3年ぶりの熊本旅行も、とうとう最終日となりました。
10月10日(月曜日)の朝。宿泊していた熊本市中心街のホテルをチェックアウトしたわたしは市電に乗り込み、水前寺成趣園(水前寺公園)へ向かいました。初代熊本藩主・細川忠利から三代にわたって作庭された回遊式の庭園で、国の名勝・史跡にも指定されている名園であります。
時刻は午前8時少し前。まだクルマも少ない道路の上を、市電でゆるゆると移動すること20分ほど、水前寺成趣園に到着いたしました。
到着したものの、まだ開園時間の前ということで入り口は閉ざされたまま。ちょいと来るのが早かったようで、そのあたりをぶらぶらしながら開園を待ちました。入り口の前に並ぶ土産物店や飲食店も多くは開店前で、一部のお店が開店の準備を始めておりました。
そうこうするうち、開園時間の8時半となりました。拝観料を払って中に入り、しばし朝の散策を楽しみました。
富士山を模して造られた築山をはじめとした、さまざまな趣向を凝らした庭園は、散策の醍醐味をたっぷりと味わうことができます。広々とした池にたたえられた阿蘇の伏流水はどこまでも澄んでいて、水の都熊本の豊かさと、そこから生まれてくる情緒をつくづく実感することができます。
園内にある出水(いずみ)神社には、歴代の藩主たちと二代目忠興の妻、細川ガラシャが祭神として祀られています。
境内には、やはり阿蘇の伏流水である「神水 長寿の水」が湧き出しています。手ですくって飲むと冷たくて実に美味しく、なんだか長生きができそうな気がしてまいります。
境内には、やはり阿蘇の伏流水である「神水 長寿の水」が湧き出しています。手ですくって飲むと冷たくて実に美味しく、なんだか長生きができそうな気がしてまいります。
そばに立つ説明板を見ると、「水飲会の方々は毎朝五合以上の水を飲んで健康法としています」との記述が。うーむ、やはり手ですくって飲む程度ではあまり効果はないんだろうなあ。オレも「水飲会」に入って毎朝飲んでみたいもんだのう。
しばしの散策のあと、やはり園内にある「古今伝授の間」で一休み。古今和歌集の解釈などの学説を伝授するために建てられたもので、大正元(1912)年に京都御所からこちらへ移築されました。
室内では、お抹茶(もしくはコーヒー)とお菓子を味わいながら、庭園の眺めを楽しむことができます。2種類あるお菓子から選んだのは「加勢以多」(かせいた)。かつて幕府への献上品であった細川家秘伝のお菓子だそうで、軽い口当たりと上品な甘みが魅力の一品であります。
「古今伝授の間」の室内から庭園を眺めていると、実に静かで穏やかに時間が流れていくのを感じます。熊本の繁華街からもほど近い都市の中にあることを、思わず忘れそうになるほどの静かさに包まれていると、このまま横になってひと眠りしたい気分になってきたのでありました・・・。
庭園内の散策を終えて外に出ると、立ち並ぶお土産屋さんの多くが営業を始めておりました。わたしはその中の一軒に立ち寄って、熊本の名物甘味である「いきなり団子」を買い食いいたしました。蒸し立てアツアツのやつであります。
薄皮の団子の中には、厚くスライスしたさつまいもと餡がぎっしり。ほくほくのさつまいもはもちろん、甘さ控えめの餡も美味しくて、散策のあとのおやつにピッタリでありました。
庭園内の散策を終えて外に出ると、立ち並ぶお土産屋さんの多くが営業を始めておりました。わたしはその中の一軒に立ち寄って、熊本の名物甘味である「いきなり団子」を買い食いいたしました。蒸し立てアツアツのやつであります。
薄皮の団子の中には、厚くスライスしたさつまいもと餡がぎっしり。ほくほくのさつまいもはもちろん、甘さ控えめの餡も美味しくて、散策のあとのおやつにピッタリでありました。
水前寺成趣園の前に伸びている、市電の通る広い道路を跨いだところにある熊本県立図書館を訪ねました。ここの館内にある、熊本ゆかりの文学者たちに関する資料を集めた「くまもと文学・歴史館」を見学するのが目的でした。
ところが、館内のほとんどが「展示替え」ということで、見学ができない状態になっておりました。この週の終わりから開催された、萩原朔太郎についての企画展に伴う展示替えということだったのでありましょう。まことに残念ではありましたが、仕方がございません。
わたしは予定を変更して、図書館のすぐそばを流れる川に沿った遊歩道を辿りながら、江津湖方面を散策することにいたしました。
この川を流れる水も、やはり阿蘇からの伏流水。澄み切った流れを眺めながらの散策もまた、目を楽しませてくれました。
この川を流れる水も、やはり阿蘇からの伏流水。澄み切った流れを眺めながらの散策もまた、目を楽しませてくれました。
川に沿うように続く遊歩道では、ウォーキングやランニングに興じている人たちがそこかしこにおられました。なかには、のんびりと釣り糸を垂れているおじさんも。何が釣れるのかなあ。
象のすべり台が真ん中に立っている広々とした池は、夏の時期にはプールとして使われているようです。こういうきれいな水での水遊びも、さぞかし気持ちがいいことだろうなあ。
そのまま遊歩道を進み、上江津湖へ。対岸にはボート乗り場が見えました。
かつてこのあたりでは、夏目漱石や徳冨蘆花、与謝野寛・晶子夫妻などといった文人たちが、船遊びや散策に興じていたといいます。文人たちにも愛された豊かな自然と、日常的に接することができるこの周辺の人たちが、なんだか羨ましく思えたのでありました。
象のすべり台が真ん中に立っている広々とした池は、夏の時期にはプールとして使われているようです。こういうきれいな水での水遊びも、さぞかし気持ちがいいことだろうなあ。
そのまま遊歩道を進み、上江津湖へ。対岸にはボート乗り場が見えました。
かつてこのあたりでは、夏目漱石や徳冨蘆花、与謝野寛・晶子夫妻などといった文人たちが、船遊びや散策に興じていたといいます。文人たちにも愛された豊かな自然と、日常的に接することができるこの周辺の人たちが、なんだか羨ましく思えたのでありました。
ここからさらに進んでいくと下江津湖へとつながり、そのそばにある熊本市動植物園にも行くこともできますが、今回はこのあたりで切り上げることにいたしました。次の機会には、もっと時間をとってこのあたりを散策してみようかなあ・・・そう思ったのでありました。
市電に揺られて、再び繁華な熊本の中心部へと戻ってまいりました。
そろそろお昼時ということで、昼食は何にしようかとしばし迷ったのですが、もうだいぶ旅費が少なくなってきたこともあり(苦笑)、結局は最後も熊本ラーメンで締めることにいたしました。ということで、上通りのアーケード街にある、熊本ラーメン元祖として名高いお店「こむらさき」さんに立ち寄りました。
まずは、焼き餃子と瓶ビールの黄金コンビに舌鼓を打ったあと、創業当時からの人気メニューという「王様ラーメン」を堪能いたしました。それほど濃厚というわけでもないあっさりした豚骨スープに、ローストしたにんにくがいいアクセントとなっておりました。まさに「昔ながらの正統派ラーメン」といった感じの、懐かしい美味しさでありましたねえ。
まずは、焼き餃子と瓶ビールの黄金コンビに舌鼓を打ったあと、創業当時からの人気メニューという「王様ラーメン」を堪能いたしました。それほど濃厚というわけでもないあっさりした豚骨スープに、ローストしたにんにくがいいアクセントとなっておりました。まさに「昔ながらの正統派ラーメン」といった感じの、懐かしい美味しさでありましたねえ。
昼食のあと、上通りアーケード街を抜けた並木坂通りに立つ古書店「舒文堂(じょぶんどう)河島書店」さんに立ち寄りました。
創業がなんと明治10(1877)年という老舗の古本屋さんで、明治29年には当時の第五高等学校(熊本大学の前身)の英語教師として赴任していた夏目漱石も立ち寄ったという、まさに貴重な文化財といってもいい存在のお店なのであります。一般書も扱っているものの、メインとなるのは熊本をはじめとする九州各県の郷土誌や、歴史、文学関係の書物。奥のほうには古文書や書画もあったりして、お宝物件もかなりあるのではないかと思われます。
棚を見ていると気になる書物がいろいろとありましたが、使えるお金はごくごく限られておりましたので(涙)、昭和56(1981)年刊の『熊本の風土とこころ第二集 23 熊本の味』(熊本日日新聞社)のみ購入いたしました。上質の用紙に写真がたくさん掲載されている、ビニールのカバーがかかった文庫版サイズの本というところに、かつて保育社から出されていた「カラーブックス」を思わせるものがあります。熊本の出版物にもこういうシリーズがあったんだねえ。
購入したとき、お店の方から10月の末に開催される古書籍販売会のチラシをいただきました。残念ながら行くことはできなかったものの、そういう催しが成立できる文化的な風土を持つ熊本が、またしても羨ましく思えたのでありました(こういうことは、わが宮崎ではまず成り立たないからなあ・・・)。
購入したとき、お店の方から10月の末に開催される古書籍販売会のチラシをいただきました。残念ながら行くことはできなかったものの、そういう催しが成立できる文化的な風土を持つ熊本が、またしても羨ましく思えたのでありました(こういうことは、わが宮崎ではまず成り立たないからなあ・・・)。
そうそう、ここ並木坂通りには舒文堂さんのほかにも2軒の古本屋さんがあり、それらのお店にもいろいろと、お宝がありそうな感じがいたします。次の機会にはもっと予算を増やして、古本屋さんめぐりをするというのも楽しいだろうなあ。
このあたりでもう一品だけ、何か甘いものでも・・・と思い、こちらも上通りアーケード街にある「お茶の堀野園」さんの日本茶販売店&カフェ「茶以香」(ちゃいこう)に入り、抹茶フロートをいただきました。コクと甘みがある抹茶とソフトクリームがよく合っていて、ホッとする美味しさでした。
今回の熊本旅行で最後に訪問したのは「小泉八雲旧居」。繁華街のど真ん中にある「鶴屋百貨店」のすぐ裏手に位置する、こじんまりとした日本家屋で、室内には八雲の足跡と文学を辿る資料などが展示されております。
この建物も、6年前の熊本地震により被害を受けており、その年の秋に訪れた時には入り口のあたりまでしか入ることはできませんでした。しかし翌年の秋には復旧が完了し、一般公開も再開されました。室内には地震による被害と、その復旧の過程を記録した写真パネルも展示されております。
夏目漱石よりも少し前の明治24(1891)年に、やはり第五高等中学校の英語教師として熊本に赴任した八雲は、当時の校長だった嘉納治五郎などとの交流の中で熊本と日本の精神性に触れ、そこから大きな影響を受けたようです。その作品にも、熊本を舞台としたものがいくつかあるといいます。
恥ずかしながら、まだ『怪談』くらいしか八雲の作品を読んでいなかったわたしですが、ここの展示を見ていくうちに、もっときちんと八雲の作品に向き合いたいという気持ちが湧いてまいりました。
すでに3年近くに及ぶコロナ莫迦騒ぎ禍を通して、「安心」「安全」「便利」という価値観を当然のように見做してきた今の日本人の精神が、いかに退化、衰弱してしまっているのかを、つくづく思い知らされました。それだけに、八雲に影響を与えたかつての日本人の高い精神性をきちんと見直し、再評価する必要があるのではないか・・・そう思ったのであります。
開け放たれた窓からはそよそよと、心地良い風が吹き抜けておりました。
いよいよ、熊本を離れるときがやってまいりました。わたしは通町筋からもう一度、熊本城のほうを見遣りました。
そして今度は、下通りのアーケード街のほうへ目を向けました。連休最終日の下通りもまた、多くの人で賑わっておりました。
ささやかながらも、地震からの復興を応援したいという気持ちから続けている熊本旅行ですが、むしろこちらのほうが元気をいただいてきたように思います。今回の訪問でもまた、たくさんの楽しさと元気をいただきました。
ありがとう熊本!そしてあらためて・・・がまだせ熊本!
(おしまい)
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