NHKスペシャル『シリーズ深海の巨大生物 謎の海底サメ王国』
初回放送=7月28日(日)午後9時00分~9時58分 音楽=久石譲 語り=三宅民夫、守本奈実 国際共同製作=NHK、NHKエンタープライズ、ディスカバリー・チャンネル(米)、ZDF(独)ほか
今年1月に放送されたNHKスペシャル『世界初撮影!深海の超巨大イカ』の反響を受けて、新たに立ち上げられた2回シリーズ『深海の巨大生物』。
昨夜放送のダイオウイカ続篇『伝説のイカ 宿命の闘い』に続く第2回は、駿河湾から相模湾にかけての深海に住むサメたちの生態にじっくりと迫ります。
富士山の麓に広がる相模湾から駿河湾にかけては、岸からわずか20㎞のところから一気に落ち込む、伊豆・小笠原海溝へとつながる海底の大峡谷があります。その深さ2000m。この海域は、かつてイギリスの調査船により数多くの深海ザメが発見された場所でもありました。
2012年夏。相模湾で大規模な実験が行なわれました。冷凍保存されていたマッコウクジラの死がいを沈め、近づいてくる深海ザメの生態を観察しようというのです。
水深500mの海底。沈められて間もないマッコウクジラに潜水艇で近づくと、なぜかクジラの頭が水中で揺れていました。やがて姿を現したのは、巨大な「カグラザメ」でした。
その体長は6m近く。口にはノコギリのような鋭い歯が並んでいました。目は、敵からの襲撃を防ぐために時折引っ込めたりしています。激しく尾を振りながら、クジラに食らいつくカグラザメ。
しかし、一口食らいついたあとはすぐにクジラから離れてしまいました。と、いきなり潜水艦の真上に現れ、威嚇するような行動をとったのです。
やがて、カグラザメは去って行きました。残されたのは、わずか一口で大きな穴を開けられたクジラでありました。
クジラを投下してから7日目。海底に沈められたクジラを記録していたロボットカメラの映像は、初日に現れた個体と同じカグラザメが、クジラの周囲を守るように泳ぎ回っているのを捉えていました。しかし、クジラを食べることはしないのです。
そのかわり、クジラにはたくさんの小さな生き物たちが集まっていました。餌を求めてやってきた魚やヒトデ、タカアシガニなどです。
そこには、「田んぼを耕すようにクジラを耕し、そのことで小さな生物も生き延びられる」という、深海における共生関係があったのでした•••。
研究チームは、駿河湾と相模湾の20ヶ所に200回以上カメラを沈め、さまざまな深海ザメの姿を記録しました。
体長1mの黒い姿をした「ユメザメ」。時折目を閉じる行動が、夢を見ているように見えることから名付けられました。その目の裏には反射板があり、深海のわずかな光をキャッチして獲物を狙います。
体長5mの「オンデンザメ」。海底の泥を吸っては吐き出し、泥の中の小さな生き物を餌にします。
鼻先が長く突き出した異様な姿の「ミツクリザメ」。英名は「ゴブリンシャーク=悪魔のサメ」。突き出された鼻先の裏には、わずか1000万分の1ボルトの電流を探知する「ロレンチーニ器官」というセンサーがついていて、それで獲物を探すのです。
獲物を見つけると、ふだんは引っ込んでいる口がグワッと前に飛び出し、1秒に満たない間に獲物に食らいつくのです。その様はまさに悪魔のよう。というか、わたくしは見ていて映画『エイリアン』を連想しました。
大海蛇のように細長い姿の「ラブカ」。口の中には内側に向いた歯がビッシリ。赤く開いたエラからは、酸素がわずかしかない深い海から、少しでも多くの酸素を取り入れるのです。
これらの深海ザメたちは、まだ恐竜が地上を闊歩していた1億5000万年前から、ほとんど姿が変わっていないといいます。深海ゆえの、厳しいながらも安定した環境に適応することで、大量絶滅から逃れて生き延びることができたのです。
今回の探索の目玉ともいえるのが、「幻のサメ」とも言われていた「メガマウスザメ」でした。体長が4.5m、口の大きさが1mもあります。
1976年にハワイで初めて確認されて以来、世界でわずか50例しか見つかっていません。その3分の1が、なんと日本沿岸。そのうち、駿河湾で発見された死がいの胃には、ご当地名産でもあるサクラエビが見つかったのです。そこで、サクラエビを狙って駿河湾に現れるメガマウスの姿を捉えようと、幾度も潜水艇での探索が行なわれました。しかし、なかなかその姿を見つけることができません。
そんな中、三重県の定置網漁師から「メガマウスを見た」との情報が。現地へ向かうと、夜の海面には大量のオキアミが。
そして、水面近くに現れた巨大な影•••。メガマウスでした。オキアミを食べるため、深海から浅い海へと上がってきていたのでした。
体長は5m。歯は小さな生き物を餌にしたことで退化し、わずか5㎜しかありません。そして、真ん丸とした目をした顔は、とても穏やかで優しげなものでした•••。
太古の時代から深海に適応したサメたちの、バラエティ豊かな姿形も面白いものでしたが、それらのサメが深海において、時には他の生き物たちと共生しつつ、独自の生態系を築いていたことには興味深いものがありました。
また、ダイオウイカ探索のときにも大活躍した2機の潜水艇「トライトン」と「ディープローバー」の勇姿を再び見ることができたのも、個人的には嬉しかったり。あれ、一度でいいから乗ってみたいなあ。
未知の深海への扉は、まだまだ開かれたばかり。これから、どんな世界が我々の目の前に現れてくるのか。とても楽しみであります。
初回放送=7月28日(日)午後9時00分~9時58分 音楽=久石譲 語り=三宅民夫、守本奈実 国際共同製作=NHK、NHKエンタープライズ、ディスカバリー・チャンネル(米)、ZDF(独)ほか
今年1月に放送されたNHKスペシャル『世界初撮影!深海の超巨大イカ』の反響を受けて、新たに立ち上げられた2回シリーズ『深海の巨大生物』。
昨夜放送のダイオウイカ続篇『伝説のイカ 宿命の闘い』に続く第2回は、駿河湾から相模湾にかけての深海に住むサメたちの生態にじっくりと迫ります。
富士山の麓に広がる相模湾から駿河湾にかけては、岸からわずか20㎞のところから一気に落ち込む、伊豆・小笠原海溝へとつながる海底の大峡谷があります。その深さ2000m。この海域は、かつてイギリスの調査船により数多くの深海ザメが発見された場所でもありました。
2012年夏。相模湾で大規模な実験が行なわれました。冷凍保存されていたマッコウクジラの死がいを沈め、近づいてくる深海ザメの生態を観察しようというのです。
水深500mの海底。沈められて間もないマッコウクジラに潜水艇で近づくと、なぜかクジラの頭が水中で揺れていました。やがて姿を現したのは、巨大な「カグラザメ」でした。
その体長は6m近く。口にはノコギリのような鋭い歯が並んでいました。目は、敵からの襲撃を防ぐために時折引っ込めたりしています。激しく尾を振りながら、クジラに食らいつくカグラザメ。
しかし、一口食らいついたあとはすぐにクジラから離れてしまいました。と、いきなり潜水艦の真上に現れ、威嚇するような行動をとったのです。
やがて、カグラザメは去って行きました。残されたのは、わずか一口で大きな穴を開けられたクジラでありました。
クジラを投下してから7日目。海底に沈められたクジラを記録していたロボットカメラの映像は、初日に現れた個体と同じカグラザメが、クジラの周囲を守るように泳ぎ回っているのを捉えていました。しかし、クジラを食べることはしないのです。
そのかわり、クジラにはたくさんの小さな生き物たちが集まっていました。餌を求めてやってきた魚やヒトデ、タカアシガニなどです。
そこには、「田んぼを耕すようにクジラを耕し、そのことで小さな生物も生き延びられる」という、深海における共生関係があったのでした•••。
研究チームは、駿河湾と相模湾の20ヶ所に200回以上カメラを沈め、さまざまな深海ザメの姿を記録しました。
体長1mの黒い姿をした「ユメザメ」。時折目を閉じる行動が、夢を見ているように見えることから名付けられました。その目の裏には反射板があり、深海のわずかな光をキャッチして獲物を狙います。
体長5mの「オンデンザメ」。海底の泥を吸っては吐き出し、泥の中の小さな生き物を餌にします。
鼻先が長く突き出した異様な姿の「ミツクリザメ」。英名は「ゴブリンシャーク=悪魔のサメ」。突き出された鼻先の裏には、わずか1000万分の1ボルトの電流を探知する「ロレンチーニ器官」というセンサーがついていて、それで獲物を探すのです。
獲物を見つけると、ふだんは引っ込んでいる口がグワッと前に飛び出し、1秒に満たない間に獲物に食らいつくのです。その様はまさに悪魔のよう。というか、わたくしは見ていて映画『エイリアン』を連想しました。
大海蛇のように細長い姿の「ラブカ」。口の中には内側に向いた歯がビッシリ。赤く開いたエラからは、酸素がわずかしかない深い海から、少しでも多くの酸素を取り入れるのです。
これらの深海ザメたちは、まだ恐竜が地上を闊歩していた1億5000万年前から、ほとんど姿が変わっていないといいます。深海ゆえの、厳しいながらも安定した環境に適応することで、大量絶滅から逃れて生き延びることができたのです。
今回の探索の目玉ともいえるのが、「幻のサメ」とも言われていた「メガマウスザメ」でした。体長が4.5m、口の大きさが1mもあります。
1976年にハワイで初めて確認されて以来、世界でわずか50例しか見つかっていません。その3分の1が、なんと日本沿岸。そのうち、駿河湾で発見された死がいの胃には、ご当地名産でもあるサクラエビが見つかったのです。そこで、サクラエビを狙って駿河湾に現れるメガマウスの姿を捉えようと、幾度も潜水艇での探索が行なわれました。しかし、なかなかその姿を見つけることができません。
そんな中、三重県の定置網漁師から「メガマウスを見た」との情報が。現地へ向かうと、夜の海面には大量のオキアミが。
そして、水面近くに現れた巨大な影•••。メガマウスでした。オキアミを食べるため、深海から浅い海へと上がってきていたのでした。
体長は5m。歯は小さな生き物を餌にしたことで退化し、わずか5㎜しかありません。そして、真ん丸とした目をした顔は、とても穏やかで優しげなものでした•••。
太古の時代から深海に適応したサメたちの、バラエティ豊かな姿形も面白いものでしたが、それらのサメが深海において、時には他の生き物たちと共生しつつ、独自の生態系を築いていたことには興味深いものがありました。
また、ダイオウイカ探索のときにも大活躍した2機の潜水艇「トライトン」と「ディープローバー」の勇姿を再び見ることができたのも、個人的には嬉しかったり。あれ、一度でいいから乗ってみたいなあ。
未知の深海への扉は、まだまだ開かれたばかり。これから、どんな世界が我々の目の前に現れてくるのか。とても楽しみであります。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます