森保ジャパンは2つの概念のいいとこ取りだ
日本代表はもう長い間、攻撃的なアクションサッカーをするチームはポゼッション率が高く、守備的なリアクションサッカーをするチームはポゼッション率が低い、と相場が決まっていた。前者の例がジーコジャパンやザックジャパンであり、後者の例は岡田ジャパンやハリルジャパンである。
で、そうした過去の例から日本では、「ポゼッション率が高いチームは攻撃的で強い」という命題が定着し、常識とされてきた。そのため日本人の間にはポゼッション原理主義が岩盤のように定着し、「ゴールをめざすのでなくポゼッション率自体を高めること」を重視するような、目的を忘れた愚かなポゼッション信仰が蔓延してきた。
そんなゆがんだ日本の常識を吹っ飛ばしたのが森保ジャパンである。なぜなら彼らは、「ポゼッション率はそう高くないのに攻撃的で強い」からだ。ではなぜ森保ジャパンは、そんなサッカーができるのか? それは彼らがポジショナルプレイとストーミングのいいとこ取りをしたスタイルだからである。
中島と堂安はハーフスペースをうまく使う
ポジショナルプレイとストーミングは、いまヨーロッパ最先端のフットボールを二分している対立した概念だ。つまりこの2つのコンセプトがサッカー界でせめぎ合っているわけだ。
ポジショナルプレイという言葉は日本でもポピュラーになってきた。ポゼッションを大事にするこの概念を取り入れたチームとしては、プレミアリーグのマンチェスター・シティやチェルシーなどがあげられる。
一方、例えば森保ジャパンでも、中島と堂安というサイドの2人が絞り気味のポジショニングをしてハーフスペースをうまく使っている。またセントラルMFがSBとCBの間に下りてビルドアップしたりする。このことから、森保ジャパンもポジショナルプレイを志向していることは明らかだ。
だがそれだけでは話は終わらない。なんと彼らは、ポゼッション率を重視するポジショナルプレイとまったく相反する考え方であるはずのストーミングの影響も強く受けているのである。
嵐のように敵に襲いかかるストーミング
ストーミングとは、ポゼッション率はそう高くないのに暴力的に点を取る「ストーム」=嵐のような激しいプレイスタイルのクラブを指す。ヨーロッパでいえばリバプールやローマ、RBライプツィヒのほか、森保ジャパンでトップ下をつとめる南野が所属するRBザルツブルクもこのカテゴリーに入る。
ストーミングは、トランジション・フットボールとも呼ばれる。つまり攻守の切り替えの速さを重視するスタイルだ。ストーミングに分類されるチームは、(中島や堂安、南野がそうであるように)ボールを失うことを決して恐れない。「ボールを確実につなぐ」のでなく、失敗を恐れず成功率が50%以下のプレイにも積極的に挑む。
そしてひとたびボールを失えば、リトリートして自陣にブロックを作ったりしない。ボールをロストした瞬間に素早く攻守を切り替え、相手ボールに対し複数の選手が次々に襲いかかる嵐のようなゲーゲンプレッシングをかける。で、ボールをその場で即時奪回し、ショートカウンターを見舞う。どうだろうか? そう、森保ジャパンのスタイルそのものである。
一般にポジショナルプレーを重視するチームは、敵からボールを奪うといったんパスをつないでポゼッションを確立しようとする。森保ジャパンのようにポジショナルプレーを志向していながら、ボールを奪うと鋭い縦パスを入れて一気に速いショートカウンターを狙うチームはいわば異端児だ。
その意味で森保ジャパンは既成概念を超えている。ポジショナルプレイとストーミングのいいとこ取りをしたこの極東の異端児は、はたして次のワールドカップでどんな成績を収めるのか? いまから楽しみである。
日本代表はもう長い間、攻撃的なアクションサッカーをするチームはポゼッション率が高く、守備的なリアクションサッカーをするチームはポゼッション率が低い、と相場が決まっていた。前者の例がジーコジャパンやザックジャパンであり、後者の例は岡田ジャパンやハリルジャパンである。
で、そうした過去の例から日本では、「ポゼッション率が高いチームは攻撃的で強い」という命題が定着し、常識とされてきた。そのため日本人の間にはポゼッション原理主義が岩盤のように定着し、「ゴールをめざすのでなくポゼッション率自体を高めること」を重視するような、目的を忘れた愚かなポゼッション信仰が蔓延してきた。
そんなゆがんだ日本の常識を吹っ飛ばしたのが森保ジャパンである。なぜなら彼らは、「ポゼッション率はそう高くないのに攻撃的で強い」からだ。ではなぜ森保ジャパンは、そんなサッカーができるのか? それは彼らがポジショナルプレイとストーミングのいいとこ取りをしたスタイルだからである。
中島と堂安はハーフスペースをうまく使う
ポジショナルプレイとストーミングは、いまヨーロッパ最先端のフットボールを二分している対立した概念だ。つまりこの2つのコンセプトがサッカー界でせめぎ合っているわけだ。
ポジショナルプレイという言葉は日本でもポピュラーになってきた。ポゼッションを大事にするこの概念を取り入れたチームとしては、プレミアリーグのマンチェスター・シティやチェルシーなどがあげられる。
一方、例えば森保ジャパンでも、中島と堂安というサイドの2人が絞り気味のポジショニングをしてハーフスペースをうまく使っている。またセントラルMFがSBとCBの間に下りてビルドアップしたりする。このことから、森保ジャパンもポジショナルプレイを志向していることは明らかだ。
だがそれだけでは話は終わらない。なんと彼らは、ポゼッション率を重視するポジショナルプレイとまったく相反する考え方であるはずのストーミングの影響も強く受けているのである。
嵐のように敵に襲いかかるストーミング
ストーミングとは、ポゼッション率はそう高くないのに暴力的に点を取る「ストーム」=嵐のような激しいプレイスタイルのクラブを指す。ヨーロッパでいえばリバプールやローマ、RBライプツィヒのほか、森保ジャパンでトップ下をつとめる南野が所属するRBザルツブルクもこのカテゴリーに入る。
ストーミングは、トランジション・フットボールとも呼ばれる。つまり攻守の切り替えの速さを重視するスタイルだ。ストーミングに分類されるチームは、(中島や堂安、南野がそうであるように)ボールを失うことを決して恐れない。「ボールを確実につなぐ」のでなく、失敗を恐れず成功率が50%以下のプレイにも積極的に挑む。
そしてひとたびボールを失えば、リトリートして自陣にブロックを作ったりしない。ボールをロストした瞬間に素早く攻守を切り替え、相手ボールに対し複数の選手が次々に襲いかかる嵐のようなゲーゲンプレッシングをかける。で、ボールをその場で即時奪回し、ショートカウンターを見舞う。どうだろうか? そう、森保ジャパンのスタイルそのものである。
一般にポジショナルプレーを重視するチームは、敵からボールを奪うといったんパスをつないでポゼッションを確立しようとする。森保ジャパンのようにポジショナルプレーを志向していながら、ボールを奪うと鋭い縦パスを入れて一気に速いショートカウンターを狙うチームはいわば異端児だ。
その意味で森保ジャパンは既成概念を超えている。ポジショナルプレイとストーミングのいいとこ取りをしたこの極東の異端児は、はたして次のワールドカップでどんな成績を収めるのか? いまから楽しみである。