めっきり、涼しくなりましたね。いやいや、けっこうなことです。しかし、新型インフルエンザ。職場でも感染者が出ました。それどころか、自分も感染するかもしれないので、これもまた困ったものですねえ。感染した人に聞くと、熱が40度近くになったりするとか。それもしんどいことですよねえ。いやはやであります。
それで、今回はR・シュトラウス。交響詩『英雄の生涯』であります。この曲、あまり好きではないのですが、そうは言っても、音楽の魅力はなかなか抗しがたいものがあります。いろんな演奏がありますが、今回はアンドレ・プレヴィン指揮のVPO。1988年11月、ウィーンのムジークフェラインザールでの録音です。録音のよさで名高いテラーク盤であります。
アンドレ・プレヴィンって人、あまり聴いたことはないのです。昔、ジャズ・ピアニストかなんかやったですね。R・シュトラウスを得意としているようで、テラークなどに一連の交響詩などを中心とする作品を録音しています。この『英雄の生涯』は、まずVPOの音が極めてまろやかなんですね。とげとげしさなどはまったく感じず、弦もしっかりとした艶のある音色で、また木管なども実に柔らかいんですね。これがまったくもってよいのかと言えば、そうでない向きもあるんですが、ここではいいです。そして、もう一つは、ソロ・ヴァイオリンのライナー・キュッヒルの演奏。それがまた滑らかでしっとりとした落ち着きあふれる、暖かいヴァイオリンは絶品ですねえ。プレヴィンが当時のコンマスのゲアハルト・ヘッツェルをなぜ起用しなかったかは、不明です。前年に録音した『ツァラトゥストラはかく語りき』では、独奏ヴァイオリンはヘッツェルなんですね。そのことはさておき、キュッヒルのヴァイオリンとVPOの音色が実によく合っているのがいいですねえ。
全体的に、それほどの激しさや凄絶さを感じない演奏なんですが、それは最初の「英雄」のテーマも力まず、美しささえ感じます。そして、「英雄の敵」では英雄を非難する木管が美しい響きですね。ただ、これは悪の表現なんでしょうが、逆に美しさを感じてしまいまね。続いて「英雄の伴侶」。ここではキュッヒルのヴァイオリンに尽きます。R・シュトラウスの旋律の美しさを満喫させてくれます。ただ、他の曲と非常によく似ているところが少々悩みますが…。次の「英雄の戦場」では、敵を現す金管・木管の響きがさすがのVPOです。粗くならない安定感が印象的です。ただ、今ひとつの邪悪さを聴いてみたい点もありますねえ。そして、最後の「英雄の業績」と「英雄の引退と完成」は、この曲の美しさが滲み出てくるところです。プレヴィンも味わうような演奏を展開してくれます。前者では、これまでの交響詩のテーマが次々と登場するあたりはうっとりしてしまいます。後者では、穏やかな田園と英雄の諦念と振り返りがおだやかな美しさを満喫させてくれます。繰り返しますが、全曲を聴いて、キュッヒルの英雄の妻がいいですねえ。20年たった現在も、VPOのコンマス。いいです。
この『英雄の生涯』、カラヤンの演奏が、頗る有名ですが、このプレヴィンとVPO、なかなか充実しています。
(TELARC CD-80180 1989年 輸入盤)
それで、今回はR・シュトラウス。交響詩『英雄の生涯』であります。この曲、あまり好きではないのですが、そうは言っても、音楽の魅力はなかなか抗しがたいものがあります。いろんな演奏がありますが、今回はアンドレ・プレヴィン指揮のVPO。1988年11月、ウィーンのムジークフェラインザールでの録音です。録音のよさで名高いテラーク盤であります。
アンドレ・プレヴィンって人、あまり聴いたことはないのです。昔、ジャズ・ピアニストかなんかやったですね。R・シュトラウスを得意としているようで、テラークなどに一連の交響詩などを中心とする作品を録音しています。この『英雄の生涯』は、まずVPOの音が極めてまろやかなんですね。とげとげしさなどはまったく感じず、弦もしっかりとした艶のある音色で、また木管なども実に柔らかいんですね。これがまったくもってよいのかと言えば、そうでない向きもあるんですが、ここではいいです。そして、もう一つは、ソロ・ヴァイオリンのライナー・キュッヒルの演奏。それがまた滑らかでしっとりとした落ち着きあふれる、暖かいヴァイオリンは絶品ですねえ。プレヴィンが当時のコンマスのゲアハルト・ヘッツェルをなぜ起用しなかったかは、不明です。前年に録音した『ツァラトゥストラはかく語りき』では、独奏ヴァイオリンはヘッツェルなんですね。そのことはさておき、キュッヒルのヴァイオリンとVPOの音色が実によく合っているのがいいですねえ。
全体的に、それほどの激しさや凄絶さを感じない演奏なんですが、それは最初の「英雄」のテーマも力まず、美しささえ感じます。そして、「英雄の敵」では英雄を非難する木管が美しい響きですね。ただ、これは悪の表現なんでしょうが、逆に美しさを感じてしまいまね。続いて「英雄の伴侶」。ここではキュッヒルのヴァイオリンに尽きます。R・シュトラウスの旋律の美しさを満喫させてくれます。ただ、他の曲と非常によく似ているところが少々悩みますが…。次の「英雄の戦場」では、敵を現す金管・木管の響きがさすがのVPOです。粗くならない安定感が印象的です。ただ、今ひとつの邪悪さを聴いてみたい点もありますねえ。そして、最後の「英雄の業績」と「英雄の引退と完成」は、この曲の美しさが滲み出てくるところです。プレヴィンも味わうような演奏を展開してくれます。前者では、これまでの交響詩のテーマが次々と登場するあたりはうっとりしてしまいます。後者では、穏やかな田園と英雄の諦念と振り返りがおだやかな美しさを満喫させてくれます。繰り返しますが、全曲を聴いて、キュッヒルの英雄の妻がいいですねえ。20年たった現在も、VPOのコンマス。いいです。
この『英雄の生涯』、カラヤンの演奏が、頗る有名ですが、このプレヴィンとVPO、なかなか充実しています。
(TELARC CD-80180 1989年 輸入盤)