すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【ポーランド戦】フェアプレイで「勝った」世紀の凡戦 〜日本 0-1 ポーランド

2018-06-29 09:39:05 | サッカー日本代表
試合には負けたがイエローの数でGL突破

 子供のころ、学校の道徳の授業で先生から「フェアプレー精神は大切です」と教わった。確かにその通りだった。なにしろワールドカップのグループリーグを、「フェアプレー」で突破できるのだからーー。

 学校でそう習った日本の子供が成長すると、フェアプレーな大人になる。そんな大人が11人揃ったサッカーチームは、こうして優先的に決勝トーナメントに出られる。そういうレギュレーションだ。かつて「日本人はマリーシアが足りないところがダメだ」と言ったドゥンガはどうやらまちがっていたらしい。

 それはともかく。

 ともに0-1で負けた日本とセネガルは勝ち点、得失点差、総得点ですべて並び、最後は「フェアプレーポイント」でセネガルを上回った日本がコロンビアといっしょに決勝トーナメントへ進出した。

 いやはや、しかし内容はかなりグダグダな試合だった。録画してある映像を2度観る気もしない凡戦だ。いや、フェアプレーポイントで勝とうと、試合の終盤に安全にボールを回して時間稼ぎした日本のプレーを批判してるわけじゃない。そういうレギュレーションなんだから活用し、グループリーグ突破をめざすのは当然だ。時間稼ぎは非難されるような行為じゃない(心臓には悪いが)

 そうじゃなく試合内容が酷い。まずキックオフと同時に、酒井高徳が場違いな右SHのポジションにつくのを見て心臓がノドから飛び出そうになった。これはそういう試合なのか? これは合宿終わりに遊びで興じるミニゲームなのか? そんな破壊的なスタメンだから内容は推して知るべし。グループリーグ第2戦までの躍動感などカケラもない。あのひ弱な宇佐美が「良く見えた」くらいだ。

スタメン6人代えで主力を温存

 日本のフォーメーションは4-4-2だ。スタメンはディフェンスラインが右から酒井(宏)、吉田、槙野、長友。ボランチは柴崎と山口蛍。右SHは酒井(高)、左SHは宇佐美。2トップは岡崎と武藤(嘉)だ。大胆に6人もメンバーを変え、主力を休ませようという作戦である。

 気温36℃という暑さのせいか、日本はボールを引き出す動きがない。全員が突っ立ったまま、走らなくてすむ足元へ、足元へと、ゆるいボールをつけるだけだ。まるでスローモーション映像を見ているかのように動きが鈍い。展開も遅い。全員が足に重りをぶら下げているかのようだ。この日、柴崎が休ませてもらえなかったのは、何かの罰ゲームなのか?

 日本は最前線とディフェンスラインの間が間延びし、コンパクトに保ててない。そのため前へのサポートも間に合わなければ、後ろへのプレスバックも遅い。特にアタッキングサードで攻撃時には、前と後ろが前後2グループに分断されているようなありさまだった。また敵が走れば必ず人について行くため、日本は陣形を横に引き伸ばされたり、縦に奥行きを作られたり。ゾーンが間延びするのはそのせいもある。

 一方、動きが重いのは相手のポーランドもまったく同じだ。もしかしてグループリーグ敗退が決まった2チームが余興でやってるゲームなのか? これは。キリン杯よりユルい雰囲気だ。ポーランドも日本に劣らず前後が間延びし、そのため互いの中盤にはたっぷりスペースがある。まるで60年代のサッカーを観ているみたいだ。

 ポーランドは4バック。案外、最終ラインからのロングボールは少なめで、グラウンダーのボールでビルドアップしようとする。このとき日本は2トップの岡崎、武藤の前からの守備がいい。ミドルサードの敵陣側からプレッシングを始め、中間ポジションを取りながら、コースを限定してハメたい地域へ相手ボールを誘い込もうとする。

 ところが日本がいいのはこの局面だけだ。あとは相手ボールがミドルサードに入るや、ボールホルダーに対する守備が甘くなる。相手と距離を取りすぎ、自由にやらせてしまう。おかげでポーランドはクロスにしろ、パスにしろ、やりたい放題だ。とはいえすでに敗退が決まり消化試合の彼らには闘志など感じられない。まだグループリーグ突破が決まってない日本におつきあいしている感じである。

内容は散々、だがいいことずくめの日本

 日本はビルドアップ時に山口蛍がCBとSBの間に落ちたり、柴崎が両CBの間に下りて3バックになったりしている。だが工夫はすれど、有効なパスが思うようにつながらない。スタメンをランクダウンさせると、こんなに内容が劣化するものか?

 たまにパスが急所につながり日本が攻撃してボールを失うと、今度は「結果的に」ポーランドのカウンターになる。ポーランドはモッサリしているが……日本の守備組織が崩れているだけに、このカウンターが滅法こわい。決定的な形になる。何度か同じようなカウンターを食らい、キモを冷やした。

 そんななか、後半14分に山口蛍が必要もない局面でムダなファウルをし、FKから失点してしまう。恒例のセットプレイからの失点だ。悪いところだけはいつも通りである。試合はこれで万事休した。あわてて乾や長谷部といったレギュラー組を出してくるが、もはやメンバーを2人や3人代えたくらいじゃ、とても修正が効かないチーム状態になっていた。

 と、ここまでボヤキまくってきたが……客観的に考えれば、これがまた日本にとってはいいことずくめの結果なのである。内容は散々だが結果よし。まずグループリーグを突破できたこと。第一目標は達成だ。次に大胆にメンバーを落としたために、主力の原口と香川、昌子らは完全休養。大迫と乾、長谷部は半ドンとはいえ休ませられた。これは中3日で次の決勝トーナメント1回戦を迎える日本にとっては大きい。

 それに同時進行している裏の試合の終盤。0-1で負けているセネガルがもし点を取ったら日本の敗退は確定なのに、「点を取らないほう」に賭けて最後は日本の選手たちに時間稼ぎのボール回しをさせた西野監督の度胸には驚いた。

 とすれば試合内容は別にして、実は日本にとっていいことずくめだったこの試合の新聞の見出しはこんなところか?

「勝負師・西野、三たびの奇跡を呼ぶ」

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする