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シュワルツコップの名唱

2011年02月21日 22時18分10秒 | R・シュトラウス
少し前に、近所の本屋さんで、『レコード芸術 月評特選盤1980-2010 交響曲編』の上下巻を見つけ、買ってしまいました。30年間のLPやCDの批評がまとめられており、現在名盤と言われている多くのCDを見ることができます。まあ、批評を読んでも、その演奏がどんなものか知ることはけっこう難しいです(拙ブログなんかはもっとひどいでしょうね)。いくつか読んでいく中で、ひとつ気づいたことがありました。それは、先頃亡くなった小石忠男さんの文には、「アゴーギク」「デュナーミク」といった言葉が、実に頻繁に登場するのです。この言葉の意味はともかく、小石氏はこれがお気に入りだったんでしょうか。そう意識するからかもしれませんが、ほんとによく登場されます。見る度に、また出て来た!といってうれしがっています(笑)。すんません。

さて、今回はRシュトラウスの歌曲であります。以前にグルベローヴァの演奏を取り上げましたが、今回はこの歌曲の原点ともいうべきエリーザベト・シュワルツコップのソプラノによるもの。ジョージ・セル指揮のベルリン放送交響楽団・ロンドン交響楽団の伴奏。このCDは、言わず戸知れた名盤であります。CDジャケットには、シュワルツコップのお綺麗な写真が見られます。しかし、シュワルツコップさん、1972年あたりに来日されたときのことを憶えていまして、当時愛読していた『週間FM』の表紙などで、そのリサイタルの写真などを拝見しましたが、かなりのご高齢のご婦人という印象が強いのです。それに比べると、このジャケットの写真は大分のことお若く、お美しいので少々驚いた次第です。すんません、くだらないことを述べました。

このCDには、まずRシュトラウスの最晩年の『4つの最後の歌』と、その他12曲の歌曲が収められています。1965から68年にかけての録音。シュワルツコップさんは1915年のお生まれだそうですので、50才を少しすぎたあたり。うーん、そうか、歌声が少々年取ったな、と思われるのはそれがためか、と思ってしまいました。少々籠もり気味の印象がする声であります。彼女のキャリアからすると晩年に入ったころのものなんでしょうか。声に苦しさを感じさせるところもないわけではありませんが、そんなことはどうでもよくなるような表現力と技巧の豊富さには、舌を巻いてしまいます。例えば、『森のしあわせ』。ゆったりとしたテンポでそれほど変化のない音階が続く、Rシュトラウスにありがちの曲ですが、それを単調にならず、逆にたいそう豊かな表情を感じさせる歌唱ですね。また、『献呈』。一気に歌ってしまう傾向に流れるところがありますが、一言一言をじっくりと噛みしめるように表現しているシュワルツコップの巧さが実によく感じさせられます。そして、もっともいいな、と思うのが『あした』です。ヴァイオリンの甘美なメロディから、こぼれるような幸福なふたりの心が歌われ、無上の喜びを感じさせてくれます。消え入るようなヴァイオリンとそれに合わせるような歌声の確かさもいいです。そして、最後の『冬の捧げもの』でも、孤独な中からの幸せへの願いが痛いほど伝わってくるのです。弱音での表現力には脱帽しますね。しかし、このCD、一番有名で評価されているのは、最初に収められた『四つの最後の歌』であります。この演奏は、まずセルとベルリン放響を伴奏が素晴らしいですね。Rシュトラウスの夕映えの世界を、実に巧く描写しているようで、好きな演奏であります。一方、シュワルツコップ、巧いなあって思うし、情感たっぷりの心を動かされる歌唱なんです。特に、「眠りにつこうとして」は、前の「九月」までと変わって、しみじみとした美しさにあふれる名唱であります。そして、最後の「夕映えの中で」も、人生の夕焼けを描く絶唱なんですね。しかし、なぜかこの曲では、シュワルツコップの歌唱は、好きになれないのであります。巧すぎるからでしょうかねえ。うーん。

このCDを買ったのはもう20年近い前です。定価3100円とあります。一方、シュワルツコップのEMIへの録音集10枚組BOXが今月末に発売されるそうですが、HMVでは、2271円なんです。思わずクリックしていまいそうであります。
(EMI CC33-3324 1986年)

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