すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【国際親善試合】立ち上がりから彼らは「別人」に変身した ~ドイツ 2-1 フランス

2023-09-16 17:15:00 | その他の欧州サッカー
緊張感みなぎるドイツ

 ある種の「こわいもの見たさ」で、ドイツがフランスと一戦交えたゲームを観てみた。9月12日にドルトムントのジグナル・イドゥナ・パルクで行われた親善試合だ。

 ドイツは解任されたハンジ・フリック監督の後を受け、ルディ・フェラー暫定監督が指揮を執る。彼らは日本戦からスタメンを3人替えてきた。新たに先発したのはヘンリクスとター、ミュラーだ。

 試合開始と同時に、あのドイツが躍動した。「もう失敗は許されないぞ」ということだろう。プレースピードと強度が日本戦とはまったく違って見えた。「ビンビン」だ。

 逆にいえば親善試合で「勝った」「負けた」などといっても、その程度の尺度にしかならないわけだ。

 さて、そのドイツが早くも先制したのが開始4分だった。ニャブリとのパス交換でボックス左に侵入したヘンリクスが、左のポケットからマイナスの折り返しを入れる。これにゴール前のミュラーが、上体を前に倒したうまい胸トラップからボレーを叩き込んだ。

 その後もドイツはハイプレスをかけ、一方的に試合の主導権を握る。彼らのフォーメーションは左が高い4-2-3-1。フランスは4-4-2だ。

フランスの意気は上がらない

 一方のフランスはなんだか意気が上がらない。たまに彼らのボールになると、動きがスローで「鈍いなぁ」という感じだ。

 最終ラインで、かったるそうにボールを回す。明日のデートでどこへ行こうか考えてでもいるのだろうか?

 フランスは中央でポストにボールを当て、再展開する形をよく使っている。そして20分過ぎにギュンドアンが負傷交代したあたりから、徐々にギアを上げてきた。デートの場所が決まったのだろうか?

 この流れは後半に入っても続き、ドイツは押し込まれた。それでなくても彼らは心なしか緩んだ感じだ。もはや前半の「負けたら殺される」みたいな切迫感はない。1-0で進めばよし、というノリなのだろうか。ただし失点しないだけの集中力はある。

 チャンスは作るが、デシャンのチームはなかなか得点できない。

ドイツの追加点が決定打に

 そんなドイツに貯金ができたのは87分だった。敵の縦パスをカットしてショートカウンターに入る。ハヴァーツがライン裏にスルーパスを入れ、サネが走り込んでボックス右からゴール左へ華麗に流し込んだ。2-0だ。

 これに対し、フランスが留飲を下げたのは89分だった。サネがエリア内でカマヴィンガを倒してPKになる。キッカーはグリーズマンだ。彼は冷静にゴール右に決め、フランスは1点差に詰め寄った。

 だが反撃もそこまで。後半アディショナルタイムは3分しかなく、これではデシャンたちは帰り支度もままならない。かくてルディ・フェラ―暫定政権は6試合ぶりの白星をゲットした。

 試合開始から前半中盤にかけての緊張感が持続するなら、ドイツの再建はあり得るだろう。だが次第に沈静化していった様子を見るとどうだろうか。ひょっとしたら次回2026年のワールドカップでは、また「日出ずるところの」日本と当たり煮え湯を飲むハメになるかもしれない。

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【EURO2024予選】スパレッティのイタリアが初白星、2位に浮上 ~イタリア 2-1 ウクライナ

2023-09-16 08:19:20 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
フラッテージのドッピエッタで競り勝つ

 EURO2024予選・グループC第6節が日本時間13日に行われ、前回大会王者のイタリア代表がスタディオ・ジュゼッペ・メアッツァでウクライナ代表と対戦した。

 ルチアーノ・スパレッティ監督がスタメンに抜擢したダヴィデ・フラッテージのドッピエッタ(1試合2得点)でイタリアが2-1と競り勝った。

 先月、イタリア代表監督を電撃辞任したロベルト・マンチーニがサウジ代表監督に就任し、大論争になったイタリア国内である。

 それを受け昨季ナポリでスクデットを獲得したスパレッティが任を継いだが、第5節で北マケドニア相手に1-1のドローを演じてまた騒動が勃発。

 そんな暗雲を吹き飛ばしたスパレッティ新体制での初白星だった。この勝利でイタリアはグループ2位に躍り出た。

ハイプレスを起点にイタリアが先制

 イタリアのフォーメーションは4-1-2-3だ。彼らは右SBを高く上げ、アンカーが適宜、最終ラインに降りてビルドアップする。

 一方、ムドリクが怪我でベンチスタートとなったウクライナは、4-2-3-1だ。ジンチェンコが左のCMFに入っている。彼らは両CBが大きく開き、SBを押し上げる形でビルドアップしている。

 先制点を取ったのはイタリアだった。前半11分、ショートカウンターの形だ。イタリアがハイプレスを仕掛けると、ウクライナがビルドアップ時にボールを保持した右SBがスリップし倒れてしまう。

 このボールをかっさらったマッティア・ザッカーニがボックス内に侵入し、右にパス。受けたダヴィデ・フラッテージがワントラップしてからゴール左スミに叩き込んだ。

 ウクライナはこの1失点をして以降、相手ボールになるとディフェンディングサードまでリトリートしてブロック守備をするようになった。

2点目のラッキーゴールは29分だった

 そしてイタリアが29分に2点目を獲る。

 中盤のニコロ・バレッラがボールを大きく右に開いてニコロ・ザニオーロに届け、彼がカットインからシュートを放つ。

 するとボックス内のフラッテージに当たったボールが敵DFにも当たって跳ね返り、またフラッテージのもとに戻ってくるというラッキーチャンス。これをフラッテージがきっちりゴールに詰めた。

 このあと押し込まれたウクライナは5バック~6バックになりながら必死に守る。そして一度ウクライナが右サイドからのカウンター攻撃になりかけたが、イタリアは右サイドに人数をかけて分厚く守り切る。

 この流れでウクライナのゴールが生まれたのが41分だった。長い縦パスにアタッカーが抜け出し、ボックス左へ。アルテム・ドヴビクがシュートを打つが、GKドンナルンマが弾いた。そしてイタリアが短くクリアしたボールをアンドリー・ヤルモレンコが拾って詰めた。これでウクライナが2-1と追いすがった。

 だが後半は両チームとも攻撃の機会を得ながらモノにできず。これで試合は2-1のままイタリアの勝利に終わった。

 イタリアは立ち上がり、組み立てが雑でパスが繋がらず暗雲が漂ったが、味方がシュートしたボールの跳ね返りがフラッテージに戻ってくるという僥倖で試合をモノにした。次節は10月15日、ホームでのマルタ戦だ。

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【EURO2024予選】ジンチェンコが先制、ウクライナのゲームプランがハマる ~ウクライナ 1-1 イングランド

2023-09-15 08:09:39 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
イングランドの連勝は4でストップした

 EURO2024予選・グループC第5節でイングランド代表はウクライナ代表とアウェイで対戦し、1-1で引き分けた。グループCはイングランドとイタリア、ウクライナが同居する注目の組だ。

 ホーム・ウクライナの国内情勢により、ポーランドのヴロツワフ市立競技場で試合は行われた。ここまでグループCはイングランドが4戦全勝で首位を走っている。

 イングランドはケインやサカ、マディソンを3トップに置いた4-3-3だ。ベリンガムやライスらもスタメン出場した。一方のウクライナはジンチェンコやムドリクらが出場している。

 ウクライナはイングランドをリスペクトし、がっちり守備ブロックを敷いた。相手にボールを持たせ、イングランドが攻める展開だ。だがウクライナも隙を見て抜け目なく反攻を狙っている。

 攻めあぐねるイングランドを尻目に、26分。鋭いカウンターからウクライナのコノプリアが右サイドを疾走し、クロスを入れる。これに走り込んだジンチェンコがきれいに合わせた。先制弾だ。相手に攻めさせ、守備のバランスを崩させて反撃する。ウクライナが作ってきた設計図通りの得点だ。

ケインのロングパスからウォーカーが同点弾

 先制点を取られて焦るイングランドは、ミスが多くなかなかゲームを組み立てられない。いかにもイングランドらしい。彼らはボールは保持するが、エースのケインにここぞのパスが入らない。

 そんな41分だった。ケインが中盤の低い位置まで下りてボールを受け、ボックス右にロングパスを刺し込む。これにオフサイド間際で飛び出したウォーカーがボールをひとつ触ってから、冷静にゴール右に押し込んだ。同点だ。

 かくて試合は後半に入り、59分のことだった。イングランドが攻める。ケインのポストプレイからボックス右でボールを受けたサカが、左足で痛烈なシュートを見舞った。だがGKブスチャンがワンタッチしたボールは、クロスバーを叩いた。あわやのシーンだった。

 どうしても勝っておきたいイングランドは66分にベリンガムとマディソンを交代させてラッシュフォードとフォーデンを入れるが、なかなか勝利へのドアは開かない。ウクライナも勝ち越しゴールを狙ったが果たせず。

 結果、1-1の引き分けで両者は勝ち点1づつを分け合った。ウクライナにすれば格上相手に勝ちに等しい勝ち点1。イングランドは負け同然の引き分けだった。ウクライナはゲームプラン通りにうまく試合を進め、相手にボールを持たせてしっかり試合を終わらせた。

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【第2次森保ジャパン】日本の「穴」は左SBとFWだ

2023-09-14 13:03:24 | サッカー日本代表
人呼んで「デスノートの森保」

 ハンジ・フリック氏が監督解任されたドイツに続き、日本に負けたトルコでも代表監督解任を求める騒動が起きている。

 森保監督は次々に同業者を廃業に追いやり、自らの転職場所を確保することに余念がないようだ。

 おかげで森保監督が試合中にメモを取る行為は、海外では「デスノート」と呼ばれているらしい。

 さて、そんな強豪撃破が続く第2次森保ジャパン。トルコ戦では控え組も爆発し、「2チーム作れる」とも言われている。だが、決定的なアキレス腱がある。それは左サイドバックとフォワードだ。

左SB伊藤洋輝は間接的に失点の原因になった

 まず左SBの伊藤洋輝は今回の9月シリーズあたりではずいぶん健闘するようになったが、それでも見ていると個人的には不安でたまらない。第一に本人がゲーム中に不安そうな様子をしているように見える。

 実際、ドイツ戦では間接的に失点の原因にもなった。

 前半19分。左IHのギュンドアンが右IHヴィルツへ斜めのパスを繋ぎ、ヴィルツはペナルティアーク辺りに侵入した。このとき守備時4-4-2のフォーメーションを取っていた日本は、左SBの伊藤洋輝が中へ絞った。自然な動きだ。

 このため(日本から見て)左サイドにスペースが空き、最後はゴールエリア角から右WGサネにフリーでゴール左にシュートを決められた。

 もちろんこれはシステムの構造上の問題でもある。

 ピッチの左右横幅を4バックでカバーする以上、サイドには必然的にスペースができる。その上この失点時にはドイツの攻めを受けて中央へ絞ったためにサイドのスペースがさらに大きくなり、サネにフリーでやられた。

 ただ伊藤洋輝が間接的に関与していたことは事実だ。

 この現象を見て森保監督は、後半にフォーメーションを5-4-1に変えて横幅を5バックで埋める対策を取った。

伊藤洋輝は本来CBの選手だ

 伊藤洋輝は右SBの菅原由勢のように軽快でもないし速くもない。サイドを駆け上がるプレイを得意としているわけでもない。正確なロングパスはあるが、総じて攻撃性能は低い。

 むしろ伊藤は自分の重さをプレー強度に代え、ガッチリ守備をするタイプだ。やはり彼はセンターバックの選手である。

 傍から見ているとむしろ気の毒に見える。適性はCBなのに不得意なSBで使われ、今回のように意に反して失点に関与してしまう。個人的には、もうSBという呪縛を解いてやり、適性のあるCBとしてポジション争いさせてやりたい。

 ただ、そうなると「じゃあ左SBは誰が適任なのか?」という難題が待ち受けているわけであるが。個人的には、森下龍矢(名古屋グランパス)はまだそのレベルに達してないように思う。インテンシティが足りない。

 中山雄太(ハダースフィールド・タウン)も世評は高いが、個人的には「うーん……」というところ。バングーナガンデ佳史扶(FC東京)は代表で見て「将来性があるな」とは思ったが……結局は旗手怜央(セルティック)ということになるのだろうか。

FW上田綺世は評価が上がったが……

 一方、フォワードに関しては、巷間、ドイツ戦で1ゴールを上げた上田綺世の評価が高まっている。前で起点になる動きやポストプレイ、裏抜けなど、マルチなタイプのFWだとは思う。

 実際、あのドイツ戦を観るまでは、私はFWのなかでは上田をいちばん認めていた。だがドイツ戦を目の当たりにして、世間の評価とはまったく逆に失望した。

 確かに上田は1ゴール上げたが、あの試合、彼はまちがいなく「あと2点」取れる場面があった。もちろんマルチな能力があるのはわかっているが、彼の本業は点を取ることだ。

 ストライカーなら、あのゲームでは確実に3ゴール取っていなければならない。もしこれがアーリング・ハーランドやキリアン・エムバペなら、確実に3点取っていたはずだ。個人的にはガクゼンとし、深い失望感に包まれた。

 ああ、彼もまた「日本人FW」の典型だったのか? いかにも日本人らしく「ああ、惜しかったよなぁ」で終わる選手なのか?

 この絶望感は深い。

典型的な「日本人FW像」に当てはまる

 上田のプレイを初めて見たときの衝撃は大きかった。「こんなFWが日本にいたのか?」。おそらく彼を初めて目の当たりにした人は、みんなそう思うのではないか?

 で、私も彼に期待してきた。

 だがその後、いま現在のプレイを観ても、あのときから成長しているようには見えないのだ。

 もちろん過去も現在もレベルは高い。「あのとき」と今とを並べて見れば、「ここがこう変わった」という要素はあるのだろう。(ただ個人的にはドイツ戦のポストプレイがよかった、とは思わない。大迫勇也とくらべれば月とスッポンだ)

 だが現在だけを観ていると、特に変わったようには感じない。相変わらず決定的なゴールを逃し続けている。

 彼は能力が図抜けているだけに絶対的な場面を作れる。であるがゆえに相変わらずそのチャンスを逃し続け、「ああ、惜しかったなぁ」とくやしがる典型的な「日本人フォワード像」に当てはまってしまっている。

 ことほど左様に、日本には決められるFWがいない。年齢を度外視した場合の大迫を除いては、だ。もし日本が「ワールドカップで優勝するぞ」というなら、いの一番に必要なのは決定力のあるフォワードだろう。

 森保ジャパンの「穴」は、左SBとFWである。

 早急な対策が求められる。

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【第2次森保ジャパン】中村敬斗が圧巻の2G、彼は顔がイイだけじゃなかった ~日本 4-2 トルコ

2023-09-13 10:59:36 | サッカー日本代表
少ないタッチ数のパスワークが冴える

 森保ジャパンは9月12日にベルギーのヘンクで行なわれたキリンチャレンジカップで、トルコ代表と対戦した。MF中村敬斗の2ゴールなどで4-2と日本が大勝した。日本は控え組だったが少ないタッチ数でテクニカルにパスを繋ぎ、トルコ・ゴールを次々に陥れた。4ゴールのほか、久保建英と古橋亨梧にポストを叩いた惜しいシュートが1本づつあった。

 なかでもトップ下に入った久保は鮮やかなパスとドリブル、精力的なプレッシングでチームに貢献した。ただ消えている時間があったのは課題だが。

 この日の日本はいつもとちがい、強くて速いグラウンダーのボールを2タッチ以内で丁寧に繋いで最終ラインからビルドアップする意図が感じられた。これは劇的なトランジションとショートカウンター志向に偏る、いつものレギュラー組にはない趣向だ。部分的にでもポゼッションスタイルを取り入れようとする森保監督の新しいトライなのだろう。

 日本のFIFAランキングは20位。一方のトルコはFIFAランキング41位だが、現在行われているEURO2024予選のグループDで勝ち点10を積み上げ2位につけている中堅国だ。彼らは2002年の日韓W杯で3位に入って以来、W杯には出場していない。

 ただしタレントは豊富だ。インテルに所属する攻撃的MFハカン・チャルハノールやベンフィカでプレーするMFオルクン・コクチュ、ドルトムント所属のMFサリフ・エズジャン、A・マドリーのチャグラル・ソユンク、ホッフェンハイム所属のDFオザン・カバクなど枚挙にいとまがない。ただし今日のスタメンは控え組だが。

 さて日本は9日の衝撃のドイツ戦からスタメンを10人変えてきた。今日はサブ組がどこまでやるか? が見られる貴重なテストマッチだ。結論から先に言えば、特に伊藤敦樹(浦和レッズ)と中村敬斗(スタッド・ランス)、毎熊晟矢(セレッソ大阪)には驚かされた。

 日本のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKが中村航輔。最終ラインは右から毎熊晟矢、谷口彰悟、町田浩樹、伊藤洋輝が構える。CMFは伊藤敦樹と田中碧。2列目は右から堂安律、久保、中村敬斗。ワントップは古橋だ。

 対するトルコのフォーメーションは4-1-2-3である。

伊藤敦樹が痛烈な先制弾を放つ

 試合が始まっていきなりの前半15分だった。MF伊藤敦樹が右サイドからドリブルで切れ込み、ボックス内の堂安とワンツーをかまして左足を振る。ゴール右上スミに目の覚めるような代表初ゴールを叩き込んだ。ボールはゴール目がけて一直線に弾けるように飛んだ。新顔からいきなりのプレゼントだ。

 トルコはなかなかプレスが厳しいチームだ。だが日本もトップ下の久保を中心に積極的にプレスしている。特に久保はいまやすっかり、かつては足りなかった献身性を身につけており、しつこく敵の足元に圧力をかけ続ける。すばらしい。

 19分。その久保が中央をドリブルで持ち上がり、古橋亨梧にラストパス。古橋はシュートを打つが決まらず。彼に関してはこのときイヤな予感がしたが、のちに的中してしまった。

 続く25分。久保が右から中へドリブルでカットインし、ダイアゴナルランした堂安にスルーパスを出すが合わず。ただ、日本は初顔合わせながら、なかなかテクニカルなパスワークを見せている。いきなりのサブ組の実戦なのでどうなることか? と思っていたが、まったくの杞憂に終わった。いつものスタメン組に劣らない魅力がある。

中村敬斗がゴラッソを決める

 さてこの日の主役がゴールを決めたのが28分だった。久保がボックス手前の中央からシュートし、GKが胸の中心で両手を使って弾いたこぼれ球に合わせて中村敬斗がゴラッソを決めた。

 これで伊藤敦樹と右SB毎熊晟矢をワンプレーづつ見たが、彼らは地を這うようなパスを出している。特に伊藤敦樹は腰の入ったいいインサイドキックを持っている。毎熊も非常によく、これなら右SBは菅原と合わせて安泰だ。

 さて36分、その毎熊が起点になった。彼はボール奪取から右サイドをドリブルし、果敢にボックス内へ侵入する。そしてきれいに折り返す。これに合わせた中村敬斗が右足で敵の股を抜き、この日2ゴール目を叩き出した。

 中村はシュートがうまい。決してふかさず、きれいに抑えてコースを狙って決めている。ただし彼は消えている時間も長い。所属のスタッド・ランスでもそうだ。フォワードもできる彼は、「(けっこう消えているが)ここぞの場面で一発を決めるストライカー役」の方が向いているのかもしれない。

 日本、トルコ双方とも守備時4-4-2でプレーしている。と、左SBのあの伊藤洋輝がなんと敵陣に攻め上がっているぞ、と思った瞬間にオフサイドになった(笑)

 トルコが反撃の牙をむいたのが44分だった。彼らは左ボックス角手前でFKを得る。キッカーの左IHコクチュがゴール前のファーに入れたボールを右SBミュルドゥルがヘッドで折り返し、GK中村航輔が弾いたボールをCBカバクが詰めた。3-1だ。このときの接触でGK中村が肩を強く打ち、シュミット・ダニエルと交代した。

途中出場の伊東純也がPKを決め突き放す

 日本は後半の立ち上がりから堂安に代えて伊東純也、中村に代えて前田大然、毎熊に代えて橋岡大樹を投入してきた。トルコもスター選手のチャルハノールを入れる。

 前田はさすがのプレッシングだ。強力で圧がある。彼はボールに強く行くよう、本能がカラダを動かしてるんだろうな、という印象だ。

 今日のメンバーはボールのタッチ数が少なく、いい感じだ。CMFの伊藤敦樹は最終ラインのカバーリングも怠らず、好プレーを続けている。彼は遠藤&守田に替わる重要なオプションになりそうだ。毎熊も攻撃面で光るセンスがある。

 だがそんな後半16分にトルコが追撃の火の手をあげる。パスを受けた途中出場のFWユンデルがボックス左からマイナスの折り返しを入れ、谷口と町田に当たりコースが変わったボールをFWユルドゥルムが押し込んだ。3-2。1点差だ。

 これに対し古橋は3度目のシュートチャンスがあったが決められず。彼はライン裏に抜ける動きや動き直しを献身的に続けておりすばらしいのだが、実らない。なんとか彼を爆発させるテはないものか?

 後半18分、日本は伊藤敦樹に代えてCMF遠藤航を投入した。トルコが一軍クラスを投入する何人かのメンバーチェンジのあと盛り返し、今やすっかり彼らのゲームになっている。縦横にパスを回され、圧をかけられている。

 そんな30分だった。伊東純也がドリブルでボックス内に侵入し、ファウルを受けPKになる。伊東自身がキッカーを務め、ゴール右スミに落ち着いて決めた。4-2だ。続く34分には町田に代えてCB冨安健洋を投入する。試合の締め役だろう。そしてゲームセット。日本は追いすがるトルコを突き放した。

荒削り上等、そのぶん将来性がある

 新しいメンバーを何人も見られた点で実り多い試合だった。急ごしらえなのでチームとしての連携は当然、機能しないのが当たり前だ。特にいつも一緒に何試合も実戦を積み上げてきているレギュラー組とくらべて、四の五の言うのは論外だろう。個人的には、それよりむしろそれぞれを「個」として見た。光るものはあった。

 彼らはもちろん甘さもあるが、ふだん代表戦に出てない控え組の彼らにあまり厳しいことを言う気がしない。むしろ個として見るべきものがあるぶん、なでしこジャパンと同様、伸び代が大きいと感じる。将来が楽しみだ。

 森保監督が言うように、なんだか「W杯優勝を目指そうかな?」というおおらかな気分になってきた。

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【第2次森保ジャパン】ドイツに勝って浮かれるな、トルコ戦でまだまだやるべきことはある

2023-09-12 05:07:05 | サッカー日本代表
ドイツは技術や戦術以前の問題だった

 9月9日の親善試合で日本がドイツに勝ち、すっかり楽観ムードが漂っている。

 ヤフコメなんか見ていると「これでフランスやアルゼンチンも日本と試合をやりたがるんじゃないか?」なんてコメントもあったが、日本人は勘違いしちゃいけない。

 あの日本が勝ったドイツは、はっきり言って技術や戦術以前の問題だった。あきらかに何らかの要因でチームがすでに壊れており、だから日本と戦う前から負けていた。

 個々の局面を観ても、無気力なプレーだらけだ。例えばドイツのゴール前で田中碧が2人のDFに挟まれているのに、ドイツのDF陣はまったく競ろうとしなかった。完全なボールウォッチャーになっていた。で、田中にゴールされた。

 またアントニオ・リュディガーにしてもそうだ。自分の目の前でMFゴセンスが久保にボールを奪われるのを見ても、真剣に久保を追わなかった。で、ドイツは失点した。

 競るべきボールを競らない、追うべき敵を追わない。ないないづくしで、ぜんぜん代表レベルのサッカーになっていなかった。

 あんなチームに勝って「日本は強くなった」なんてカン違いしちゃいけない。

 もっとストイックにならなきゃダメだ。

日本にも課題は山とある

 あのドイツだから勝てたが、日本にも課題はある。

 森保監督は「ボール保持率を少しでも上げる必要がある」とコメントしていたが、あの試合の日本のポゼッション率は37%だった。ぜんぜん目標には到達していない。

 正確には「保持率を上げる」というより、「(カウンター攻撃だけでなく)ポゼッションスタイルでもプレーできる時間をもっと長くしたい」という意味だと思うが、あの試合で日本にポゼッションスタイルなんてカケラもなかった。日本の攻めは基本、切れ味鋭い劇的なカウンターだった。

 いや個人的には、日本はショートカウンター主体でいいと思っている。

 ただ確かにカタールW杯のコスタリカ戦みたいに、相手にボールを持たされて「何をやればいいかわからなくなる」なんてことになったらマズい。

 特にW杯のアジア予選で弱小国との試合になれば、必然的にコスタリカ戦みたいな状況になる。相手は自陣に引いて構えて、日本はボールを「持たされる」。その意味ではあくまで相手との相性で、ポゼッションもできるようになっておいたほうがいいとは思う。

 ドイツ戦からメンバーを大幅に入れ替え、ついに久保建英にスタメンが回ってきそうな本日12日のトルコ戦ではそこがどう出るか? 大きなポイントだ。

5-4-1の問題点も修正すべきだ

 一方、ドイツ戦の後半からはシステムを5-4-1に変えた。あれも一長一短だった。

 あのドイツ戦の前半19分。サネに決められた同点弾の場面では、試合に4バックで入った日本は相手の攻めを受けて中央に絞ったために、サイドにできたスペースを突かれた。

 その点、確かに5バックにすると横幅は埋められる。だがどうしても構造上の問題もあり、最終ラインがズルズルと低くなりすぎてゾーンが間延びしていた。

 5-4-1時の問題は過去にもあったが、そこも修正すべき点だろう。もっとコンパクトにやりたい。

 5-4-1は日本の切り札ともいえるシステムだけに、もしまた使うとすればトルコ戦ではそこが改善されているかどうかも大きなポイントだ。

最終ラインからビルドアップしたい

 最後のひとつは、日本に残された宿題だ。

 森保監督が「ボール保持する時間を少しでも長くしたい」「一定の時間帯だけでもポゼッションスタイルでやらなければ」「なぜなら格下と戦うW杯のアジア予選では必ず必要になるから」と考えているのなら、最終ラインからのビルドアップは不可欠だ。

 トルコ戦ではGKを起点として、後方からグラウンダーのボールをていねいに繋いで攻めを立ち上げることにトライしたい。

 別に偽SBなどやらなくてもビルドアップはできる(もちろんやってもいいが)。カギは縦方向に、できれば複数のパスコースを同時に作ることだ。そうすれば敵にAコースを対応されても、Bコースが残る。

 またグラウンダーのパスでなくても、ドイツ戦で2度やったような対角のサイドチェンジの長い浮き球を入れるのでもいい。あれはナイスだった。

 もしパスコースがなければ、いったんバックパスして組み立て直すのでもいい。個人的にはバックパスはあまり使いたくないが、そこで単純にロングボールを放り込むのではビルドアップの練習にならない。

 カンタンにあきらめず、常に縦や斜めのパスコースを作ること、そのために数歩でも動き直すことを心がけたい。

 まだまだ日本がやるべきことは多い。

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【国際親善試合】日本がドイツの息の根を止めた 〜日本 4-1 ドイツ

2023-09-11 04:56:56 | サッカー日本代表
前半の2ゴールでドイツ人の心は我が家に帰った

 日本はドイツに招待され、9月9日にドイツ・ヴォルフスブルクのフォルクスワーゲン・アレナでドイツ代表と対戦した。MF伊東純也のゴールなどで日本が4-1と圧勝した。カタールW杯で日本に負けた仇を打とうと自らセットした親善試合で、ドイツは見事に返り討ちにあった。

 選手別では、伊東純也とSB菅原由勢が織りなす右サイドの鋭さがひときわ目を引いた。特に何度も決定的な縦へのスプリントを繰り返した菅原は、完全にこれでレギュラーをつかんだだろう。彼は速いし、まるで忍者のように機敏だ。インテンシティも高い。

 日本が瀕死のドイツの息の根を止めた。ホストのホームで日本人による圧巻のゴールショーと、戦術的駆け引きが刻々と演じられた。カタールW杯後のテストマッチで負けが込み、国内でハンジ・フリック監督の解任論が吹き荒れるドイツ人たちには酷だっただろう。

 日本は4-2-3-1で試合に入った。そして前半11分に伊東が角度のないところから先制ゴールを上げる。同22分にもFW上田綺世がゴール。2-1でリードして後半に入り、日本は守備時5-4-1にフォーメーションを変えた。守備ブロックを厚くしドイツをシャットダウンしに行ったのだ。5枚で守る形に変えてからも2ゴールを加点し突き放した。非の打ち所がない日本の完勝だった。

対角のロングフィードが敵をえぐった

 テストマッチでずっと連敗が続くドイツは、これまで3バックを試すなどフォーメーションを二転三転させていたようだ。この日の彼らは4-1-2-3で来た。MFもできるキミッヒが右SBに入り、一列上がって中に絞り偽SB化するのが彼らのミソだ。だがそんな小細工は、日本の勢いの前に木っ端微塵に打ち砕かれた。

 日本は最終ラインを高く設定して試合に臨んだが、すぐ自陣に押し込まれた。だがその後、押し返す。そしてフィールドを大きく斜めに横切る対角のロングフィードを2度うまく駆使してドイツを揺さぶる。ピッチを広く使って相手を横に広げた。

 縦に疾走する右SBの菅原が非常によく機能し、右サイドを使って前半の早い時間に2点を奪い優位を築いた。これでドイツの焦りを誘い、スコア上もメンタル的にも相手を見下ろす立場に立った。おそらくこのときドイツ人たちの脳裏には、カタールW杯後の直近のテストマッチで1分3敗と散々なデキで国民から総スカンを食っている自分たちの境遇がよぎったことだろう。

 とすれば前半に奪った日本の2点で、実質この日はゲームが終わっていたのかもしれない。

 日本のフォーメーションは4-2-3-1だ。GKは大迫敬介。最終ラインには右から菅原由勢、板倉滉、冨安健洋、伊藤洋輝が構える。2CMFは遠藤航と守田英正。2列目は右から伊東純也、鎌田大地、三笘薫が並ぶ。ワントップは上田綺世である。

伊東が瞬殺の1ゴール目を上げる

 4バックのドイツは2CBがかなり開き、両SBを前に押し出してビルドアップする。試合の立ち上がり、日本は自陣に押し込まれ、前半2分には彼らのセットプレーを食ったが不発に終わる。だがその1分後にはすぐドイツのCKと畳みかけてくる。そんな彼らの第一弾の攻撃が終わり、日本は敵を押し戻した。

 さあ、ここからは日本の時間だ。

 右の低い位置に下がった遠藤航が右SB菅原に寄ってやってボールを受け、対角のすばらしいロングフィードを逆サイドの三笘に入れる。2人のマーカーに縦をふさがれた三笘は右へと切り込み、ボールを失う。

 だがそれが幸いする。前半11分の先制点につながるのだ。このときの三笘のボールロストから、ドイツは縦にボールをクリアした。これを左でひろった冨安が、ワンタッチで美しい対角の長い浮き球のパスを右サイドにいた鎌田に渡す。

 鎌田は右サイドに開いた菅原にパス。菅原はサイドを短く駆け上がり左SBシュロッターベックをかわした。そしてゴールライン際から右足で目にも止まらぬ強くて速いクロスを低く入れた。

 するとCBリュディガーの前に入りこんだニアの伊東が、足を伸ばしてワンタッチでコースを変えて瞬時にゴールへ流し込んだ。動きが速すぎて一瞬、何が起ったのかわからなかった。だが1-0。先制なのだ。

日本のコレクティブ・カウンターが炸裂する

 このあと双方とも最終ラインを上げ、非常にコンパクトなゾーンの中に両軍がすっぽりとおさまっている。その均衡を破ったのは伊東だった。縦パスに裏抜けし、右サイドを駆け上がって右足を強振した。だがこれはGKテア・シュテーゲンが正面で弾いた。

 ドイツもまだ元気だ。ラインを押し上げハーフコートマッチ化させた前半19分。左IHのギュンドアンが右IHヴィルツへ斜めのパスを繋ぎ、ヴィルツはペナルティアーク内から右斜め前へパスを出す。最後は右のゴールエリア角から右WGサネが左足でゴール左に押し込んだ。同点弾だ。

 だが日本はすぐ22分に突き放す。右サイドで伊東がためて時間を使ってから鎌田に預けた。次にボールはサイドを駆け上がる菅原に渡る。菅原は右サイドの敵陣深くから鋭いクロスを入れた。ニアの伊東がインサイドで合わせて流し、これに上田が反応し左足でゴール右下へ押し込んだ。2-1。勝ち越し弾だ。

 その後ドイツがラインを押し上げ、またもハーフコートマッチ化を企む。彼らはハーフウェイライン上に最終ラインを設定し、ポゼッションして押し込んでくる。日本はその攻撃を平然と受けながら、反撃の機会をうかがい幾度となく敵陣にカウンターを繰り出す。そんな虚々実々の駆け引きが前半いっぱい続いた。

 ドイツが攻めるときはハーフコートマッチの押し込み。日本が反発するときは、そこから組織的に何人もが縦パスを繋ぎ倒す速いコレクティブ・カウンターだ。両者とも、そんな「自分たちのサッカー」を繰り返した。

金持ちケンカせず、後半の日本は5-4-1で守った

 後半の頭から日本は5-4-1でコンパクトに守った。これでしばらく守備をする時間が続く。そして後半14分。上田に代えて浅野拓磨、鎌田に代えて谷口彰悟を投入した。冨安の守備は非常に利いている。

 このあとドイツが気のないパスをダラダラ繋ぎ、日本がひたすらミドル・サード〜ディフェンディング・サードでブロック守備する展開が続く。金持ち喧嘩せず、か? ドイツはミスが多い上に、爆発的なスプリントがない。ボールスピードも遅い。絶不調のチーム状況がうかがえる。彼らはなかなか日本の守備ブロックを崩せない。

 そんなか伊東が二度追いし、ものすごい距離を走ってカバーリングしている。久保建英は同じ右サイドの伊東の牙城は崩せないだろう。久保にはあんな執念の二度追い、三度追いはできない。そもそもインテンシティの高さが段違いだ。30分、守田と伊東純也に代え、久保と田中碧を投入した。続いて39分、三苫に代えて堂安律、菅原に代えて橋岡大樹を投入する。

 かくて45分。日本がブロックを作って自陣にいるなか、途中出場のゴセンスからボールを奪った久保が広大なスペースを1人でボールを持って飛び出した。久保はドリブルでGKをギリギリ引き付けてから、からかうように横についたどフリーの浅野にパス。浅野が無人のゴールに簡単に決めた。3-1だ。カタールW杯を思い出すハメになったドイツ人にとっては「恐怖のアサノ」がまたゴールした。彼らのトラウマは深い。

 続く47分。またも久保がドリブルでボールを持ち上がり、右サイドの敵陣深くからクロスを入れた。DF2枚の間で完全にフリーになっていた田中碧が、ヘッドでゴール左スミに叩き込んだ。4-1である。あんなゴール前で田中がどフリー。ドイツのDF陣は完全にボールウォッチャーになっていた。久保はたった15分の間に2アシストして見せた。そしてゲームセットだ。

「押し込む」=「優勢だ」はもう古い

 日本は古来からある「押し込む」という勝ち方ではなく、ふところにナイフを隠し持ち相手の攻めを柳のようにしなって受けては機を見て縦に速いカウンターを見舞った。このとき敵の背後にはたっぷりスペースがある。力をためた日本の狙いはそこだ。これが日本のスタイルであり、勝ち方なのだ。

 日本のポゼッション率は37%だった。これに対し負けたドイツは63%だ。いったい「日本はボール保持率をもっと上げた方がいい」などという必要が、どこにあるのだろうか? これが彼らの流儀なのだ。このやり方で現にドイツに圧勝している。

 そろそろメディアは「押し込む」=「優勢だ」のようなカビの生えた古い概念を変えた方がいい。まあ後半の5-4-1時には下がりすぎてちょっと間延びしたが、そこは今後の課題だろう。

 さて日本を本国へ招待してまで、カタールW杯敗北の借りを返そうとしたドイツの野望は打ち砕かれた。試合後、おそらくハンジ・フリック監督は、ひとり静かにトイレで首を洗っていたに違いない。

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【プレミアリーグ 23/24 第4節】ホームでチェルシーがまたやらかす ~チェルシー 0-1 ノッティンガム・フォレスト

2023-09-10 05:06:20 | イングランド・プレミアリーグ
手も足も出ないシャットアウト負け

 チェルシーは今季もやれやれなシーズンになりそうだ。

 場所はホームのスタンフォード・ブリッジ。しかもまったく怖さのないノッティンガム・フォレストに後半3分に先制され、あとは引かれて守られいいところなく0-1でシャットアウト負けだ。目を疑う惨状である。

 いまにしてみればチェルシーは、もっと強力なストライカーを獲るべきだった。

 この日は前線のFWニコラス・ジャクソンが大ブレーキになった。ここぞという決定的な場面で彼にボールが行くが、ごくカンタンな状況でも決められない。

 それにくらべ、途中から出てきたフォレストのFWアンソニー・エランガはすばらしかった。細かく正確なボールタッチとマーカーを欺くトリッキーな動き。

 なぜこの選手が控えにいるのか? と目をこすった。チェルシーはこういう選手をこそ獲るべきだったのに……。

エンソはいいが組み立て役で使え

 チェルシーで機能していたのはエンソ・フェルナンデスとラヒーム・スターリング、チアゴ・シウバだけだった。

 だがエンソを一列上げてシャドーで使ったのは失敗だ。それでは組み立て役がいなくなる。前節までは相方だったCMFモイセス・カイセドは見事に消えていた。

 確かにエンソは前線で鋭いスルーパスを出していた。だがチームの基盤になるビルドアップ役がいないのではお話にならない。

 チェルシーはストライカーとアシスト役の欠乏が深刻だ。

 昨季はあれだけ大金を使って選手を取ったのに、今季になれば足りない選手がいるとはいったいどういうことなんだろう。

 このチームは選手獲得という重要なコーディネートがまったくできていない。そこがまるでアウト・オブ・コントロールだ。

 この悲惨な集団を生き返らせる役目だとは、マウリシオ・ポチェッティーノも大役を仰せつかったものだ。

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【第2次森保ジャパン】超本気のドイツと対戦できる「意味」とは?

2023-09-09 05:01:05 | サッカー日本代表
強豪ドイツ相手に日本のチェックポイントを試せる

 サッカー日本代表は9月9日(土)27:45(日本時間10日の早朝3:45)に、ドイツ・ヴォルフスブルクのフォルクスワーゲンアレナで国際親善試合を行ない、ドイツ代表と対戦する。ドイツはその3日後に、フランスともテストマッチを戦う予定だ。

 この日本とのテストマッチは対戦前から、いろんな意味で「いわくつき」になっている。ひとつはかつての帝王・ドイツ代表の凋落に原因がある。

 2014年ブラジルW杯の覇者であるドイツは、直近のW杯をなんと2大会連続でグループリーグ敗退している。かつての「あのドイツ」というイメージからはありえない事態だ。しかも直近のカタールW杯グループリーグでもドイツは日本に負けている。

 つまり今回の日本とのテストマッチは、彼らにとってもう絶対に負けられない「かたき討ち」という位置づけなのだ。

いまのドイツは監督の首がかかった非常事態下にある

 だがドイツの最近の成績はまったく冴えない。例えば今年3月の代表ウィークではまずペルーに2-0で勝ったものの、続くベルギーには2-3の敗戦。一方、6月の代表ウィーク3試合でも、ウクライナとは3-3で引き分け、ポーランドに0-1、コロンビアに0-2で敗れている。

 結局、6月は勝ちがなかった。トータルではなんと1勝1分3敗と悲惨だ。

 これにドイツ国内では批判が渦巻き、議論百出。当然、指揮官を務めるハンジ・フリック監督への風当たりも相当強くなっている。

 しかも間の悪いことに、彼らは来夏のEURO2024(欧州選手権)の開催国なのだ。3月と6月のテストマッチで勝ち続け、EUROへのムードをいやが上にも盛り上げよう、という彼らの目論見は木っ端みじんに粉砕されてしまった。

 巷間、この9月の2連戦でまた連敗でもすれば、ハンジ・フリック監督の首が飛ぶと言われている。いや、日本に負けた時点でもうすでに危ないかもしれない。

 今回の日本とのテストマッチは、そんな非常事態下で行われる試合なのだ。日本にとっては、もうこれ以上負けられない超本気のドイツ代表と腕試しできる願ってもない値千金の貴重な機会になる。

強化が順調な日本はドイツ相手に勝負になるか?

 対する日本代表は、順調そのものだ。今年の6月シリーズでテストマッチを戦ったエルサルバドル戦(6-0)、ペルー戦(4-1)に余裕で連勝している。アタッカー陣がまんべんなくゴールを決めた。

 しかも日本はただ点が取れただけじゃない。ポゼッションとカウンターのバランスがうまく取れるようになり、グンとチームの完成度が増してきた。

 しかも偽SBを初体験した3月シリーズではビルドアップに四苦八苦したが、6月シリーズではまるで別人のようにビルドアップが改善した。非常にスムーズだった。

 ただ一点、疑念は「対戦相手の実力」だった。相手が弱いからできた、ではダメだ。で、私はペルー戦直後のレビュー記事にこう書いた。

「日本はゴールの場面だけに限定すれば得点力は上がっているように見えるが、肝心の強い相手とやったときにどうか? が見たい」

 で、今回はまさにその待望の強い相手とやれるのだ。しかも手負いでもう後がない、超本気の必死なドイツ代表と対戦できる。さて日本の得点力は、本当に上がっているのだろうか?

日本のチェックポイントは大きく3つだ

 強敵ドイツを相手にトライが成功すれば、もうそれは本物だ。その意味では、いい目安になる。日本のチェックポイントは大きく3つある。上に書いたビルドアップとポゼッション、カウンター、それぞれのデキだ。

 加えて枝葉の要素として、ロストボール時の対応や相手のビルドアップに対する挙動、またトランジション(攻守の切り替え)時の日本のふるまいも要チェックだ。

 まず日本のフォーメーションは4-2-3-1をスタートに可変する。そのなかで日本はドイツ相手にいかにスムーズに自陣からビルドアップし、厳しいプレスを受けながら中盤で危なげなくポゼッションできるか? 「ボール保持をふやす」と森保監督は明言しているだけにここは注目だ。

 そしてそのときもしボールを失ったら、日本はどんな挙動をするのか? 下がらずその場でカウンタープレスをかけるか? それともリトリートからのブロック守備なのか? ここもポイントだ。

 一方、ドイツも4-2-3-1のミラーゲームになることが予想され、キミッヒが右SBに入り頻繁に中盤に上がる形になりそう。最終ラインは3枚に可変する。さて日本はどう対応するのか? 注目だ。

 対する日本は最終ラインをどこに設定するのか? 高く構えて前から行くのか? それとも大事をとって低くするのか? ここもゲーム展開を大きく左右する重要な要素といえる。

日本はマンツーマンで前からハメに行く?

 そして今度は日本が守備に転じたとき、ネガティブトランジション(攻→守の切り替え)時に敵の最終ラインからのビルドアップにどう対応するのか? 例えば前からマンツーマンで複数の選手がハメに行き、ボールを絡め取る積極的な「前方対応」か?

 そしてその挙動は素早くスムーズに行われるか?

 あるいは逆に、ボールロストと同時にミドルサードかディフェンディングサードまでリトリートして組織的守備をする「後方対応」を取るのか?

 また日本がボールを奪った瞬間の反応も見ものだ。奪ったのがアタッキングサードやミドルサードなら、ポジティブトランジション(守→攻への切り替え)時に瞬時に間を置かず、縦に速いカウンターを打てるか?

 逆に奪ったのがディフェンディングサードなら、そこからどうするのか。

 ドイツの厳しいフォアチェックを搔い潜りながら、日本は最終ラインからパスを繋いでていねいにビルドアップし、敵のプレッシャーラインの前方にいるフリーの味方にボールを無事届けることができるのか? それとも後方からロングボールを入れるダイレクトな攻撃もするのだろうか。

久保はドイツ相手でも爆発できるか?

 最後に相手ボール時に、日本はドイツ相手に敵の球際に厳しく強いプレスを継続してかけることができるか? ここも大きなポイントだ。日本はいつも前半はプレスがゆるくなる。そこも気をつけてチェックしたい。

 個人的には選手個々よりむしろチーム全体のふるまいに興味があるので、チェックポイントは上に書いたような内容になった。ただ一点だけ、選手に触れるとすれば久保建英だ。

 ラ・リーガのゆるい守備を相手に久保がいま点を取りまくり大爆発しているが、彼はドイツの強靭なプレス網に対しても同じことができるのか? ここが知りたい。グラナダ戦は観たが、彼らはひどい守備だった。あれでは点が取れて当たり前だろう。

 もし久保が代表でも同じことができるのだとしたら、久保への疑念は払拭される。その意味でも森保監督は途中出場でいいからぜひ彼を出してほしい。

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【なでしこの課題】なでしこジャパンは致命的な「2つの欠点」を修正せよ

2023-09-08 05:00:55 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
ボールはオープンか? クローズか?

 今年8月に行われた「女子ワールドカップ2023」で8強入りしたなでしこジャパンには、2つの大きな欠点がある。もちろんあの大会で得た収穫は大きかったが、ここではあえて課題にフォーカスする。今後のためだ。

 なぜなら問題点はどこにあり、それを修正するには何をすべきか? を考えるのがサッカーで強くなる秘訣だと考えるからだ。

 さてサッカーでいちばん大切なことは、まずボールはオープンか? クローズか? を見ることだ。

 オープンというのはボールに敵のプレスがかかっておらず、ボールを前方へ自由に展開できる状態を指す。一方、クローズとは、ボールにプレスがかかり規制下に置かれている状態だ。そして、もし相手ボールがオープンならば、これをクローズしに行かなければならない。

ボールの状態を認知することですべてが決まる

「ボールはオープンか? クローズか?」によって、攻撃面ではパスコースの作り方や第3の動きをどこにどう入れるのか? また守備面では第1プレッシャーラインの置き方や、そもそも最終ラインをいったいどこに設定するのか? まで、すべてのプレイがこれによって決定づけられる。

 もしオープンか? クローズか? を認知せずにプレイしているとすれば、それは運まかせでクジ引きをひくようなサッカーになっているはずだ。強く運に左右されてしまう。日本サッカーの歴史を振り返れば、思い当たるフシは多いはずだ。

 たとえば古くはドーハの「悲劇」とやらから(さすがカズはあのときボールをクローズしに行ったが間に合わなかった)、最近では「ロストフの14秒」などと美的に伝説化されたベルギーに超ロングカウンターを食らった「喜劇」まで(あのときGKクルトワが抱えたボールは「オープン」だった)、すべてがボールの状態を認知してなかったために起きた悲喜劇だ。

 確かに試合中で疲労が蓄積しているときは、認知する力が鈍磨しがちだ。特にそれは攻守の切り替えのときに起こりやすい。場面が移り変わって、つい集中力が切れるからだ。ゆえに「心のトランジション」は常に研ぎ澄ませておかなければならない。

球際で競る意識が低い

 だがなでしこジャパンの場合、この「ボールはオープンか? クローズか?」の見極めが甘い。同時に敵のボールをクローズしようという意識が低い。

 で、球際の激しい競り合いを嫌い、ややもするとボールウォッチャーになってしまう傾向がある。よしんば競り合ったとしても球際で負けてしまう。特に言えることはプレッシングのハメどころがはっきりしない点だ。というよりハメどころが「ない」。

 例えばこの記事(リンクあり)で書いたようにプレスの収めどころを作り、ボールを保持する敵の最終ラインをマンツーマンでハメて、前でボールを奪うところまで行きたい。

 で、ボールを取ったら即、前線からショートカウンターをかける。これができれば1ランクも2ランクも上へ行けるはずだ。

 重要なのはパスコースを切りながらただ「見る」だけでなく、能動的に前からアグレッシブにプレスをかけること。球際でカラダを入れて敵ボールホルダーと激しく競る。ボールを保持する相手にカラダを押っ付け、足元に強くプレスをかけて自由にプレイさせない。そういう強度の高い守備が必要だ。

敵がクロスを入れる前にプレスで潰せ

 プレスの甘さと、その意識の低さ。このためなでしこジャパンは、互いにカラダをぶつけ合うハイボールの競り合いに持ち込まれるとテキメンに弱い。たとえば女子W杯・決勝トーナメント1回戦のノルウェー戦では、この形でしっかり1失点している。

 もしノルウェーがあんなに後ろに引いて守備的に構えず、サイドからがんがんクロスを入れる、縦にロングボールをどんどん放り込む、という自分たちの高さを積極的に生かす戦い方をしてきたら、なでしこジャパンは何失点していたかわからない。

 ノルウェーはこういう自分たちのストロングポイントを生かす戦い方をせず、「受けに回った」から自滅したのだ。

 さて、こんなふうに相手がハイボールを入れてくることを狙うケースでは、敵がクロスを入れる前にボールホルダーにプレスをかけて先に潰してしまいたい。まずはマークを掴んで離さない。自由にさせない。クロスを入れさせない。 

 ここがポイントだ。

 そういう「一手前」のディフェンスがなでしこジャパンには欠けている。相手ボールにプレスがかからず敵はクロスを入れ放題。これではやられる。

 以上が第一の課題になる。

敵の陣形が崩れていれば速攻を

 もうひとつの欠点は、「アジアカップ2023」で優勝したU-17日本男子代表のダメな点とまったく同じだ。

 それは、アドリブでそのときの局面や相手の態勢に応じてやり方を変えるところがない点だ。なでしこはあくまで自分たちの間合いだけで攻めたり守ったりしている。

 それが顕著に表れるのは、マイボール時に何気なくいったんバックパスして組み立て直し、「何でもかんでも遅攻に」してしまうところだ。

 なでしこを観ていると、深く考えず手クセのようにバックパスしているように見える。「取りあえずバックパスしておけば安心だ。あとのことはそれから考えよう」みたいな感じだ。

 そうじゃなく、特に相手の守備の態勢が崩れているときには、崩れているうちに早いタイミングで速攻をかけて攻め切りたい。逆に敵の守備隊形が万全ならば、そのときはいったんバックパスしてポゼッションをしっかり確立させてから攻めるのでいい。

 こんなふうに「すぐ攻めるべきか? それとも遅攻か?」は、あくまで相手の状況による。ゆえに何も考えずバックパスするその前に、敵味方の陣形を事前にまずしっかり確認しておくことだ。

 そして遅攻ばかりでなく、状況に応じて「必要なら縦に速く攻めること」も心がけたい。

 さて、なでしこジャパンは9月23日(土・祝日)12:00に福岡・北九州スタジアムでキックオフされる国際親善試合・アルゼンチン女子代表戦を戦う。先の女子W杯で出た上記のような課題を、しっかり修正して臨みたい。

 なおこの親善試合は、テレビ朝日系列で全国生放送される。現地へ行けない人はテレビでぜひ応援してほしい。

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【セリエA 23/24 分析】鎌田とゲンドゥージは共存できる

2023-09-07 05:00:41 | その他の欧州サッカー
両者はまったく特徴が違う

 ラツィオにあのMFマテオ・ゲンドゥージがレンタル移籍すると知ったとき、「来たー」と胸が高鳴った。ゲンドゥージといえば彼を認めて引き立てたウナイ・エメリ監督のアーセナル時代、彼が大活躍するのを食い入るように観ていたからだ。あれは2019年。ゲンドゥージはまだ20歳だった。

 その後、彼は後任のミケル・アルテタ監督とモメて構想から外れ、所属クラブが二転三転してオリンピック・マルセイユ経由でラツィオに来た。フランス代表だ。なんでもウナイ・エメリ監督率いるアストン・ヴィラからも、彼は具体的なオファーを提示されていたという。

 ゲンドゥージはセントラルMFとして、攻守両面で精度の高い仕事ができるプレーヤーだ。ボックス・トゥ・ボックスの選手で前へも飛び出せる。

 彼の右足から放たれる強くて速いロングパスは非常に正確だ。アタッカーの足元にすっぽり点で収まる。受け手がどちらの足でトラップするのが有利かまで計算して出せる。

 これを警戒して相手の最終ラインがもし下がれば、今度は敵MFとのライン間にできたスペースにグラウンダーのパスも打てる。穴のないマルチなプレイヤーだ。

鎌田は攻撃的、ゲンドゥージは組み立て役だ

 巷間、「鎌田大地とゲンドゥージは併存できない」などと言われているが、まったくそんなことはない。両者はまるで特徴がちがうからだ。

 鎌田は中盤・前寄りの攻撃的な選手であり、ゲンドゥージは中盤のより低いゾーンで生きる組み立て役の選手である。

 なのに「両者は併存できない」説がなぜ流れるのか? それは4-3-3のフォーメーションを取るマウリツィオ・サッリ政権下では、アンカーのダニーロ・カタルディと左インサイドハーフのルイス・アルベルトの2人は鉄板だと考えられているからだ(少なくともサッリの脳内では)。

 ゆえにMFの鎌田とゲンドゥージは必然的に、残る右インサイドハーフのポジションを奪い合うことになる。で、「同時起用できない」説が乱れ飛ぶのだ。

 だがもしサッリがその認識を改めたとしたら、鎌田は右IH、ゲンドゥージはアンカーでことは丸く収まる。機能的にはまったく何の問題もない。

右IHで時間差起用もアリ

 ゲンドゥージの得意な仕事は最終ラインに落ちてビルドアップを助けるプレイや、全体のバランスを取る動き、ゾーンのギャップを突くポジショニングからの縦横へのドリブルやパス出しなどだ。

 そんなゲンドゥージが中盤の底からのプッシュアップ役なら、鎌田は中盤から前へ飛び出しゴールを取る騎馬武者タイプ。これだけキャラがちがえば同時起用できる。

 ただしサッリが「アンカーのカタルディは絶対に動かさない」とがんばるなら、今季第3節のナポリ戦みたいに鎌田とゲンドゥージを右IHで時間差起用すればいい。

 先発は鎌田だ。彼が点を取り、リードして逃げ切りたい場面になればゲンドゥージと「ご苦労さん交代」する。で、手堅く試合を終わらせる。

 これなら2人ともフル出場せずに済み、インテンシティが落ちることはない。長いシーズンにも耐えられる。あとは2人いっしょに「小さな盾」(スクデット)を高く掲げるだけである。

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【J1 鹿島 王の帰還】なぜ柴崎はスペインで通用しなかったのか?

2023-09-06 09:10:45 | Jリーグ
ひとつは守備を求められたから?

 9月4日、スペイン帰りのあの柴崎岳がついに鹿島アントラーズに合流した。2016年以来、7年ぶりの「帰巣」だ。

 日本人で唯一、レアルマドリーから2点を取った男が帰ってきた。

 なぜ天才・柴崎はスペインで芽が出なかったのか? それはヘタフェ時代に柴崎の頭上をボールが飛び交っていた光景を思い出せばだいたい察しが付く。

 想像だが、ひとつにはまず取ってくれるクラブが最初は下位チームになるから、というのがあるだろう。

 さすがに日本からスペインに行き、いきなりレアルマドリーやバルセロナがオファーをくれるわけがない。まずは「下位より始めよ」ということになる。

ファーストペンギンの苦悩

 特に柴崎の時代は、まだ日本人選手が世界に今ほど実力をアピールできてなかった時代だ。その意味で柴崎は「ファーストペンギン」だった。海外移籍で先頭を切ったのだ。

 だが彼を取ってくれるようなスペインの中小クラブは、マドリーやバルサに対抗するため必然的に守備戦術重視になる。まずは守備に手をかけてこだわる。そういうチームに柴崎はまず入ることになる。

 すると当然、攻撃が最大の持ち味である彼の良さが生きない。

 一方、守備を求めるチームからすれば、「こいつは使えないぞ」となってしまう。

 で、移籍するのだが、結局は次も同様に下位チームだ。またも守備練習が始まり、「こいつは使えない(以下略)」のような構図になる。

 この図式に柴崎は相当、悩んだのではないか?

 そして彼はこの円環構造にハマり込んで抜け出せず、とうとう本領発揮とは行かなかったのではないか? というのがひとつある。

静かにプレイで示すタイプだ

 そのほかの要素はサッカー以外のところだ。考えられるのは環境への適応である。

 柴崎はキャラクター的に、静かにプレイで示すタイプだ。

 スペイン人みたいに賑やかで陽気で大らか、オープンなタイプじゃない。どちらかといえば内にこもるタイプだろう。

 ゆえにスペイン人から見れば、「こいつはいったい何を考えているのかわからない」となったのではないか? そうとでも考えない限り、あの柴崎の「実力が通じなかった」とは思えない。

 それだけコミュニケーションや生活、付き合い、人間交流は大きい問題なのだろう。そう考えるとサッカーの移籍とは本当にむずかしい。

 だが人間にはそれぞれ、自分が「生まれてきた意味」がある。それが柴崎の場合は「スペインでプレイすること」じゃなかった。

 ならば柴崎はスッキリ頭を切り替え、鹿島アントラーズを優勝させることに全精力を注いでほしい。それが自分の「生まれてきた意味だ」と発想を転換してほしい。生まれ変わるのだ。

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【WEリーグカップ 第2節】新潟Lはおすすめだ ~東京ヴェルディベレーザ 3-2 アルビレックス新潟レディース

2023-09-05 23:12:26 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
石淵萌実の2点目(ループ)がすごかった

 女子サッカーのカップ戦「WEリーグカップ」の第2節を観た。東京ヴェルディベレーザが攻撃的なサッカーをし、3-2でアルビレックス新潟レディースを破った。

 このカップ戦は6チームづつが、グループAとグループBに分かれて戦う。各グループで1回戦制によるリーグ戦を行い、各グループの1位チームが決勝に進出する。

 新潟レディースは、前節の第1節では2タッチ以内でグラウンダーのパスをていねいに繋ぐサッカーで、「男子チームとコンセプトを共有してるんだ!」と非常に驚かされた。

 一方、彼女たちは今回の第2節では相手が強豪ベレーザなので、後ろに重心を置いた守備に手堅い戦術的なサッカーをやっていた。第1節とはまったく違うスタイルで戦った。

 おそらく第1節のほうが本来のスタイルなのだろう。相手によってこんなにやり方を変えられるんだ? とびっくりした。

 特に2点を取ったFW石淵萌実選手の2ゴール目がなにしろすごかった。「まさか、これが入るのか?」というような超絶的なループシュートだった。

 彼女はフィジカルも高くバネがあって、とてもいい選手だ(なぜなでしこジャパンに選ばれないのか?)。男子サッカーの試合でも、あんなダイナミックなシュートはいままで観たことがない。

 女子サッカーというとベレーザ、浦和、INACあたりの名前が上がるが、石淵萌実選手とアルビレックス新潟レディースは要チェックだ。

テクニカルなベレーザもいい

 一方のベレーザは大きなサイドチェンジを交えながら、うわさ通り豪快に点を取りまくっていた。

 テクニック的にも申し分なく、もちろんこっちもおすすめだ。個人的にはもっとボールスピードがほしいが、まあ彼女たちはショートパスを繋ぐチームなので仕方ないか。

 新潟レディースのサッカーは「好きな人は好き」な個性的なスタイルで(私は大好きなタイプだ)、かたやベレーザのほうは「誰が観ても好き」なサッカーだった。

 試合のプレー強度(インテンシティ)も高く、非常におもしろかった。新しい発見だった。

 なお以下のサイトの下方で、今大会の試合のフル配信・見逃し配信を観られる。ハイライトその他もアリ。特に新潟レディースは第1節のほうが攻撃的なので、ぜひそっちの方を見てほしい。どうぞお楽しみ下さい。

【関連サイト】

WEリーグ公式チャンネル

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【サッカー日本女子代表】なでしこジャパンはなぜ練習試合が組めなかったのか?

2023-09-05 06:51:05 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
23日にアルゼンチン女子代表戦

 日本サッカー協会(JFA)は4日、国際親善試合のアルゼンチン女子代表戦(9月23日・土・祝/12時、テレビ朝日系列で全国生放送)を戦うなでしこジャパンのメンバー23人を発表した

 記者会見に出席した佐々木則夫女子委員長は席上、「W杯で8強入りしたのに別の国から対戦オファーはなかった」とこぼした。

 おかげで今月26日にアルゼンチンともう1試合、練習試合を行う異常事態だ。

 なでしこは、なぜ女子W杯で8強入りしたのにアルゼンチン以外の別の国から対戦オファーがなかったのだろうか? これは各大陸で五輪予選が開催されているから、というのもあるだろうが、ひとつにはスタイルの違いもあるのではないか?

なでしこのタイプが特殊だから?

 例えば女子サッカーの世界では、強い上位チームは日本みたいに丁寧にパスを繋ぐスタイルより、女子W杯でベスト4入りしたスウェーデン女子代表やオーストラリア女子代表のように大柄でフィジカル勝負のゴリゴリ来るストロングスタイルなチームが多い。

 だから日本のように技術はあっても華奢で非力な「特殊なチーム」と練習試合しても、日本みたいなタイプは五輪や女子W杯にはいないからあまり意味がない、ということではないか?

 つまり日本と練習試合しても「球際を強く激しく競り合うような練習」にはならないから、本番で役に立たないわけだ。

 まあなでしこジャパンとやれば、唯一、彼女たちとスタイルが似ている世界チャンプのスペイン女子代表を倒すための練習にはなるわけだが。

 やっぱりなでしこは、フィジカルを鍛えてアスリート化するしかないのかもしれない。

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【プレミアリーグ 23/24 第4節】ハーランドがハットでシティ4連勝 〜マンチェスター・シティー 5-1 フラム

2023-09-04 08:22:49 | イングランド・プレミアリーグ
アカンジが偽CB化しビルドアップする

 マンチェスター・シティは9月2日に行われたプレミアリーグ第4節フラム戦に、5-1で完勝した。ハーランドがハットトリックを達成し、チームは開幕から4連勝を飾った。

 結果的に5-1と大差になったが、前半アディショナルタイムに入るまで試合は1-1で推移し息詰まる前半になった。殴られても殴られても前に出てくるフラムの折れない闘争心は素晴らしかった。彼らに敬意を表したい。

 さてシティのフォーメーションはいつもの4-2-3-1だ。ビルドアップはCBアカンジが偽CB化し前に出てCMFロドリと並び、CMFコバチッチを上がらせ3-2-4-1に可変して行う。守備時4-4-2だ。

 ロドリは適宜、最終ラインにも降りる。彼らは敵最終ラインがボールを保持すると、4〜5枚でハイプレスに行く。そして押し込み切るとセンターサークルに1枚だけ残して全員が上がり切る。

 初出場のベルギー代表MFドクは立ち上がりは右サイドハーフだったが、前半途中から逆サイドのフォーデンとポジションチェンジしている。

ファイティングスピリットがすばらしいフラム

 シティの先制点は前半31分に生まれた。コバチッチが縦にスルーパスを入れ、ハーランドが右に折り返してアルバレスが決めた。今日もシティは好調だ。

 だがフラムも黙っちゃいない。33分。フラムが右CKを受けてニアのヒメネスがワンタッチでシュートし、GKエデルソンがボールを弾くも最後はティム・リームが押し込んだ。これで1-1の同点だ。この得点後、彼らは堂々とシティを押し込み、しばらく攻め立てた。

 フラムの攻撃力はあなどれない。ファイティングスピリットがすばらしい。前節、アーセナルとの試合でも彼らのプレーを見たが、攻めが鋭く印象に残った。フラムは弱者のサッカーをせず怖気づくことなく攻撃し、シティと対等に攻め合っている。ボールが一方のゴールからもう一方のゴールまで盛んに行き来し、非常におもしろいゲーム展開になった。

 さてシティの2点目は50分だった。左CKからゴール前にボールが入り、フリーのアケがヘッドで見事に決めた。2-1とシティがリードする。

 ただこのときオフサイドポジションにいたアカンジが足を動かしボールを避けたのだが、これがプレーに関与したとの疑念もあり、フラムが執拗に抗議した。だが得点は認められる。

シティがビルドアップを変える

 ゲームは後半に入った。シティはアカンジが右CBに変わる。そして右CBだったディアスが左CBに入った。これでシティはビルドアップ時、CBアカンジが右にスライドして右SBウォーカーを前に押し出す。そして3-2-4-1でビルドアップする形に変わった。

 また前半のビルドアップとちがい、中盤には2人のCMFコバチッチとロドリが並んでいる。ただしロドリは適宜、最終ラインにも落ちる。

 シティの3点目は58分だった。味方からパスを受けたアルバレスがワンタッチできれいに縦パスを出し、敵に当たったボールをハーランドが左足で落ち着いてゴール左に収めた。

 2点リードされたフラムはビルドアップするシティに前3枚でハイプレスをかけ、奪うと後ろから2〜3枚がなだれ込んで攻撃する。フラムのフォーメーションは4-3-3だ。彼らはボールを失っても同じフォーメーションで前から守備をする。また下がって守備ブロックを組むときは4-5-1になる。

フラムが最後まで総攻撃をかける

 シティの4点目はPKだった。まず右サイドから浮き球のダイアゴナルなパスが出る。受けたアルバレスが胸でトラップしたところ、後ろからディオップが引っ掛けてファウルしPKになる。キッカーはハーランド。彼はゴール左のサイドネットに目の覚めるような弾丸シュートを打ち込んだ。

 だがフラムの闘志はまだまだ衰えない。シティのビルドアップに対し、今度は敵陣に3トップと2IHの計5人が残りプレスをかけては奪うと攻撃に出る。GKエデルソンのボールにまでプレスを見舞う。彼らの最後まで闘う気持ちには胸が熱くなる。

 さて後半アディショナルタイムにシティの5点目が入った。途中出場のセルヒオ・ゴメスが、鋭いドリブルでボックス左に入り込む。そして狙いすました強くて速いマイナスの折り返しを入れる。受けたハーランドはゴール左に地を這うような痛烈なショットを見舞った。

 これでハーランドはハットトリック。チームは開幕から無敗の4連勝だ。今季もシティが猛威をふるっている。

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