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「13管楽器のためのセレナード」のほうがいい

2014年02月23日 11時37分20秒 | モーツァルト
ソチのオリンピックも大詰めですねえ。職場では、毎日早起きして観戦してはる人もけっこういらっしゃるようです。いろんなドラマがありましたが、やはりフィギュアスケートでしたね。男子は仙台出身の羽生くんが見事な金。真央ちゃんはSPではまさかの大失敗の6位。しかし、翌日のフリーでは、前日の失敗がうそのような見事な滑り。どん底からの復活は、日本中を大きな感動につつみ込みました。これで引退なんですかねえ。捲土重来を期して欲しいですね。

ということで、今回は101回目のモーツァルト。セレナード第10番変ロ長調K.361です。これは「十三管楽器のためのセレナード」とか「グラン・パルティータ」と言われる曲です。前者はコントラファゴットを、後者はコントラバスを用いたときの呼称と一応使い分けていますが、どちらかと言えば、「グランパルティータ」と言われる方が多いですかね。ただ、コントラファゴットでもグランパルティータと呼ばれることもあるようです。

この曲は、やはり映画『アマデウス』でサリエリが初めてモーツァルトに会ったときに演奏されていたのが印象に残っていますね。第3楽章のアダージョが実に効果的に流れます。こんな美しい曲を作った男が、こんな下品だったとは、というところですよね。そして、第七楽章のフィナーレも演奏されます。まあ、実際はどうなのかわかりませんが、モーツァルトの音楽が美しさの限りであることが強調されるのであります。

この曲の演奏としては、まず上げられるのが、カール・ベーム指揮BPO管楽アンサンブルによるものです。1970年5月の録音。このLPが発売されたのは、私が、中学生のころで、ジャケットの写真もいたく気に入りまして、躊躇することなく買っちゃいました。家で早速このLPを聞くと、管楽器ばっかりの演奏に驚きました。というのも、この曲を「十三管弦楽器のためのセレナード」と勘違いしていたからなんです。いやはや、無知だったころの思い出ですが、今思えばこの頃は、交響曲を全曲録音し終わったベームが、セレナードなどを録音していた時期だったんですね。これの前には「ポストホルン」も録音されたりしていたのでした。

しかし、このベームの演奏、BPOの名手たちがその名人芸を展開しています。各管楽器が大変生き生きとして、表情が豊かであります。そんな楽器が13も集まっても非常にバランスが取れていて、それはベームによるところが大なんでしょう。そして、いろんな個性の異なる管楽器が、非常にうまく旋律の中に溶け込んでいるのですが、それでいて、それぞれの個性が際立っているということでもあります。ローター・コッホのオーボエ、ヘルベルト・シュテールのクラリネット、マンフレート・ブラウンのファゴット、それにゲルト・ザイフェルトのホルンといったBPOの名手たちは、非常にゆったりとして伸びやかに、それでい厳格に一縷の漏れもない演奏があります。この四つの楽器の演奏はほんとうに素晴らしいです。

第1楽章、ラルゴの序奏から始まって主部に入ると、クラリネットの主題が登場。これに対するオーボエ、背後のファゴットなど、実に活気溢れる競演となる。伸び伸びとしたところに愉悦感も極まります。第2楽章メヌエット、ふたつのトリオがクラリネットとオーボエを中心に展開。やはりこのふたつ、特にコッホのオーボエがいいですね。第3楽章アダージョ。ホルンの序奏からオーボエの主題、それにクラリネット以下が絡む。実に夢見るような旋律と展開。ここでもコッホの美音が素晴らしい。LPならここで一息ですが、CDはいっきに。第4楽章、明るいメヌエット。二番目のトリオが好きですよ。オーボエ、バセットホルン、ファゴットのユニゾンは見事です。第5楽章。こんなところに目立たないが美しいアダージョ。そして第6楽章変奏曲。各楽器のさまざまな展開に、この演奏のエッセンスがあります。何気なくの演奏ですが、じっくりと改めて聞くと、オーボエのみならず、その充実ぶりには脱帽です。第七楽章ロンド。軽快な主題とともに、ユニゾンな純な綺麗さで聞かせ、曲を閉める調子が聞こえる中で、最後までモーツァルトを着せてくれました。サリエリならずも脱帽であります。

私はこのLPのジャケットが好きで、綺麗でしょう? ただし、CDはこれではなく、かなりくたびれたLPがあるのみです。CDもこのジャケットのものが欲しいなあと思っております。また、グランパルティータという呼称はどうなんですかね。私は、13管楽器のほうがいいと思います。曲にあっていますよねえ。
(DG POCG-9260 1992年)

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