本文![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/c7/5ef6fa5e54e711557e6c4123312e8880.jpg)
『きのこ ふわり胞子の舞』
埴沙萠=写真・文、ポプラ社(ふしぎいっぱい写真絵本)、2011年
一見目立たない植物たちが見せる意外な動きや、生命の輝きを取り続けている植物写真家、埴沙萠(はにしゃぼう)さん。先月上旬、その埴さんを取り上げたNHKスペシャル『足元の小宇宙 ~生命を見つめる 植物写真家~』が放送され、わたくしも面白く観ました(7月7日に当ブログにて記事をアップしております)。
その中で特に目を奪われたのは、きのこの傘の部分から胞子が吹き上がる様子を捉えた映像でありました。
埴さんが「胞子の舞」と呼ぶ、吹き上がる胞子の写真を多数織り込みながら、きのこの不思議に迫っていく写真絵本が、本書『きのこ ふわり胞子の舞』であります。
まるでオーロラのように流れていくシイタケの胞子や、撮影のために当てられたライトの光を浴びて赤や緑に輝き、天の川のようなきらめきを見せる森の小さなきのこの胞子•••。
動く映像ではない静止した写真ではありますが、舞い上がっていく胞子の美しさはとても幻想的で、一枚一枚の写真にあらためて目を奪われました。
本書に登場するきのこたちの、多彩で個性的な生態もまことに面白いものがありました。
傘が開いたあとずっと胞子を出し続け、一夜で傘が溶けてなくなってしまうというヒトヨタケ。胞子を撒くために生まれる存在とはいえ、そこはかとない儚さを感じさせるものがありました。
晴れた日には固く丸まり、その名のように栗を思わせる外見のツチグリ。その中には胞子がたっぷり詰まった袋があり、雨に濡れるとそれが膨らみます。そして、雨のしずくが袋の中心に命中すると、火山が噴火するように胞子を吹き出します。やはり晴れた日には、きのことは思えない外見で埋もれるように土の中に生えるクチベニタケも、雨で膨らんで赤い口を見せ(これが名前の由来か)、爆発的に胞子を吹き出すのです。いやはや、実に面白いのであります。
おしまいのほうでは、きのこの菌糸が枯れ木や枯葉を食べて成長することで、「もりの そうじやさん」としての働きをしていることを伝えます。小さくて、一見地味で目立たない存在のきのこたちも、実は自然の中で大きな働きをしていることを、読むものに気づかせてくれるのです。
きのこの不思議さと面白さ、そして大きな働きを、子どもはもちろんオトナにもしっかりと教えてくれる、楽しく素敵な写真絵本であります。
【関連オススメ本】
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/d2/9c33969513b9ccdf81bd0a18711d7525.jpg)
『少女系きのこ図鑑』 玉木えみ著、飯沢耕太郎監修、DU BOOKS発行、ディスクユニオン発売、2012年
子どもの頃からきのこが大好きという「きのこ女子」である玉木えみさんが、107種のきのこ・菌類と、それらからインスパイアされた女の子を組み合わせて描いたイラストで編まれた、ちょっと面白い趣向のきのこ図鑑です。
キャラクターや衣装などで、きのこの特徴をうまく活かした女の子たちの可愛らしさもさることながら、きのこ自体のイラストもしっかりしていていい感じです。また、大きさや発生場所、食用の可否や毒性の有無といったデータ部分もきちんとしていて勉強にもなります。
著者の玉木さんと監修の飯沢耕太郎さんが再び組んだ『きのこ文学ワンダーランド』も、先月末に同じ版元から刊行されています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/c7/5ef6fa5e54e711557e6c4123312e8880.jpg)
『きのこ ふわり胞子の舞』
埴沙萠=写真・文、ポプラ社(ふしぎいっぱい写真絵本)、2011年
一見目立たない植物たちが見せる意外な動きや、生命の輝きを取り続けている植物写真家、埴沙萠(はにしゃぼう)さん。先月上旬、その埴さんを取り上げたNHKスペシャル『足元の小宇宙 ~生命を見つめる 植物写真家~』が放送され、わたくしも面白く観ました(7月7日に当ブログにて記事をアップしております)。
その中で特に目を奪われたのは、きのこの傘の部分から胞子が吹き上がる様子を捉えた映像でありました。
埴さんが「胞子の舞」と呼ぶ、吹き上がる胞子の写真を多数織り込みながら、きのこの不思議に迫っていく写真絵本が、本書『きのこ ふわり胞子の舞』であります。
まるでオーロラのように流れていくシイタケの胞子や、撮影のために当てられたライトの光を浴びて赤や緑に輝き、天の川のようなきらめきを見せる森の小さなきのこの胞子•••。
動く映像ではない静止した写真ではありますが、舞い上がっていく胞子の美しさはとても幻想的で、一枚一枚の写真にあらためて目を奪われました。
本書に登場するきのこたちの、多彩で個性的な生態もまことに面白いものがありました。
傘が開いたあとずっと胞子を出し続け、一夜で傘が溶けてなくなってしまうというヒトヨタケ。胞子を撒くために生まれる存在とはいえ、そこはかとない儚さを感じさせるものがありました。
晴れた日には固く丸まり、その名のように栗を思わせる外見のツチグリ。その中には胞子がたっぷり詰まった袋があり、雨に濡れるとそれが膨らみます。そして、雨のしずくが袋の中心に命中すると、火山が噴火するように胞子を吹き出します。やはり晴れた日には、きのことは思えない外見で埋もれるように土の中に生えるクチベニタケも、雨で膨らんで赤い口を見せ(これが名前の由来か)、爆発的に胞子を吹き出すのです。いやはや、実に面白いのであります。
おしまいのほうでは、きのこの菌糸が枯れ木や枯葉を食べて成長することで、「もりの そうじやさん」としての働きをしていることを伝えます。小さくて、一見地味で目立たない存在のきのこたちも、実は自然の中で大きな働きをしていることを、読むものに気づかせてくれるのです。
きのこの不思議さと面白さ、そして大きな働きを、子どもはもちろんオトナにもしっかりと教えてくれる、楽しく素敵な写真絵本であります。
【関連オススメ本】
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/d2/9c33969513b9ccdf81bd0a18711d7525.jpg)
『少女系きのこ図鑑』 玉木えみ著、飯沢耕太郎監修、DU BOOKS発行、ディスクユニオン発売、2012年
子どもの頃からきのこが大好きという「きのこ女子」である玉木えみさんが、107種のきのこ・菌類と、それらからインスパイアされた女の子を組み合わせて描いたイラストで編まれた、ちょっと面白い趣向のきのこ図鑑です。
キャラクターや衣装などで、きのこの特徴をうまく活かした女の子たちの可愛らしさもさることながら、きのこ自体のイラストもしっかりしていていい感じです。また、大きさや発生場所、食用の可否や毒性の有無といったデータ部分もきちんとしていて勉強にもなります。
著者の玉木さんと監修の飯沢耕太郎さんが再び組んだ『きのこ文学ワンダーランド』も、先月末に同じ版元から刊行されています。
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