超個人的映画祭「閑古堂の年またぎ映画祭」、3つ目の特集は「コング&大怪獣バトル映画特集」です。『ゴジラvsコング』をメインに、歴代のキングコング映画などの大怪獣映画4本をまとめてみました。
年またぎ映画祭9本め『キングコングの逆襲』(1967年 日本・アメリカ)
年またぎ映画祭10本め『ゴジラvsコング』(2021年 アメリカ)
年またぎ映画祭11本め『パシフィック・リム』(2013年 アメリカ)
年またぎ映画祭8本目『キング・コング』(1933年 アメリカ)
監督・製作=メリアン・C・クーパー、アーネスト・B・シュードサック 製作総指揮=デイヴィッド・O・セルズニック 脚本=ジェームズ・アシュモア・クリールマン、ルース・ローズ 撮影=エディ・リンデンほか 音楽=マックス・スタイナー 特撮=ウィリス・H・オブライエン
Blu-ray発売元=アイ・ヴィー・シー
南海の孤島・髑髏島へ上陸した撮影隊は、太古のままに動き回る恐竜たちと、原住民に恐れられる巨大な猿、キング・コングを目にする。コングは撮影隊に同行した新人女優・アンを攫って逃げるものの、アンは救出されコングも捕らえられる。ニューヨークに連れてこられたコングは見世物にされるが、カメラのフラッシュを浴びたことで怒り狂い逃走。ホテルに逃げ込んだアンを見つけると再び彼女を攫い、エンパイア・ステート・ビルの頂上へ・・・。
その後に続くすべての特撮怪獣映画の原点となり、今もなお多くの人から愛されている名作であります。実は今回、Blu-rayで初めてキチンと視聴したのですが(そんなんでよく、いままで特撮怪獣映画についてしたり顔でアレコレ言ってたもんだな、という非難や嘲笑は甘んじて受けます・・・)、想像以上にしっかりとした作りでとても面白く観られました。これはやはり観ておいてよかった、いやもっと早く観ておくべきだった・・・と心底思います。
人形を一コマずつ動かして撮るストップモーション・アニメで作られていることを忘れそうなくらい、コングのキャラクター性が見事に表現されていて、コングが複葉機の銃撃を受ける有名なクライマックスには、胸をわしづかみにされるものがありました(胸に銃弾を受けた時の、あのなんとも切なそうな仕草と表情!)。前半の髑髏島における、ティラノサウルスや大蛇などの巨大生物がらみのシーンも良くできておりました。
年またぎ映画祭9本め『キングコングの逆襲』(1967年 日本・アメリカ)
監督=本多猪四郎 特技監督=円谷英二 製作=田中友幸 脚本=馬淵薫 撮影=小泉一 音楽=伊福部昭
出演=宝田明、浜美枝、ローズ・リーズン、リンダ・ミラー、天本英世
DVD発売元=東宝
強力な核兵器製造に必要な物質「エレメントX」を手に入れようとする、悪の天才科学者ドクター・フーは、キングコングを模したロボット「メカニコング」を使役して採掘しようとするが、強い磁気のためにうまくいかない。そこで、南海の孤島モンド島に住む本物のコングを捕獲して、採掘のために操ろうと画策する・・・。
本多猪四郎監督と円谷英二特技監督コンビによる、『キングコング対ゴジラ』(1962年)に続く東宝版コング映画第2弾です。コング型のロボットなどの独自の要素はあるものの、スマートな感じの体型だった『キンゴジ』のコングをオリジナルに近い体型にしたり、ティラノサウルス型の恐竜「ゴロザウルス」(余談ながら、東宝怪獣の中でもわたしのお気に入りの一体であります)や大蛇との戦いを織り込んだりするなど、原点の『キング・コング』を思わせる要素が多々あって、そのあたりに『キング・コング』のフィルムをコマ単位で分析・研究したという円谷英二特技監督のこだわりが感じられました。実際に人が登れるように鉄骨を組んで作られたという、クライマックスの舞台である東京タワーのミニチュアセットも圧巻です。
同じ時期に製作されていたゴジラシリーズが子ども向けを志向していたのに対して、本作は人間側のドラマ部分にも力が入った大人向けともいえる内容。登場人物も、怪優・天本英世さん演じるドクター・フーや、浜美枝さん演じる某国の諜報員マダム・ピラニアといった、悪の側の人物のほうが、ある意味で魅力的だったりいたします。
年またぎ映画祭10本め『ゴジラvsコング』(2021年 アメリカ)
監督=アダム・ウィンガード 製作=トーマス・タルほか 製作総指揮=ジェイ・アッシェンフルターほか 脚本=エリック・ピアソン、マックス・ボレンスタイン 撮影=ベン・セレシン 音楽=トム・ホーケンバーグ
出演=アレクサンダー・スカルスガルド、ミリー・ボビー・ブラウン、レベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、小栗旬、エイザ・ゴンザレス、カイル・チャンドラー
Blu-ray発売元=東宝
これまでムートーやキングギドラの猛威から、人類の危機を救ったかに見えたゴジラが、突如として人類に対して牙を剥きはじめる。ゴジラに暴威に対抗すべく、人類は髑髏島からコングを連れ出す。その輸送中、海の中からゴジラが姿を現し、ついにコングとゴジラが一戦を交えることに・・・。
『GODZILLA/ゴジラ』(2014年)『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年)『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)に続く「モンスターバース」シリーズの第4弾で、ついにゴジラとコングの両雄が直接対決するという内容。いやー、これはなかなか面白かった!本作は大みそかに観たのですが、この映画のおかげで一年のいろんな憂さを晴らすことができました。
とはいえ正直なところ、人間側のドラマ部分はいささか混乱気味のようにも思えましたが、怪獣対決イベント映画としては大いに楽しめました。香港でのクライマックスで、公開まで存在が伏せられていたアイツが登場してからの展開にはむちゃくちゃ燃えましたねえ。「地球空洞説」に基づいた地球内部の描写(地上にそっくりの景観ながらも異様な生物が闊歩していて、重力が反転している)も面白いものがありました。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)などの音楽を手がけたトム・ホーケンバーグ(ジャンキーXL)のスコアも素晴らしかったなあ。
人形によるストップモーション・アニメで動かされた『キング・コング』、日本ならではのぬいぐるみにより表現された『キングコングの逆襲』、そしてCGキャラクターによる『ゴジラvsコング』と、時代によって異なる手法で表現されたコングを見ていくというのも、なかなか楽しい経験でありました。
年またぎ映画祭11本め『パシフィック・リム』(2013年 アメリカ)
監督=ギレルモ・デル・トロ 製作=トーマス・タル、ジョン・ジャシュニ、ギレルモ・デル・トロ、メアリー・ペアレント 製作総指揮=カラム・グリーン 脚本=トラヴィス・ビーチャム、ギレルモ・デル・トロ 撮影=ギレルモ・ナヴァロ 音楽=ラミン・ジャヴァディ
出演=チャーリー・ハナム、イドリス・エルバ、菊地凛子、チャーリー・デイ、ロン・パールマン
Blu-ray発売元=ワーナー・ブラザース ホーム エンターテイメント
太平洋の海溝から出現する巨大生物〝KAIJU〟の猛威に対抗するため、環太平洋の諸国は結束して巨大ロボット〝イェーガー〟を建造して成果を上げるものの、さらに強力なKAIJUが頻繁に出現するようになったことで防衛が追いつかなくなり、イェーガー計画は中止されることに。しかし、最後の望みであった〝命の壁〟計画も無効となり、存亡の危機に瀕した人類の希望は再びイェーガーに託された・・・。
日本の怪獣ものやアニメを見て育ったというギレルモ・デル・トロ監督が、それらのジャンルへの愛を全開にした快作です。製作したのは、『ゴジラvsコング』を含む「モンスターバース」シリーズも製作しているレジェンダリー・ピクチャーズ。デル・トロ監督の細部へのこだわり、とりわけ怪獣たちの重量感と、リアルな機械としての動きを追求したイェーガーの描写が素晴らしく、それらのこだわりが生む迫真性が、作品の説得力を増しているように思います。
エンドロールの最後には、2人の〝モンスター・マスター〟へ捧げた献辞が記されています。『キング・コング』の特撮を手がけたウィリス・H・オブライエンのアシスタントをつとめ、『原始怪獣現わる』(1954年)などで優れたストップモーション・アニメによる特撮映像を作り出したレイ・ハリーハウゼンと、『ゴジラ』(1954年)や『キングコングの逆襲』などなど、数多くの東宝特撮怪獣映画の本編監督をつとめた本多猪四郎の2人であります。
ストップモーション・アニメからぬいぐるみとミニチュアによる特撮、そしてCGへと技法は変わっても、根本となるものは脈々と受け継がれているんだなあ・・・ということが2人への献辞から感じられてきて、胸の熱くなる思いがしてきます。
(「その4」につづく)