アーベントロートの「プラハ」

勤め先で蜂がたくさん出没し、刺される被害が出ました。それで。どこかに巣があるに違いなく捜したところ、四階の壁に50㎝四方の大きな巣がありました。加えて、建物の屋根の隙間に多くの蜂がうろうろしていることから、ここにも巣があるな、ということになりした。業者さんに相談したところ、巣の場所が悪く、対処できないということ。それで、蜂の嫌う木酢液を希釈したものを窓などに散布し、蚊取り線香を焚くなどの対症療法でなんとかしています。そんなおかげで、いろんなところに蚊取り線香の匂いのする職場になりました。

そんなこんなで、今回もモーツァルトであります。最近、モーツァルトを聴くことが多いんですね。うーん、やはりモーツァルトはいいですねえ。それで、今回は交響曲第38番二長調『プラハ』であります。この曲、私は大好き。以前にも言ったかもしれませんが、好きになった一番最初の曲が、ドヴォルザークの『新世界から』、その次がこの曲でありました。この曲を知り、いい曲だなあ、と思ったことから、クラシック音楽のよさがわかってきたような気がしました。

それで、今回の演奏は、ヘルマン・アーベントロート指揮ベルリン放響の演奏。1955年２月16日ライプチヒ放送局SRKホールでの録音です。アーベントロートは、1883年生まれなので、このとき71才ですか。翌1956年５月に脳卒中で逝去されますので、この演奏は亡くなる前年のものということになりますね。もう60年も前の演奏。といっても、フルトヴェングラーがなくなった翌年。残念ですが、私はまだ産まれておりません。

アーベントロートの演奏、今となっては、なかなかＣＤを買うこと困難になってしまいました。1990年代のDeutsche Schallplattenの廉価盤シリーズや、キングからの2008年の「アーベントロートの芸術」シリーズでけっこうたくさん出ていたのですが、それもなかなか入手できないのです。中古やさんなどで見つけては買ってきたので、まあそれなりに集まってきたのです。このモーツァルトは、交響曲第33.35.38番が収められている一枚です。アーベントロートのモーツァルト交響曲は、他にジュピターがあるくらいでしょうか。

さて、このプラハ、まず短い。演奏時間は23分と少し。例えばレヴァインは約37分。この長さは反復をしているからでしょうが、他にもベームＢＰＯでも25分ですから、このアーベントロートが如何に短いかであります。長い演奏に慣れてきたためか、このアーベントロート盤が短いなと思ってしまいます。そして、非常に端正な演奏なんです。規則正しく決められた通りに演奏をしているということ。寸分の狂いもないわけではないのですが、そんな印象を強く持つ。そして、それが美しい演奏なんですね。それに情熱あふれるところもいくつも聴くことができるのもいいです。

第１楽章、弦や管の非常に丁寧な演奏です。そしてたいそう気持ちも入っており、みなさんの曲に対する熱い想いが伝わってきます。そのため、この曲を初めて聴いたころの感動が蘇ってくるようでもありました。この曲の原点を思い出すようです。第２楽章。穏やかで流麗なアンダンテではなく、ゴツゴツした鋭角的な表情をもつあたりは、一昔前の演奏と思ってしまう。しかしそれはむしろ好感を持って受けとめることが出来るのです。それは、第３楽章でも同様で、ここでもスマートさや耳に心地よさを感じるわけではないのですが、直球勝負というような潔さが気品にまで昇華されているようで、実に気持ちのよいモーツァルトなのでありました。モノラルなんですが、放送用の音源でしょうか、まったく聴きにくさは感じないので、それもよかったです。

この三連休、台風18号に接近でなかなかの荒れ模様です。もうすぐ鹿児島に上陸とか。これから和歌山に行かねばならず、大変であります。
（Schallplatten TKCC-15056 1997年）