時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

ウクライナに降る鉄の雨

2015-02-13 00:25:11 | リビア・ウクライナ・南米・中東

一応の停戦協定が結ばれたにも関わらず、
東ウクライナのジェノサイドは終わることがなかった。


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ウクライナ東部の紛争では、
ほぼ毎日、何の罪もない人々が非業の死を遂げている。


タマーラとウラジーミルのボブリシェフ夫妻は、
自分達が経験した人生で最も恐ろしい日の事をロマン・コサレフRT記者に語った。



取材では、ドネツクに住むウラジーミル氏が、
携帯電話で撮影した映像が紹介されている。

携帯電話は、彼の家が砲撃され破壊された後、彼のもとに残った唯一の財産だ。

砲撃は、彼らの一家に恐ろしい悲劇をもたらした。

4歳の次男アルチョーム君は死亡、長男のミーシャ君7歳も重傷を負った
そしてウラジーミル氏の妻タマーラさんは、右足を失った。

彼女は「足のケガのせいで、自分はアルチョームを助けられなかった」と今も自分を責めている。 


ドネツク中がひどい砲撃を受け、救急車や病院は非常事態で、
ボブリシェフ一家のもとに救いの手をすぐに差し伸べる事が出来なかった。


砲撃が始まった時、ウラジーミル氏は、自分の家のそばにいた。
そして彼の目の前で、砲弾が家に命中した。
彼は、その時の模様を次のように語っている


―「入り口ですぐ息子を見つけました。
  彼の頭はひどいケガで血が流れ出、目は完全に見開かれていました。
  私は急いで彼を抱き上げ、上着で包んで地下室に連れて行きました。
  というのは、その瞬間も、まだ攻撃が続いていたからです。
  その後ようやく妻を見つけ、救い出しました。
  彼女は『下の息子にはまだ息がある』と叫んでいました。
  でも息子をやっと連れ出せた時には、もう息はありませんでした。」 


次男アルチョーム君の葬儀を、家族はすでに済ませた。
今夫妻は、長男のミーシャ君に障害が残らないよう、そればかりを願っている。

ミーシャ君は、砲弾の破片で身体や顔に大ケガを負った。
すでに2回手術をしたが、まだ痛みが残っている。

もう一度、複雑な手術が必要だが、ドネツクではそれができない。
続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/news/2015_02_07/282744977/
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このような状況下、より強制力のある停戦協定が模索されている。



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2月12日、モスクワ時間で12時、
ミンスクの独立宮殿においてウクライナ危機調整を図る
「ノルマンディー4者」(露独仏ウクライナ)による
記録的に長い、緊張に満ちた交渉が終結した。

プーチン大統領、メルケル独首相、オランド仏大統領、
ウクライナのポロシェンコ大統領が16時間にもわたり、
ウクライナ東部ドンバスの紛争解決の道を話し合った。

ミンスク交渉で承認された文書が提示する一連の歩みは、
戦闘行為の停止、緊張緩和、紛争調整を目指したものだ。

(続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/2015_02_12/282850668/)

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災害を止めるのは簡単だ。キエフ軍が撤退すれば良いだけである。
東ウクライナは西ウクライナを侵攻していないし、これからもしない。


彼らはただ自治権を得たいだけなのだ。独立したいだけなのだ。

今更だが建国記念日について

2015-02-12 23:49:36 | 浅学なる道(コラム)
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建国記念日の定義や性格は国それぞれ。

アメリカやインドのように独立を祝ったり、
革命を記念するフランスやキューバみたいに。
ドイツは東西が統一した日をあてています


▼きょう、2月11日は「建国記念の日」。

「建国をしのび、国を愛する心を養う」という趣旨で
1967年から「国民の祝日」として適用されてきました。


しかし、史実ではなく神話を基にしている日本の建国記念は、世界でもまれです


▼かつて、この日は「紀元節」と呼ばれました。
『日本書紀』の日本神話のなかで初代天皇とされる神武天皇。

その架空の人物が即位した日を
明治政府が算出し、国民が祝う日として定めたのです


▼神の子孫である神武天皇から日本の歴史が始まり、
 その子孫による統治は永遠に変わらない。

日本は神の国である
という天皇中心の歴史観を国民に植えつけるためでした。


偏狭な愛国心の押しつけは国の破滅を招きました

▼戦後、紀元節は廃止されましたが、
 自民党政府が「建国記念の日」として復活させます。

根拠のなさを指摘する歴史学者、
ウソを教えることはできないと反対する教育者。

歴史の過ちをくり返してはならないの声は上がりつづけます


▼安倍首相は今年も“建国神話の日”を前にメッセージを出しました。


「今日の我が国に至るまでの古(いにしえ)からの
 先人の努力に思いをはせ、さらなる国の発展を願う」と。

彼のいう先人が何を指しているのかは分かりませんが、
この国を建ててきたのは神話ではありません。無数の民の力です。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-02-11/2015021101_06_0.html
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神話に基づく虚構の建国。


だが、これら事実を知りつつなお馬鹿騒ぎする右翼がいる限り、
決して鼻で笑うわけにもいかない。

問題は、日本の近代化は古代日本の復活という非常に宗教的な理念と
融合しながら推し進められたということだ。


これはイランのような宗教国家ともまた違う性質を伴っている。

イスラム教の場合、人間はあくまで人間である。

だが、明治神道の場合、
国の最高指導者が神として絶対の存在となっている。


神は常に正しく、間違いなど犯さない。
この信仰のもと、大日本帝国は発展を遂げた。

逆を言えば、理屈が通じないわけで、
戦争に勝とうが負けようが、建国記念日が神話に基づいていようが、
そんなものはどうでも良く、受け入れる者は正しく、
そうでないものは間違いだという狂信的な価値観の下、極右勢力は動いている。


因果関係の逆転といおうか、理由があって天皇や大日本帝国を崇拝するのではなく、
天皇や帝国の崇拝が国民の義務だという強烈な思い込みが先にあり、
そのあとに、それを正当化させる理屈をでっちあげるのである。

中国、米国のテロ支援活動を批判する

2015-02-12 19:20:24 | 中国(反共批判)
欧米諸国は目障りな政権を転覆させるため、
現地の武装勢力や市民団体に転覆のノウハウをレクチャーしている。

近年で言うならば、ウクライナや香港の「民主化運動」がそれだ。

これに対して、仮想敵国に指定された国々は反撃の姿勢を見せているが、
このたび、中国が米国防総省のビルスベリ顧問に対して非難の言葉を浴びせたらしい。



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ピスルベリ氏は、
「中国は米国製兵器の台湾への供給に非常に敏感に反応している
 たとえそれが弾のひとつ、ジープのタイヤ1本であったとしても、
 常に中国側の凄まじいレトリックをあおることになる」 と語っている。

 ピルスベリ氏は先日、 中国人将軍ら35人と会談をもったばかり。

「この『イン・パイ』らは私に尋ねてきた。

『もし我々が我々の友人らであるハワイ独立運動の闘士らに
 兵器を供給したとすれば、ペンタゴンはどう反応するだろうか?』と。

 私は非常に驚いた。
 というのもこれまでハワイにそうした運動があると
 聞いたことがなかったからだ。だが調べてみると、 実際そうしたものは存在していた。」

続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/news/2015_02_12/282835548/

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オバマ自身がキエフのクーデターにアメリカが関与したことを認めている。

イラクと言い、キエフと言い、
アメリカが行った民主化運動は、現地に不幸しかばらまいていない。

そういう国の軍事侵攻に日本も参戦できるよう目下、奮闘しているのが今の政権。

早速、人質の死を利用して改憲をほのめかしているようだが、
人命より国家の威信を優先する人間を信じてよいものかどうか。

アラブの春の真相を隠す中東研究者

2015-02-11 23:29:57 | リビア・ウクライナ・南米・中東
「The Jihadist Plot-The Untold Story of Al-Qaeda and the Libyan Rebellion」
(聖戦主義者の筋書き―アルカイダとリビア反乱の知られざる物語)という本がある。

著者のジョン・ローゼンタールはEU政治・安全保障問題を専門とした政治アナリストだ。


本書の内容をザックリ説明すると、リビアの「民主主義革命」は、
実のところ、アルカイダとの関わりのある聖戦主義者の手によるもので、
同国の内戦をNATOが支援し、かつ空爆が行われたことが指摘されている。


今でもリビアの大都市ベンハジにはアルカイダの旗がはためく。
(カダフィ抹殺戦争の拠点となった都市)


アラブの春というものが、
究極的には西洋にとっての春であることが明確にわかるエピソードだ。



この「アラブの冬(リビアの冬)」とでも言うべき事件を
どう語るかによって、その人間の見識が容易に知れよう。



ところが、実際に各人の見解を見ていくと、
ジャーナリストや新聞記者のそれは当然として、
なんと中東研究者も同事件を好意的に受け止めているのだ。



もちろん、エジプトやリビアなどで平和とは程遠い混戦状態になった今、
さすがに手放しの絶賛ができなくなったからか、少しずつ意見をスライドさせてはいる。

だが、リビアに関しては、依然、NATOの空爆を肯定的に評価しており、
更には子供向けの本で、あの戦争は正しかったと宣伝している




イラク研究者の酒井啓子氏
『中東から世界が見える――イラク戦争から「アラブの春」へ 』
 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ)である。



世界は全く見えていないし、
知を航海してもいないじゃないか。



先のサウジアラビアのテロ支援を隠匿する件といい、
なぜに中東研究者はそろいもそろってこうも肝心の事実を知らせないのだろうか。


酒井氏の説明は、
あの事件が全く逆の視点(つまり空爆する欧米側の視点)で語られている。




ここで注目してほしいのは、
同書の出版元が日本を代表する左派系出版社、岩波書店であるということ。


左翼だのリベラルだの平和主義だの言ったところで、
この程度のレベルなのだということは、知らなければならないだろう。



現在、ISIS(イスラム国)の解説書が岩波書店から出版されている。
編者は……酒井啓子。



なお、酒井氏と同じく、岩波の論客であり、
恐らく日本で一番まともな意見を述べているだろう専門家に内藤正典氏がいる。


この方は保守派の専門家、池内恵氏と比べれば、はるかにマシだが、
イスラム国が台頭する以前はシリアへの空爆を主張していたりする。



彼の発言のおかしさは、次のサイトで詳解されている。
気が向いたら、読んでもらいたい。

内藤正典のシリア軍事介入論と「両論併記」化


中東といっても、非常に広い地域だ。しかも、複雑な政情を抱えている。
民族の数も100は優に超える。「中東」や「イスラム」といった言葉で
判を押せるほど、単純の構図ではないのだ。その辺を意識して、自主的に
彼らとは違った視点で書かれた情報を読み、対比させながら全体像を捉えようとする。

これが肝要なのだと思う。

イスラム国とISIS

2015-02-10 00:14:48 | リビア・ウクライナ・南米・中東
すでに「イスラム国」という呼称は、
イスラム諸国からイスラム教やムスリムの印象を悪くするため、
ISISという言葉を使用すべきだという批判がされていた。


日本では「イスラム国」と便宜的に言われているのだが、
この呼称をめぐって、ネット上では議論が起きているらしい。


本当にイスラム国をISILと呼ぶ必要があるのか!? 呼称問題を考える


リテラは、イスラム国=ムスリムというイメージを
防ぐ努力をしなければならないと断った上で、
単純に言葉を置き換えたら済む問題なのだろうか」と疑問を投げかけている。


別記事には、次のような意見を示している。


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そもそも、イスラム国登場前から、ムスリムは攻撃され、迫害されていた。

とくに9.11後のアメリカでは、
イスラム教徒に対する偏見はたびたび問題になってきた。


先日の、シャルリ襲撃事件後のフランスでも、
ムスリムたちは自分たちへの偏見が助長されることを恐れていた。


欧米だけではない。

日本でも、
イスラム諸国にまつわる事件が起きるたびに、
イスラム教徒が偏見の目にさらされてきた。



公安が国内のイスラム教徒の個人情報を流出させた事件は、2010年のことだ。

イスラム国が成立する何年もまえに、イスラム教徒というだけで、
テロリスト予備軍と見るような捜査方法が日本でもすでにまかりとおっていたのだ。



イスラム国がイスラム教を代表しているわけではない、のは当たり前だ。

しかし、問題の本質は
イスラム国と関係ないのにイスラム教徒が攻撃されることではない。


イスラム教であるという属性のみを理由に、
イスラム教徒が攻撃されることがおかしいのだ。



あるイスラム教徒が犯罪を犯したからといって、ほかのイスラム教徒を攻撃する。
あるイラン人が犯罪を犯した、ある韓国人、ある日本人が犯罪を犯したとして、
すべてのイラン人すべての韓国人、すべての日本人を、攻撃する。

それらはただの差別だ。


「一部の悪い人のせいで、関係ない人が差別される」とよくいうが、
 その差別は「一部の悪い人のせい」ではない。

一部の行為をその属性だからといってほかの人間に当てはめること自体が差別だ。

「一部の悪い人がいるから」「イスラム国という呼称があるから」と
あたかも差別に理由があるかのような言説にくみしない。


もともと自分たちがもっているイスラムに対する差別意識を、
「イスラム国」という呼称のせいだと転化し、隠蔽すべきでない。


http://lite-ra.com/2015/02/post-850.html
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実は、全体的には、結構おかしな記事だったりする。


例えば、「正式な国ではないのに国扱いして良いのか」という批判に対して

ひどいことをしているから「国」でないというわけではない。
「国」と認められているところだって、
とてつもなくひどいことをしているケースはいくらでもある。
イスラム国と同じように民衆を虐げているシリアのアサド政権だって、
北朝鮮だって「国」だ。


と答えている。

これなど、「なぜテロリストを支援するアメリカやサウジアラビアではなく、
連日、欧米&属国メディアによって悪役に仕立て上げられている
シリアや北朝鮮のように侵略を受ける寸前の弱国をテロと同一視するのか」

「そうやってシリアや北朝鮮をテロ国家扱いすることが、
 結果的にNATOの空爆を支持することになると気付かないのか」

「加えて、ISISが反シリア政府軍としてアメリカ、サウジが
 経済的軍事的支援をしていたことをしってなお、シリアを悪魔化するか」

といった感想が浮かんできてしまう。

とてつもない非道いことをしているのはNATOやEUだ。

イラクやリビア、そしてウクライナの惨状を知らないのか。
その辺を指摘できないあたりが、この雑誌の限界だと思えてならない。

とはいえ、問題の本質は、自分たちの中にある差別意識を、
事件を利用して正当化する行為にあるという指摘は、全くもってそのとおりだと思う。

サウジアラビアに沈黙してきた日本の中東研究者たち

2015-02-09 00:45:09 | リビア・ウクライナ・南米・中東
先日、アメリカによって、9.11同時多発テロにサウジアラビアが関与し、
テロ組織への金銭的な支援を行っていたことが暴露された。


これ自体は特に驚くべきことではない。
そもそも、サウジはテロ支援国家として有名である。

しかしながら、この件を考えるに、
やはり、日本の中東研究者がこれまで全くサウジアラビアのテロ支援について
言及してこなかった責任というものはあるだろうと思われる。


サウジは、ここ数カ月の間にも、国王への抗議運動を全面禁止する法律を制定したり、
治安部隊がシーア派居住区を銃撃し、多数の死者、負傷者を出させている国だ。


(参考ページ。
 http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/51219
 -%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%82%B8%E3%81%AE%E6%B2%BB%E5%AE
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 http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/51057
 -%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83
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 1%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E6%8A%97%E8%AD%B0%E8%A
 1%8C%E5%8B%95%E3%81%8C%E5%85%A8%E9%9D%A2%E7%9A%84%E3%81%AB%E7%A6%81%E6%AD%A2)


そればかりでなく、カタールと一緒に
シリアにテロリストを送り込んでいるテロ支援国家でもある。
http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/50975
 -%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83
 %93%E3%82%A2%E3%80%81%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E6%9C%80%E5%A
 4%A7%E3%81%AE%E3%83%86%E3%83%AD%E6%94%AF%E6%8F%B4%E5%9B%BD

 http://japanese.irib.ir/component/k2/item/48591
 -%E3%83%86%E3%83%AD%E7%B5%84%E7%B9%94%EF%BD%89%EF
 %BD%93%EF%BD%89%EF%BD%93%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%
 99%E3%82%8B%E9%80%A3%E5%90%88%E7%B5%90%E6%88%90#comment-1770


この件については、イランラジオに秀逸な記事があった。
一部を抜粋する。


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2014/01/06(月曜) 23:18
西側政府による過激派の悪用


013年、一部のイスラム諸国が流血の衝突や犯罪行為の舞台となってきました。
シリア、イラク、パキスタン、レバノン、アフガニスタンのような
国における過激主義や暴力は、頂点に達しています。

イスラム教の名の下に暴力に訴える人々や、
サウジアラビアの情報機関の傘下にある
タクフィーリー派と呼ばれる過激派組織は、
あらゆる犯罪行為に手を染めています。

~(中略)~


もしアメリカとイギリスの情報・政治的な支援と、
サウジアラビアやアメリカの同盟国の一部による資金面、軍事面での援助がなければ、
テロ組織アルカイダやその他の一部のテログループは結成されなかったでしょう。


現在シリアやイラクで活動を拡大し、
どのような犯罪行為も惜しまないワッハーブ派のテログループは、
現在、西側諸国やサウジアラビアから直接的な軍事・資金面での支援を受けています。



これらの政府は、こうしたテロ集団の全ての犯罪行為を黙認しているのです。


彼らは、民主主義や自由の要求の名の下に、
イスラム教徒と名のつく多くの暴力的な人物やタクフィーリー主義者を、
世界各地からシリアに集めています。


これらの人物は、自分たちが支配下に置いた地域で、
アフガニスタンのタリバン政権や、
それ以上に悪質な組織を連想させる行動をとっています。
彼らの狂信的な思想は、イスラム教と何の関係もありません。

彼らはシリアで子どもでさえも、
シーア派イスラム教徒の家庭から生まれたとして、殺害しているのです。

http://japanese.irib.ir/programs/%E4%
B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E6%83%85%E5%8B%
A2/item/42492-%E8%A5%BF%E5%81%B4%E6%94%
BF%E5%BA%9C%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E9
%81%8E%E6%BF%80%E6%B4%BE%E3%81%AE%E6%82%AA%E7%94%A8

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ここで問題。

上の記事で語られているワッハーブ派のテロ組織の正式名称は?




そう、イスラム国(ISIS)だ。


つまり、イランラジオは日本でイスラム国が騒がれる数か月前には
すでに、彼らの凶行を非難していたのである。



そして、この元凶、イスラム国のイデオロギーは
サウジのスンニ派の宗派(ワッハーブ派)が影響されており、
加えて、これら組織に経済支援を行っているのがサウジだとも指摘している。


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テロ組織ISIS、ヌスラ戦線、タリバン、アルカイダなどは、
過激なタクフィーリー派や狂信的なワッハーブ派から生まれたものであり、
アメリカやその同盟国は完全にこのことを知り尽くしています。


しかし、彼らはサウジアラビアを支配する
ワッハーブ派の思想に対抗しようとはしませんでした。


なぜなら、サウジアラビアは世界最大の石油の埋蔵国、生産国であり、
また西側にとっては武器の大市場であるとともに、
中東地域におけるアメリカの政策の実行役だからです。


パキスタンのペシャワールにおいて、このワッハーブ派は、
これまでタリバンやアルカイダにイデオロギーを与え、
資金的、軍事的な援助を行い、現在もこれを行なっています。


ワッハーブ派はまた、
現在もほとんどのイスラム諸国や西側諸国で活動しています。



http://japanese.irib.ir/component/k2/item/4859
1-%E3%83%86%E3%83%AD%E7%B5%84%E7%B9%94%EF%BD%89
%EF%BD%93%EF%BD%89%EF%BD%93%E3%81%AB%E5%AF%BE%E
3%81%99%E3%82%8B%E9%80%A3%E5%90%88%E7%B5%90%E6%88%90

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つまり、近年のムスリムのテロについて言及するにおいて、
ワッハーブ派への言及およびサウジアラビアのテロ支援は避けて通れないはずだ。



ところが、この国に対する批判というのは、
中東研究者はあまり(あるいは全く)していない。





http://www.newsweekjapan.jp/column/sakai/2014/06/post-846.php

http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2011072700624.html

http://iwj.co.jp/wj/open/archives/147377

http://cruel.org/other/koukenikeuchiisis.html

まず、酒井啓子氏は
「政治参加の術(すべ)のない怒れる若者たちは、
 国外に出て世界に刃(やいば)を突きつけるのだ。」と、
あたかもサウジ政権とテロが無関係であるかのようにコメントしている。


次に、内藤正典氏はサウジの支援を一部の豪族が個人的に行っているかのように語る。
だが、イランラジオは言うに及ばず、王族(というより政府)が関与しているのは
明白だ。今回の9.11テロへの関与はその好例である。


最後に、池内恵氏だが、この方に至っては
ワッハーブ派やタクフィーリー派の言及すらない。



いずれにせよ、現在、イスラム国についての書籍で
ベスト・セラー、大きな売り上げを上げている人たちが
こぞって、全く同じ態度を示してきたわけだ。


で、こういう人たちの語ることだから、
当然、これら書籍でもアメリカの批判はすれど、サウジの批判はない



要するに、非常に巧妙な手段で、歪んだ認識を我らに提供しているわけだ。
サウジは日本にとって石油輸入国の筆頭であり、中東最大の親米国でもある。


そのせいかどうかは知らないが、
意図的とも云えるほど、サウジに言及しない、しようとしない。


ここで彼らのこれまでの行為を翻ると、
イラク戦争直前までのサダム・フセインへの非難や
アラブの春の礼賛、そして今回のイスラム国へのそれと、
なぜかアメリカや日本に都合のよい意見ばかり唱えている


イラク戦争だけ、なぜか批判的に検討されているが、
それを除けば、日米の安全保障政策に支障をきたさない範囲内の発言に留めている。


こうしてみると、軍拡の道への影の支持者は中東研究者なんじゃないかとさえ思えてくる。

もっとも、こういうのは目立つ連中だけの話であり、
早尾貴紀氏をはじめとする中堅の研究者は、ここまで非道くはない。


だが、彼らの言葉は得てして文字にならないのだ。
新聞もテレビも、雑誌も単行本も、前者の言葉は掲載するが、後者に関しては……


そういうことである。口をパクパク動かすだけの自由。
それが民主主義国家の自由なのかもしれない。


私たちに出来ることは、海外のニュースサイトを中心として
日本ではない視点から書かれた情報を集め、分析することだけなのだろう。


2015年7月30日追記


岩波の『イスラーム国の脅威とイラク』では、
サウジやカタール等の周辺諸国の支援でイスラム国が台頭したという
記述があるらしいが、同時に同組織にアメリカは支援していないということが
書いているらしく、どの道、それはどうよという説明がされているらしい。

イラン最高指導者からの欧米のイスラム差別に対する抗議メッセージその3

2015-02-08 23:38:49 | リビア・ウクライナ・南米・中東
その1、その2の続き。


2回に分けて欧米のイスラモフィビアを非難するイラン元首の言葉を載せた。


ここからは、軽い感想だ。

ハー・メネイー師は、メディアやネット、街角での扇動に流されず、
まずコーランを読んでほしいと呼びかけている。


これは一見、どうということのないメッセージだが、
欧米、および日本や韓国などの属国の言論状況を見れば、かなり重いものだ。



というのは、少なくとも日本で言えば、
中東研究者が歪んだ中東・イスラム認識を促している事実が存在するからだ。


保守派の研究者で言えば、池内恵氏や宮田律氏がその典型だが、
左派にも酒井啓子氏や内藤正典氏のような無自覚の支援者がいる。



両者はともに「国を憎んで人を恨まず」というスタンスを持つ。

後者に関して言えば、アラブの春やシリアの内戦において、
反政府グループの動きを「民主化の表れ」として絶賛していた連中である。


アラブの春は、実際には、現地の反体制派を欧米諸国が訓練・経済支援し、
政権あるいは国家を転覆させるといったいつもの欧米による間接侵略作戦に過ぎなかった。


実際、アメリカやイギリスの支援を受けて樹立した新政権は、
あっという間に腐敗し、別の過激派の台頭、内戦の激化がどの地域にも見られる。

特にアルカイダが主導し、NATOの空爆によって、
文字通り壊滅したリビアでは、現在、混戦状態にある。


正直、シリアより状態は芳しくない印象を受ける。



日本の中東研究者に多く見られることだが、
「良いムスリムもいる」と言う一方で、
中東諸国へ対する誹謗中傷には同調する傾向がある。




ヨーロッパでのイスラモフォビアには断固反対の姿勢をとりつつも、
シリア内戦において、反政府軍を支持していた内藤正典氏はその典型だ。


「 私は、軍事介入による紛争解決には反対です。
 軍事介入をすれば、アサド政権側は、
 市民の中に戦闘員を紛れ込ませますから、
 市民の犠牲も増えます。

 しかし、ことここに至っては、
 強力な軍事介入によってアサド政権側の軍事拠点を
 無力化する以外に方策はありません。」



上の言葉はテレビで彼が述べた言葉だが、未だに強烈である。


イスラム国が日本でも有名になるのは、この1年後の話だが、
要するに、内藤氏はイスラム国を理屈の上では支持していたことになる。



彼のような研究者は、いくらでもいて、
ムスリムは善人だが、今のA国は独裁国家だというスタンスを取り、
結果的に欧米の空爆や工作に対してゴーサインを送っている。

(リビア空爆に対して強烈な非難をした人間がいない。
 少なくともテレビや雑誌に出た研究者の中では)


かつての東欧やソ連に対する専門家の姿勢を思い出す。

「冷戦終結をもって、資本主義の勝利と早合点すべきではない。
 だが、東欧やソ連は独裁国家で~(うんぬんかんぬん)」


このような欧米諸国の内政干渉を正当化させ、
国内の市民団体を弱体化させるような言説を
いわゆる左翼は盛んに広め、結果的に自分で自分の首を絞め、今に至る。


東欧崩壊、冷戦終結直後は、すさまじいスピードで
現地の資本が収奪され、国内で格差が拡大する時期だった。


一言でいえば、プチ植民地として欧米に搾取され、
その結果、政治的経済的混乱が起き、ユーゴスラビアにおいては
内戦が勃発、これまたNATOの介入によりジェノサイドが起きたのである。


本来なら、これらについて徹底的に非難し、
自身らと違う政治体系を持つ国家を民主化を口実に破壊する動きに抵抗するはず。

ところが、彼らがこの間にやったことは、
いかに東欧やソ連の共産主義国家がろくでもない国だったかを
しつっこく主張することだった。今では東欧やソ連の崩壊は
西側の工作、少なくとも支援に大きくよるものだったことが判明しているが、
彼らは故意か無自覚化は知らないが、これらの収奪行為を美化してしまったのである。

スターリン主義や全体主義、独裁といった言葉をもって。


さて、中東に対する学者の見解をざっと見ると、
まさにこのパターンに入っており、ムスリムは悪くないが、
イラク(あるいはリビア、エジプト、シリア)はとんでもない反人権の
独裁国家であり、そこでの反対運動は民主化運動の萌芽なのだと主張している。


これが大きな間違いなのはアラブの春の結果を見れば一目瞭然だし、
シリアでイスラム国が台頭したのをもってしても実証できるが、
あいも変わらず、独裁だの弾圧といった言葉をもって、
特定の国を悪魔化し、その崩壊を民主化の一歩とみなしている。


こういう状況で、まず自分で調べることが何よりも求められるだろう。

ポイントは、日本の視点で語られていない言説を読むこと。これに限る。

例えば、サウジアラビアがとてつもない「独裁」国家であることは、
向こうのニュースを読めば、簡単にわかることだが、
なぜか学者は、この件について取り上げようとしない。


これは日本の国益に反する言葉を言わないからである。
石油の輸入先第1位がサウジアラビアだからである。


学者というと、世間から外れた仙人のような暮らしをしているように
思われるかもしれないが、権威のある人ほど、案外、俗っぽい。


悪い意味で空気が読める。

そうだからこそ、まずは1次の資料、言うなれば、
アメリカと敵対する国からのニュースに目を通し、
相対的に事件を眺めていくことが必要なのだ。私はそう思う。

イラン最高指導者からの欧米のイスラム差別に対する抗議メッセージその2

2015-02-06 23:22:40 | リビア・ウクライナ・南米・中東
その1からの続き。


(2)

あなた方は、"他者"に対する根拠のない恐怖や嫌悪の拡大、侮辱は、
圧制的な人々の利益のためのものであることをよく知っている。


私はあなた方に、自分自身にこう尋ねてほしい。


なぜ、恐怖や嫌悪を広めるという古い政策が、
前例のない激しさで、イスラムとイスラム教徒を標的にしているのか?


なぜ、世界の権力の構造は、
イスラムの思想を脇に追いやり、覆い隠されたままとなるのを望んでいるのか? 


イスラムのどのような価値観や内容が、大国の発展を妨げ、
イスラムのイメージを壊すことで、誰の利益がまもられるのだろうか?



(3)

私の第一の要求とは、
イスラムのイメージを壊すための動きの陰にある動機を調べてみて欲しいということだ。


第二の要求は、先入観を植え付け、
人々を迷わせるための大量のプロパガンダや世論操作に対し、
この宗教を直接的な情報によって知るよう努めてほしい。


正しい理論から言えば、あなた方は、
恐怖を植え付けられ、引き離されたものの本質について理解する必要がある。


あなた方に、私や他の人のイスラムに対する理解を受け入れて欲しいとは言わない。


私があなた方に望むのは、今日の世界において、
効果的な真理や活力であるイスラムが、先入観を伴って
感情的にあなた方に提示されるのを許してはならないということだ。


そして、彼らが偽善によって、雇い入れたテロリストを
イスラムの代表者として紹介するのを許すべきではない。


(4)
イスラムに関する情報を、元来の資料から手に入れてほしい。
イスラムに関する情報を、コーランや偉大なる預言者の人生から入手してほしい。

あなた方には、直接、イスラム教徒のコーランを読み上げてほしい。


あなた方はこれまで、イスラムの預言者の教えや
その人道的な原則について調べたことがあるだろうか?

イスラムの預言者を、メディア以外の資料から理解したことがあるだろうか?


これまで、イスラムの価値観が、世界に最大の思想的、科学的な文明を作り出し、
幾世紀もの間、最大の学者や思想家を育むことができたのはなぜかと、
自身に問うたことはあるだろうか?



私はあなた方に求める。根拠のない悪いイメージ作りが、
あなた方と真実の間に感情的な溝を作り、
あなた方から中立的な判断を下す可能性を奪ってしまうのを許さないでほしい。


今日、メディアの社会は地理的な国境を知らない。

それでもなお、彼らがあなた方を、
偽りのイメージの線引きによって囲むことを許してはならない。


(5)

誰も一人では、この空洞を埋めることはできないが、
あなた方のそれぞれが、自分と自分の周囲の人に明らかにするために
思想と公正の架け橋となることはできる。

このあなた方若者とイスラムの間の問題は望んだものではない。

しかし、あなた方の好奇心に溢れた頭に、新たな疑問を作り出すことができる。
それらの疑問への答えを見つけるための努力は、
あなた方にとって、新たな真理を突き止めるための適切な機会を作るだろう。


そのため、イスラムについての
純粋で正しい理解に至るための機会を失わないようにしてほしい。

そうすれば、あなた方の真理へと向かう責任感により、
未来の人々が、イスラムと西側の間の交流の歴史を、
より明らかな良心と、より小さな苦しみによって見つめることができるようになるだろう。

セイエド・アリー・ハーメネイー
2015年1月21日

(その3へ続く)

イラン最高指導者からの欧米のイスラム差別に対する抗議メッセージその1

2015-02-06 22:54:22 | リビア・ウクライナ・南米・中東
イランのトップは誰かと聞かれて、あなたは答えられるだろうか?


アリー・ハーメネイー師である。
ホメイニー師は知っていても、彼は知らない人は多いと思う。


さて、このハーメネイー師が欧米の若者にむけて送ったメッセージが
実は、向こう側ではそれなりに話題になっている。


このメッセージは3日間で5000万以上の人間に閲覧され、
各ムスリム団体に好評価を受けたものだったのだが、なぜか日本では紹介されない

ベタ記事にすらなっていない。


このメッセージはシャルリーエブド襲撃事件やISISなどのテロリズムを背景に
欧米列強で燃焼しつつあるイスラモフォビア(イスラム差別)を意識して、
そのようなイスラムを危険視する言説を非難するものである。



テロ事件の際、「すべてのイスラム教がこーいう連中ではない」とか言いながら、
欧米のヘイトスピーチを非難する声明を伝えないのが、実に日本のメディアらしい。


というわけで、本サイトで本文をいくつかに分けて紹介したいと思う。

http://japanese.irib.ir/news/leader/item/51540-
%E6%AC%A7%E7%B1%B3%E3%81%AE%E8%8B%A5%E8%80%85%E3
%81%AB%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%9F%E6%9C%80%E9%A
B%98%E6%8C%87%E5%B0%8E%E8%80%85%E3%81%AE%E3%83%
A1%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%82%B8-%E3%83%BC
-%E5%85%A8%E5%86%85%E5%AE%B9


本文は上のサイトにある。
なお、読みやすくするため、適宜、番号をふった。

--------------------------------------------------------------
慈悲深く、慈愛あまねき、アッラーの御名において


(序文)欧米諸国の若者たちへ


フランスでの最近の事件、そして西側の他の国々での同様の出来事を受け、
私は直接、これらの出来事に関して諸君に語りかけることにした。


私が語りかける相手は、あなた方若者たちである。
それは私が、あなた方の両親を気にかけていないためではない。

そうではなく、私はあなた方の国家や国民の未来があなた方の手の中にあり、
あなた方若者の心の中には、
真理を探りたいという感情が高まっているのを知っているためである。


私が語りかける相手は、政治家たちでもない。
なぜなら、彼らは意図的に、政治と真理の道を分断したと信じているからだ。


あなた方とイスラムについて話したいと思う。
特に、あなた方提示されているイスラムの姿について。



(1)

この20年、特にソ連が崩壊した後、
この偉大なる宗教を恐ろしい敵に見せようとするために
多大な努力が行われた。

恐怖や嫌悪を植えつけ、それを悪用する動きは、
残念ながら、西側の政治史において長い歴史を有している。



ここで、私は西側諸国がこれまで植えつけてきた
様々な恐怖症を取り上げるつもりはない。


現代史の重要な出来事を一通り見れば、
西側政府が、他の文化や国民に対して、
不誠実で偽善的な態度を取ってきたという事実が分かるだろう。

それらは新たな歴史の記述では削除されている。

アメリカとヨーロッパの歴史は、
奴隷制を恥じ、植民地主義時代を不名誉とし、
非キリスト教徒や有色人種への弾圧に苦しんでいる。

あなた方の歴史学者は、
カトリックとプロテスタントの名のもとに行われた流血、
あるいは第一次、第二次世界大戦で
国家や民族の名のもとに行われた殺し合いを深く恥じている。

このような態度は賞賛に値する。

これらのリストを挙げることで、歴史を振り返るつもりはない。
ただ私はあなた方に、有識者にこう尋ねてほしいと思う。

なぜ、西側の一般の人々の良心は、
何十年も経った後に目覚めたのだろうか?

なぜ、遠い過去の良心に対する見直しは行われるのに、
現在の問題については行われないのか?

なぜ、イスラムの文化や考え方への対応といった
重要な問題について、一般の人々が知識を習得するのを
妨げようとする努力が行われるのか?


(その2へ続く)

ジハードとは何か

2015-02-06 22:26:34 | リビア・ウクライナ・南米・中東
テレビや新聞、その他諸々のメディアの解説を読むたびに、
ジハードについての解説が足りない印象を受ける。


ジハードは、日本では「聖戦」と訳されるが、これは少し意味が違う。
(私はこの手の直訳主義の翻訳は非常に問題があると考えている)


実のところ、ムスリムにとってジハードは良い意味を持つ言葉だ。



ジハードは、その第一義として、自分との戦い、奮闘努力を意味する。

次に、「改革」を意味するジハードがあり、
例えば、識字教育のジハード、衛生のジハード、汚職追放のジハードという風に用いる。


西洋にも、クルセイド(十字軍)という言葉を、改革運動を意味するために使うが、
それと同じもので、特に宗教的な意味はない

仮に宗教的な意味を含めるさいには、
「イスラームの」や「聖なる」という形容詞がつく。


では、なぜこの言葉が何やら物騒な言葉として使われるようになったかというと、
イスラム「原理主義者」とイスラム差別主義者(イスラモフォビア)が
お互いに、この言葉をもって自身の主張を正当化させてきたからである。


(原理主義者というのも問題のある訳語で、
 実際にはイスラム直訳主義あるいは単純解釈主義とでも訳すべきものだ。)



どちらも、コーランに戦争を賛美する部分があることをもって、
テロリズムを美化あるいは批判している。



では、コーランにはどのように書かれているのか?


例えば、次のような一文がある。


「汝らに戦いを挑む者があれば、アッラーの道において堂々とこれを迎え撃つがよい。

だが、こちらから不義をしかけてはならぬぞ。

アッラーは不義なす者どもをお好きにならぬ。

そのような者と出くわしたらどこでも戦え。

そして彼らが汝らを追い出した場所から、こちらで向こうを追い出してしまえ。」


読みようによっては、アメリカやイギリス、フランスのような
侵略国と戦えとも解釈できるが、重要なのは赤文字の部分で、
この文言で言いたいことは、自衛の正義であり、
自分たちから攻撃をしかけることではない。


人質などは、もってのほかなのである。



ムスリムの戦争観を表すのにもっとおあつらえ向きの言葉もある。

「あなたに歯向かって攻撃してくる者とは、神の道において戦うがよい。
だが、公正さと権利というラインを踏み越えてはならない。
誠に、神は侵略者をお好みにならない」



他にも、初代シーア派の指導者イマーム・アリーは、自らの軍勢に対しこう述べた。


「神の助けにより、
 敵が敗北して戦場から敗走したならば、
 逃げる者や逃げ遅れた者を殺したりしてはならない。
 命乞いする女性たちが、
 たとえあなた方の指揮官たちにまで
 罵詈雑言を浴びせても、彼女達を苦しめてはならない」



2代目のオマルは、聖地ベイトルモガッダスを征服した際、
イマーム・アリーに相談した上で用意してあった次の書簡を読み上げた。


「この書簡は、ベイトルモガッダスの人々に対し、
 イスラム政権の支配者オマルが出したものである。

全てのキリスト教会や、全ての人々の生命と財産にかけて次のことを約束する。
キリスト教会を占領、破壊したり、そこから何かを持ち去ることは許されない。

キリスト教徒は、宗教の問題において完全に自由である」



要するに、住宅への放火や民間人の殺害は、
イスラム教の教えに反しており、世界各地のイスラム教の権威者は、
原理主義者の言い分は、まったく的外れだと考えているし表明もしている。



自爆テロにしても、イスラム教では自殺を禁じているので、これもまた教えに反する。
一部知ったかぶりのジャーナリストや学者は「場合によっては許される」と説明するが、
その言い分は原理主義者のそれであり、イスラム教のものではない。




最後に、なぜ原理主義者や過激テロが生まれたかというのを考えると、
これは何といっても、歴史的に欧米列強が中東やアジア、アフリカを
侵略し、その際に近代式の戦争を教えたからに他ならない。


住宅への放火、民間人の殺害は英米仏侵略トリオの得意技だ。

特にアメリカは現地のゲリラに拷問などの非人道的な手段を伝授し、
自分たちの代わりに転覆させたい政府と戦わせてきた歴史がある。

アルカイダやイスラム国はその典型とみなされている。


加えて、中東やアフリカというとイスラム一色というイメージがあるが、
実のところ、かの地では部族主義というものが未だに色濃く存在する。

暴力を受け入れる素地はある程度あったということだ。


まぁ、どちらにせよ、自爆テロなどはアメリカがムスリムの兵士を
養成しだした1983年以降から見られる現象であり、
列強の影響が全くないというのは、完全に誤りと言えるだろう。