すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【サッカー日本代表】香川の最大の敵は「自分自身」だ

2015-06-26 23:59:45 | サッカー日本代表
ミスしてもネガティヴ・モードに陥らないメンタル・コントロール術

 香川の不調やその原因について過去いろいろ技術的な、あるいは戦術的な分析がなされてきた。もちろん理論づければいろんな見方ができる。だが香川の最大の敵は「自分」ではないだろうか。

 たとえば6月16日に行われたロシアワールドカップ・アジア2次予選のシンガポール戦。ブラジル・ワールドカップの結果を受け、香川は内心、期するものがあっただろう。メンタル的にいえば(無意識のうちに)自分で自分を追い込み、(意識的にかどうかは別にして)自ら高いハードルを設定して臨んだシンガポール戦だったのではないか。

 そしておそらくあの試合で彼のデキを決めたのは、前半11分の彼のあのシュートだ。右サイドにいた柴崎がダイレクトで出した縦パスに対し、ゴールに背を向けてボールを受けた香川。ワンタッチで鋭く反転し、ゴールに向き直ってカンペキなシュートを放った。だが信じられないことに、相手ゴールキーパーの超絶的なパンチングで防がれてしまった。

 勝負に「たられば」はありえないが、まだ前半早いうちのあのシュートが入っていれば、まさにあの試合は香川の日になっていただろう。精神的にプラスのスイッチが入って勢いづき、すべてのプレイがうまく行くポジティヴ・モードに入れたはずだ。それほどスポーツにおけるメンタルは死命を制する。

 そして香川という選手はおそらく、そのメンタルに人一倍左右されやすいタイプの選手なのだろう。あの入らなかったシュート以降、ガチガチに肩に力が入ってちょっとしたミスに顔を歪め、ネガティヴな表情を浮かべ続ける彼の姿が印象的だった。まるで日本代表の今後の行く末がそこに投影されているかのようだった。

 サッカーはよく芸術に例えられるが、芸術家であればあるほど完全主義者でちょっとした自分のミスが許せないものだ。常にパーフェクトで芸術的なプレイをする自分の姿が脳裏にあるだけに、現実がその通りに行かないと気持ちが腐ってしまう。チームメイトや観衆に「ダメな自分」を見られることに耐えられない。

 その結果、メンタル状態がますます悪くなり、自分で自分に負けてしまう。何をやってもうまく行かないマイナス・モードに陥ってしまう。繊細でマジメな完璧主義者ほど、そんな悪循環にハマりやすい。

 日本人選手が伝統的にシュート下手なのも、プレッシャーに弱いからだろう。日本代表の課題が「決定力不足」であり続けるのも、かなりの部分、メンタルに負うところが大きいのではないか。

 たとえばブラジル人などとサッカーをするとよくわかるが、彼らは「いい意味」でエゴイスティックだ。たとえば試合で自分がミスしたせいでチームが劣勢に追い込まれたとき、とたんに他人をどなりつけ「おまえ、何やってるんだよ!」などとやっていたりする。つまり何でも自動的に「他人のせい」になってしまうのだ。

 こういうタイプの選手はメンタルが強いし、失敗してもへこたれない。逆に「いまのはオレのせいだ」などと引きずってしまう生真面目な選手ほどハマりやすい。

 香川がメンタル・コントロールにどう対処しているかわからないが(専門のメンタル・トレーナーを抱えていたりするのだろうが)、たとえば自分が「いいプレイ」をするシーンを思い描くメンタル・トレーニングや、試合中にミスしたとき「その失敗プレイ」を自動的に「脇へ置いて」その試合中は考えないようにするメンタル・コントロール術、つまりいい意味での「思考のクセ」をつけることが大切だ。

 日本代表の今後は香川のメンタルにかかっている。いいプレイは自分のせい、悪いプレイは他人のせいにして、太く短く大胆にぶっちぎってほしい。

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