
■一吹きの野分が蔓薔薇、アンジュラの花を揺らして吹き過ぎた。
■ああ、よく咲いていてくれるね、とそのけなげさを愛でながら見上げるトタン屋根に落ち葉がまっていた。
かさこそと寂しい音をたてて屋根の斜面で小さな渦をまいている。




■霜月も半ば、庭の冬仕度はとどこうりなく済んだ。
あとはバラの冬の剪定と鉢の植え替えのみ。
■こころの冬にはまだ早すぎる。
■冬籠りして……夫とゆったたりと暖炉(はありません。日光霧降の山のレストランの暖炉があこがれです。暖炉が欲しい、と思っていたらそのはずみで、書いてしまいました)のまえで薔薇の話を、ブラッキーをからかいながら過ごすにはまだ早すぎる。
なにかものたりないとかんがえていた。
■それで思い出した。去年は霧降高原のつつじが原で野猿の群れにあった。
こわかったが、しみじみと冬の来る寂しさを感じとることができた。
エサをさがして落ち葉降りしきる斜面を移動していく猿の背にようしやなく日光颪が吹きつけていた。
■まだあれほどの寂寥感はこの秋にはあじわっていない。
■落葉の日光に夫を誘いでかけてみようかしら。
それとも芸術の秋、ピカソ展。
いや、神宮の公孫樹並木。
こころはまだ秋の感傷にひたっているらしい。
■寂しさをこころに溜めて、冬を過ごす。
冬の夜の語らいが春の息吹につながる。
ことしもいつもの冬のように話しの華をさかせながら過ごせたらいいなと思っている。




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