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最近購入した、または聴いたCDについて語ります。クラシック中心です。

デュ・プレのベートーヴェン

2011年03月13日 22時41分19秒 | ベートーヴェン
東北地方太平洋沖地震で被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。

私は、兵庫県の神戸市の西に住んでおりますし、職場はもっと西ですので、それほどの揺れは感じませんでした。自宅にいた家人が申すに、揺れは感じた、ということでした。仕事から帰ってテレビなどで状況を見ても、まだよくわからなかったのですが、翌日になって、津波の猛威や原発のことなどをテレビで見ることで、そのあまりに常識を越えた被害にただ驚き、恐怖を感じました。そして、十数年前の阪神大震災のときのことが、まざまざと思い出されました。もう、これ以上の地震や津波が起こらないことを心より祈っております。こんな事態の中、安穏に音楽のブログでもないのですが、いち早く普段の日常への復帰を願いつつつ、更新だけは、自分のペースで行いたいと思います。

ということで、今回は ベートーヴェンであります。チェロ・ソナタ第3番イ長調作品69です。この曲、聴くのはほんとに久しぶりです。ふと聴いてみたくなってCDに手を伸ばしました。1808年に作曲されたもので、「運命」や「田園」の交響曲の次に当たる番号が与えられており、いわゆるベートーヴェン中期の「傑作の森」を代表する室内楽曲であります。この曲は、本当にベートーヴェンの曲らしい魅力に溢れていますね。ベートーヴェンを、優れたメロディメーカーとするには、多少の躊躇がありあすが、彼の作った旋律には彼の心が息づいていますし、我々の心に染み込むものを持っていますね。この曲を久しぶりに聴いたあと、第1楽章の第1主題をついつい口ずさんでしまいました。メロディとして秀逸なものでもないと思うのですが、心に残るのであります。

この曲の演奏は、ジャクリーヌ・デュ・プレのチェロとダニエル・バレンボイムのピアノです。1970年8月25・26日、エジンバラ音楽祭でのライブ録音です。デュ・プレのことについては、以前にも述べたことがあります。デュ・プレの演奏家としての活動は、1961年から1973年までの12年間ですが、すでに1971年には彼女を死に追いやった多発性硬化症の症状が現れていたようです。この録音は、彼女の若すぎる晩年のものです。

この演奏では、まずなんと言ってもデュ・プレのチェロですねえ。スケールの大きな響きであり、チェロという楽器の音を最大限に発揮する迫力と、切々と心に染み込む痛切な叫びを感じます。特に、ライブということもあって、振幅の大きな演奏となっていますね。特に低音などは、実にうねりをあげての音色のようです。バレンボイムもデュ・プレに合わせて行こうとする気持ちを感じますが、少々ゆるいところも感じらます。それでもデュ・プレの全身全霊を込めたチェロに呼応するピアノが聴け、それはそれである種の微笑ましさを感じるときもありますねえ。第1楽章、第1主題では大らかでスケールの大きいチェロです。ベートーヴェンの旋律を心を込めての演奏に心が揺さぶられますね。どうしても、展開部では、熱を帯びたピアノも聴かれ、ライブらしい白熱した演奏になっていきます。第2楽章スケルツォ、哀愁帯びた旋律がすすり泣くようにチェロで歌われます。ピアノも明晰です。デュ・プレの気持ちの入った演奏は、ここでもいいですねえ。第3楽章アダージョ。一転して明るく美しい楽章。第2楽章の悲痛な叫びがここでは和らぎ、一気に明快な第4楽章へなだれこむ。伸び伸びとした主題を絡めて爽快な演奏。ここでもデュ・プレのチェロは心に染み込む演奏ですねえ。

地震発生から二日がたちました。被害の甚大さが刻々と明らかになってきています。また原発の状況も心配です。
(EMI THE COMPLETE EMI RECORDINGS 5 04169 2 2007年 輸入盤)

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