まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

ミカン箱の子ども

2010-03-21 12:27:46 | 教育のエチカ
私のホームページとブログの師匠である中間玲子先生のブログに、
「ミカン箱の子ども」 という記事を見つけました。
中間先生は2008年度まで福大にいらした心理学者で、
昨年から兵庫教育大学に勤めていらっしゃいます。
私のチャラけたブログと違い、中間先生のブログには深イイ話が多いのですが、
とりわけ、この 「ミカン箱の子ども」 には考えさせられてしまいました。
とにかく、読んでみてください。

「ミカン箱の子ども」 を読む

一昨日うちの大学院生が、近藤卓氏の 「いのちの尊さを育む教育」 という論文
(『教育と医学』、慶應大学出版局、2009年、所収) をレポートしてくれました。
近藤氏はスクールカウンセラーとしての臨床経験から、
子どもたちが 「なぜ自分は生まれてきたのか」、
「生きていていいのか」 という悲痛な叫びを発していると言います。
そういう子たちは自尊感情 selfesteem が低いので、
よく、子どもをもっと褒めてあげましょう、という言い方がされますが、
それだけではうまくいかないだろうと近藤氏は述べています。

近藤氏によれば、自尊感情には2つの領域があるのだそうです。
「社会的自尊感情」 と 「基本的自尊感情」 です。
前者は、「他者より優れていると実感することによって高まる感情の領域で、
他者との比較による相対的な優劣によって成立する感情」 です。
これに対して後者の基本的自尊感情は、
「信頼できる他者と、体験と感情を共有することを繰り返し、
それにより、他者との比較ではなく、自分はこれでいいのだと、
絶対的で無条件に自分を受け入れられる感情」 だそうです。
褒めてあげることによって育まれるのは前者の社会的自尊感情だけです。
最近の子どもたちの中には、基本的自尊感情が育っていないのに、
社会的自尊感情だけを肥大化させて何とか自分を保っている 「頑張り屋のいい子」 が多いと、
近藤氏は分析しています。
そういう子たちはふだんは元気よく普通に振る舞っていますが、
失敗や挫折を経験するとポキッと折れてしまうことがあるので、
気をつけなければいけないのだそうです。

基本的自尊感情が育たなかったのはなぜなのか、
基本的自尊感情を育ててあげるにはどうしたらいいのか、ということを考えていたところに、
たまたま 「ミカン箱の子ども」 の話に出会ったわけです。
親の何気ない作り話に、それでも精一杯喜んでみせるA君は、
そのままでも 「頑張り屋のいい子」 に育ったことでしょう。
しかし、大人なら誰でもわかる当たり前の事実をちゃんと教えてもらえたことによって、
A君は基本的自尊感情を取り戻せたのではないかと思うのです。
子どもに対してどんな話をしてあげるのか、どんなことばをかけてあげるのか、
大人は慎重に吟味していく必要があると思います。

うーん、それにしてもええ話や。
師匠、私泣いてしまいました