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やっと、週末までこぎ着けました。月から金まで神戸にいるのは、ほぼ一ヶ月ぶりであります。昨晩は、台風一過のせいかかなり涼しい夜でしたね。まあ、少しずつでも、過ごしやすくなってもらいたいものです。明日から週末は岡山になります。そして、月曜日からまたしっかり労働に励みたいものであります。どうなることやら…。
さて、今回は、モーツァルトのクラリネット協奏曲イ長調K.622であります。そういえば私の後輩で、ブラバンでクラリネットを吹いていてという人がおりました。彼は、ジャック・ランスロの心酔しておられまして、自分のクラリネットケースにふたの裏側にランスロのサインをもらっていました。それを嬉しそうに語るのを今でも憶えております。ちょうどそのころ、クラリネットと言えば、カール・ライスターや、アルフレード・プリンツ、そしてこのランスロだったんでしょうかね。ランスロの同曲の演奏は、パイヤールと組んだものですが、これも名盤といわれるものでした。これくらいの名曲になると、いろんな名演奏がありますが、今回は彼らよりももう一世代昔の演奏家である、レオポルド・ウラッハの演奏であります。アルトゥール・ロジンスキー指揮のウィーン国立歌劇場管弦楽団。1954年のモノラル録音です。
ウラッハといえば、戦前から戦後にかけてVPOの首席奏者。クラリネット奏者としては、伝説上の名手と言っても過言ではないでしょう。自らソロを吹くものや、VPOのメンバーとの木管アンサンブルなどでも至芸を聴くことができます。その数は、けっこう多いでしょうね。しかし、これほどの名手にもかかわらず、彼の写真は長いこと、クラリネットをもった横顔のものしか見たことがありませんでした。うーん、この人は写真嫌いだったのかな、とも思ったり…。そんなとき、中野雄他三氏による『新版 クラシックCDの名盤』(中公新書)のブラームスのクラリネット五重奏曲の項に、ウラッハの正面から撮られた写真が掲載されていたのを拝見しました。そうか、こんな人だったのかと、妙に納得したのでありました。
それで、モーツァルトですが、この協奏曲と五重奏曲は、クラリネットのために書かれた曲としては、もう突出した素晴らしさを持っていますよね。ともに、最晩年の曲。モーツァルトがどんな状況だったかは置いといても、これだけの澄み切った美しさは、なんとも言えませんね。聴く度にモーツァルトって天才だったんだな、って思います。まず、ロジンスキーとVPOですが、弦の味のある音に注目されます。小規模のオケでしょうが、その瑞々しい美しさは格別のものがあります。特に第2楽章は、ウラッハのクラリネットと同化した美しさを湛えています。また、第3楽章では、クラリネットを支えるところは、なかなな堂に入ったところですねえ。そして、ウラッハのクラリネットですが、第1楽章で出だしのあたりでは、か細い音色を感じるのですが、曲が進むにつれて、その音色の深さに次第に耳を奪われていきます。クラリネットの音色は、実にコクがあり、その味わいの深さには、感心させられますね。その確かな音程に立派です。低音になれは低音の、高音部では高音が、安定した形に加えて、美しいクラリネットが聴けます。聴けば聴くほど新たな感動を呼びます。技能的に、素晴らしいことをそれほど感じるわけではないのですが、その深い音色や安定した音程などは、何物にも代え難いものですねえ。
この演奏は、もう今から25年以上も前に中古レコード屋さんでLPで買いました。音響的にはほとんど満足していたのですが、今回岡山のBOOKOFFでCDを見つけ買ってしまいました。CDでは。以前にも増して、音質は向上したと思います。モノラルと言っても、それほど気になりません。こんな美しい曲を書いたモーツァルト、映画『アマデウス』で展開されたのは、彼の正しい人間像だったのでしょうか。あれはどれだけ事実を伝えているのでしょうか。もっとも、人格と音楽はまったく関係ないと思いますが、いかがでしょうか。
(Westminster MVCW-19009 1996年)
さて、今回は、モーツァルトのクラリネット協奏曲イ長調K.622であります。そういえば私の後輩で、ブラバンでクラリネットを吹いていてという人がおりました。彼は、ジャック・ランスロの心酔しておられまして、自分のクラリネットケースにふたの裏側にランスロのサインをもらっていました。それを嬉しそうに語るのを今でも憶えております。ちょうどそのころ、クラリネットと言えば、カール・ライスターや、アルフレード・プリンツ、そしてこのランスロだったんでしょうかね。ランスロの同曲の演奏は、パイヤールと組んだものですが、これも名盤といわれるものでした。これくらいの名曲になると、いろんな名演奏がありますが、今回は彼らよりももう一世代昔の演奏家である、レオポルド・ウラッハの演奏であります。アルトゥール・ロジンスキー指揮のウィーン国立歌劇場管弦楽団。1954年のモノラル録音です。
ウラッハといえば、戦前から戦後にかけてVPOの首席奏者。クラリネット奏者としては、伝説上の名手と言っても過言ではないでしょう。自らソロを吹くものや、VPOのメンバーとの木管アンサンブルなどでも至芸を聴くことができます。その数は、けっこう多いでしょうね。しかし、これほどの名手にもかかわらず、彼の写真は長いこと、クラリネットをもった横顔のものしか見たことがありませんでした。うーん、この人は写真嫌いだったのかな、とも思ったり…。そんなとき、中野雄他三氏による『新版 クラシックCDの名盤』(中公新書)のブラームスのクラリネット五重奏曲の項に、ウラッハの正面から撮られた写真が掲載されていたのを拝見しました。そうか、こんな人だったのかと、妙に納得したのでありました。
それで、モーツァルトですが、この協奏曲と五重奏曲は、クラリネットのために書かれた曲としては、もう突出した素晴らしさを持っていますよね。ともに、最晩年の曲。モーツァルトがどんな状況だったかは置いといても、これだけの澄み切った美しさは、なんとも言えませんね。聴く度にモーツァルトって天才だったんだな、って思います。まず、ロジンスキーとVPOですが、弦の味のある音に注目されます。小規模のオケでしょうが、その瑞々しい美しさは格別のものがあります。特に第2楽章は、ウラッハのクラリネットと同化した美しさを湛えています。また、第3楽章では、クラリネットを支えるところは、なかなな堂に入ったところですねえ。そして、ウラッハのクラリネットですが、第1楽章で出だしのあたりでは、か細い音色を感じるのですが、曲が進むにつれて、その音色の深さに次第に耳を奪われていきます。クラリネットの音色は、実にコクがあり、その味わいの深さには、感心させられますね。その確かな音程に立派です。低音になれは低音の、高音部では高音が、安定した形に加えて、美しいクラリネットが聴けます。聴けば聴くほど新たな感動を呼びます。技能的に、素晴らしいことをそれほど感じるわけではないのですが、その深い音色や安定した音程などは、何物にも代え難いものですねえ。
この演奏は、もう今から25年以上も前に中古レコード屋さんでLPで買いました。音響的にはほとんど満足していたのですが、今回岡山のBOOKOFFでCDを見つけ買ってしまいました。CDでは。以前にも増して、音質は向上したと思います。モノラルと言っても、それほど気になりません。こんな美しい曲を書いたモーツァルト、映画『アマデウス』で展開されたのは、彼の正しい人間像だったのでしょうか。あれはどれだけ事実を伝えているのでしょうか。もっとも、人格と音楽はまったく関係ないと思いますが、いかがでしょうか。
(Westminster MVCW-19009 1996年)