしたらよいか、
等々を丁寧にレクチャーし予行演習までさせてくれ、
その上、記者会見場をどのように設定したら、
こちらが反省しているように見えるかまで計算して、段取りを整えてくれます。
(テレビカメラの位置を高くして会見者を見下ろすようなショットになると、
 反省しているように見えるが、逆にすると尊大に見えてしまう、など。)

みごとなプロの手並みを見せてくれたのが、ノリピーの謝罪会見でした。
一分の隙もなく完全なるプレゼンテーションが繰り広げられたと言っていいでしょう。
夫の職務質問の場から立ち去って、1週間も雲隠れしてしまうという、
ただひたすらマスコミを喜ばせるような、素人まるだしの逃走劇から一転、
タトゥーも隠し、衣裳から化粧まで完璧に整えられ、
薬物使用に関しても逃走劇に関しても心から反省している、
ということを一発でマスコミと世間に納得させてしまう会見でした。
たとえプロの仕事だとわかっていても、
いいんだよノリピー、きっとあいつが悪かったんだよね、
いつまでも応援してるから早く立ち直ってね、
と優しく声をかけてあげたくなってしまうプレゼンテーションだったと言えるでしょう。

いいプロを雇えばああいう窮地も乗り切ることができるわけですが、
プロを雇うとなるとそれなりの金額が必要になりますから、
私たちのような一般庶民がそのような恩恵にあずかれることはまずないでしょう。
とすると、見よう見まねで何とか自力でがんばってみるしかありません。
まずは、関係者全員で事前によく打合せをしておくことが必要です。
特に気をつけなければならないのは、
こちらが謝罪会見のつもりでセッティングしたわけでもないのに、
報道陣から問題点について突っ込まれてしまうという場合です。
繰り返しますがこれは Games of Perceptions なのですから、
こちらがどういうつもりで会見を設定したのかということは関係ありません。
なにか問題が発生していて、そこに会見の場が設けられれば、
彼らにとっては 「問題糾弾ゲーム」 のゲーム会場になるわけです。
最近では、「本日は○○に関する以外のご質問はご遠慮願います」 などと、
質問に制限を設けることがよくあるようですが、
そんなことお願いしてみたって時間のムダでしょう。
それで勘弁してもらえると思うなんて、このゲームのことも、
ゲーム相手のこともまったくわかっていないということをさらけ出しているだけです。
ですので、いつ実弾の撃ち合いになってもいいように、
準備を整えておく必要があります。

何よりもマズイのは実戦のその場で、打ち合せをしたり指示を出したりする行為です。
そのことは、船場吉兆やオリンピック選手の会見を見ていればわかるはずです。
それは、こちらの心の中の思いを声に出して言ってしまうのと同じくらい、
自滅的な行為です。
指示されないと何を言えばいいかわからないなんて、
心から反省していないということの証拠にほかならないからです。
技術的なことで言うならば、最近のマイクはむちゃくちゃ感度がいい、ということを、
肝に銘じておく必要があるでしょう。
どんなに小さな心のつぶやきも、声をひそめた指示のことばも、
すべてマイクに拾われてしまいます。
ですので、どうしても事前の十分な打ち合わせが必要になるのです。

事前打ち合わせでは、関係者全員で意思統一をはかっておかなくてはなりません。
そして、反省の意を示すことに決めたのであれば、
反省しているように見せるプレゼンテーションを完全に作り上げ、
徹頭徹尾、反省していることを演じ切らなくてはなりません。
「反省してまーす」 など言語道断です。
そんなこと言うくらいなら、これこれこういう理由で反省するつもりはありません、
とはっきり言明したほうがよっぽどよかったでしょう。
(いずれにせよ鎮静化は期待できませんが)
また、この期に及んで、(事実関係について) ウソをついたり、隠し事をするのは、
相手につけいる隙を与え、問題を長引かせるだけですので、やめましょう。
しかしこうやっていろいろ考えてみると、
やはり素人がプロ相手に闘いを挑むのはたいへんですね。
できることならこんなゲームに参加せずにすむものなら参加したくないですし、
万一参加する場合は私財をはたいてでもプロにお願いしたいものです。

トヨタはきっちりプロの指導を受けているようですね。
これまでのところよく闘っていると私は見ていますが、
日本のマスコミを相手にする場合と、アメリカで闘う場合とでは、
ちょっと勝手が違いますので、まだまだ予断を許さないところです。
引き続き健闘を期待したいと思います。