こんなCDを買った!聴いた!

最近購入した、または聴いたCDについて語ります。クラシック中心です。

車中で聴こう!『蝶々夫人』

2017年10月19日 22時39分03秒 | プッチーニ
先週末は、東博の『運慶展』を見るために東京に行きました。運慶作の仏像は30体余りしかなく、今回展示されていたのはその8割くらい。広い会場でゆったり一体一体をじっくり見れました。私は個人的には快慶の方が好きですが、運慶にはその迫力や写実性に圧倒されますね。白眉はやはり世親・無著像でしょうか。また観客も、前へ前へと行きたがる関西人とは違い、一歩引いてご自分なりの距離で見る人が多く、人数の割にはそれほどの混雑感もなく見れたことがよかった。そのあと、サントリー美術館で『狩野元信』展も見て一泊。翌日は鎌倉に行って帰りました。

そんなわけで週明けはなかなか辛かったのです。月曜日に『蝶々夫人』についての解説を聞く機会がありました。ストーリーを概説されて、名場面を見る、というものでしたが、けっこうおもしろく、最後の自決の場面では毎度のように涙したのでありました。しかし、このオペラを聴くのは久々でした。それで、よしよしということで、CDを出してもう一度聴こう!ということになったのでありました。通勤の行き帰りでほぼ全曲聴けたのであります。

それで演奏ですが、私はカラヤンのカラス盤とフレーニ盤、バルビローリのスコット盤、セラフィンのテバルディ盤、シノポリのフレーニ盤を持っております。この中では、やはり好きなのは、テバルディ盤なんですね。そんなわけで、例の通勤の車中で、このオペラを聴いておりました。やはり、プッチーニはいいですね。甘美で憧憬を感じるようなオペラ。ストーリー展開などどうでもいい。曲の流れに身を浸しておれば、陶酔感を味わうのでありました。

トゥリオ・セラフィン指揮ローマ聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団合唱団。蝶々夫人はテバルディ。ピンカートンにベルゴンツイ、スズキはコッソットが主な配役。1958年の録音ですので、もう60年も前のもの。録音はまったくストレスなく良好に音楽をきくことができます。

まず、セラフィンの指揮ですが、このオペラの起伏に富んだ物語をたいそう写実的に演奏しています。この演奏が素晴らしいには、まずこの指揮。柔らかいオケの音色を駆使して、実に表情が豊かなんですね。このオペラは、蝶々さんの感情がいろいと移り変わるところも魅力なんですが、その変化をセラフィンは実に巧妙に写実しているのです。そこがテバルディの歌唱とも相俟って、高い効果をあげて、この演奏に引き込まれていくのでありました。そのあたりは百戦錬磨の強者の指揮であります。

そして、やはりテバルディ。非常にダイナミックで安定感抜群の歌唱。これくらいなんでもないよ、って感じでの自信たっぷりに歌われます。音階は整っているし、ぶれもなく無理をしたり、不自然な歌い方はまったくなく、うまいな、と思わせます。憧憬、不安、怒り、祈り、恐れ、与喜び、歓び、これらが絶妙の歌声で歌われているのです。このような感情の起伏もどっさり。声もどこを取っても美しく可憐。もう何の不満もありません。やはり、私にとってテバルディはプッチーニの理想型ですね。もう最高のミミ、トスカであり。蝶々夫人であります。

その外にも、スズキのコッソットも上手いです。ただ、私的にカラヤン盤のルードヴィッヒをどうしても意識してしまいます。少々目立ちすぎかなとも。そして男声では、ベルゴンツイは、このピンカートン、好感が持てないので、この人はどうでいいです(笑)。シャープレスはいい人なので、これを歌うエンツォ・ソルデッロは、いいですね。

蝶々夫人は、一番プッチーニの作品の中では聴きやすいのかもしれません。しかし強烈すぎて少し飽きやすいのも事実ではないでしょうか。今回も久々に聴きました。実にいいオペラでありました。
(Decca 425 531-2 1989 輸入盤)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 岡山でベートーヴェンを聴く。 | トップ | スターンのベートーヴェン・... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

プッチーニ」カテゴリの最新記事