こんなCDを買った!聴いた!

最近購入した、または聴いたCDについて語ります。クラシック中心です。

『タチアーナ・ニコラーエワの芸術(37CD)』から

2020年08月30日 23時09分25秒 | バッハ
安倍さん、とうとうお辞めになるそうですね。「体調悪化と同時に、安倍首相が政権運営への意欲を喪失したから」「(この辞任を)深く傷つけられた日本の民主主義を立て直す一歩としなければならない」。そして「公文書の改ざんや隠蔽を重ね、対話を拒み、透明性のなさが目立つ」云々。でも「持病を抱え、ストレスもある中、ようがんばりはった」とも…。あれほど批判の声も多かった中、辞任となればねぎらうのは、日本人の美徳なんでしょうね。お疲れさまでした。

とは言うものの、猛暑ですねえ。冷房の入った部屋にいることも多いので、まだましなんですが、暑い。こう暑いと、いろんなことする気力が無くなってきますね。これは加齢のせいなのか、猛暑のせいか…。音楽を聴くのも聴いたでいいなあと思うし、満足満足なんですが、とっかかりがついつい億劫になりがちなんですねえ、しょうもない愚痴のようで申し訳ありません。そんな中でもCDはボツボツ買ってはおりますが…。

そんな中、過日ロシアのピアニスト、タチアーナ・ニコラーエワのCDを買いました。以前からこの人の平均律を聴きたかったのでした。HMVで在庫特価とあったのに惹かれまして、ついつい。Scribendumからの「The Art of Tatiana Nikolayeva」の37枚組です。9000円ほどですが、平均律などのバッハの主要鍵盤曲のほとんどやショスタコーヴィチの前奏曲のフーガが二種類。そしてベートーヴェンのソナタ全集にその他もろもろ、とまあ37枚のCDにはいろんな曲が収められています。これだけ集めてくれたら、満足感は高いのでありました。彼女の録音は、現在なかなか入手困難な状況のようです。それゆえ、このBOXは貴重ですし、嬉しいものなのでありました。ただ、現在はHMVでも入手できなくなっています。買ってよかったのでありました。

ニコラーエワは、1924年生まれで1993年69才で逝去されました。この人の平均律の録音は、1971~73年のものと、1984年(VICTOR盤、今市でのライブだが、1巻だけかな)と1985年(OLYMPIA盤)があります。ここに収められているのは、1971~73年のもので、彼女が40才台の時の録音ですね。もう半世紀以上前の録音になりますねえ。そんなわけで今回は、JSバッハの平均率グラヴィーア曲集第一巻であります。1971~72年の録音になります。

私は、このニコラーエワの演奏を聴くのは初めてなんです。やはりロシアのピアニスト、強打強音の極みであります。とまあ最初は思って、ここまで叩かんでもいいでしょう、と思ったりしていました。しかし、この平均律という曲は、非常に懐が深い。いろんな曲想が現れる。聴き進めていくうちに、曲に応じて様々な表情が見えてきます。その適応力と変幻自在の表現力は、目を見張るものがあります。特に、ニコラーエワの強打は澄んで透明感があるし、弱音においてもその美しさは比類ない。弱音といってもこの人の中での対比であり、他の演奏ではそう言えないかも知れませんが…。強音から弱音までピアノのもつ美しい音色での演奏は特筆すべきものでしょう。いわゆる明快なデュナーミクの凄さを実感させられます。加えて、バッハの美しい旋律がこんなピアノで実に鮮明に、また様々な表情で、また悠久の美しさが浮かび上がってくるのでありました。

例えば、第7曲変ホ長調、前奏曲は穏やかに旋律が歌われますが、フーガでは一転して強打炸裂。そして続く第8曲変ホ短調では強打のあとの弱音ぽいピアノの美しさが限りない。そして続く3声のフーガでは強弱の変化が絶妙。各声部でもその変化が見られたり、それによってバッハのフーガの見事さが強調されます。第12曲ヘ短調4声フーガは何時は果てるとも知れない永遠さが感じられます。そして、後半の14・15曲の前奏曲ではまたまた強打。ここで二枚目のCDへ。ここからしばらくは穏やかで心に染み込む美しさが堪能できます。私は第22~24曲が好きですが、第22曲の前奏曲では弱音と強打の対比が見事に曲で再現され、続く5声のフーガは実に厳粛。ピアノの残響が心に染み込む。そして最後の第24曲ロ短調。この長大な前奏曲とフーガはこれまでの演奏の総まとめのように、いろんな表情を聴けます。特にフーガでは、各声部で強弱入り乱れ、そして最後に向かうところでは、これまで以上の強打で大見得を切るように終わり、見事であります。

しかし、このニコラーエワのBOX、あまりに箱が貧相です。彼女の写真が少しピンボケかかったものだし、37枚も収めるのだから、もう少し堅固な箱が欲しいです。まあ廉価なんで仕方ないと言えば、そうなんですがねえ。それが残念でした。あっ言い忘れましたが、冒頭の引用文は、すべて2020年8月29日の朝日新聞朝刊からです。
(Scribendum SC810 2018年 輸入盤)

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« コンヴィチュニーのブラーム... | トップ | 朝比奈さんのブルックナー ... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (クレモナ)
2020-09-03 22:14:17
よく、政治家のレベル(質)は、国民の民度を越えない、と言われます。つまり、選挙で選ばれるのが、政治家だからです。今回の、首相選びも、間接的には、国民が関わっているのでしょうが、全くの茶番で、滑稽に見えます。日本は、本当に、近代国家なのでしょうか?
ニコラーエワのバッハですね!この演奏、以前、所有していましたが、今、手元にはありません。ですから、どんな演奏だったか、記憶にないので、彼女の演奏を、ユウチューブで見てみました。今は、どんなものでも、ユウチューブで見ることができ、良い時代になったものです。平均律は見ることが出来なかったのですが、他の曲を聴きました。一見すると、田舎の呑気なお婆ちゃんという雰囲気ですが、紹介の通り、強い打鍵で、くっきりとした音楽を作っていきます。お世辞にも、美しい手ではありませんが、太めの指は逞しく、バッハはもとより、ショスタコーヴィチの「前奏曲とフーガ」など、難解な曲を、ぐいぐい、弾いていきます。動画を見ると、よく解りますね。素晴らしいピアニストの一人です。
返信する
コメントありがとうございます。 (mikotomochi58)
2020-09-06 10:53:21
クレモナ 様、コメント感謝です。ほぼ菅さんで後継首相はきまりなんでしょうね。30%くらいの支持率しかない政権を後継することは、はたして民意のあっているのかどうかよくわかりません。ただ、菅さんに期待できるとしたら、久々の二世議員ではない首相だ、ということぐらいですかねえ。
ニコラーエワの演奏、YouTubeでも見れるんですね。もう亡くなって30年が経とうとしていますが、ご指摘のとおりいい時代になりました。また見てみようと思います。
またご教示ください。
返信する

コメントを投稿

バッハ」カテゴリの最新記事