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【わしだって絵本を読む】凝った仕掛けで何度でも楽しめる、安野光雅さんの『しりとり』

2021-02-13 10:46:00 | 本のお噂


『しりとり』
安野光雅さく・え、福音館書店(安野光雅の絵本)、2021年


昨年末に94歳でお亡くなりになった安野光雅さん。抒情的な雰囲気で多くの人に愛された『旅の絵本』シリーズや、数学・科学に対する造詣を生かした意表を突く発想の作品など、数多くの絵本を送り出してきたほか、本の装幀家としても活躍されました(個人的には、『吉里吉里人』をはじめとする井上ひさしさんの著作の装幀が印象に残っております)。
その安野さんの最新刊として、今年の2月はじめに刊行されたのが、この『しりとり』という絵本です。初出は、2018年6月の絵本雑誌『こどものとも』ですが、やはり今月はじめに出された『こどものとも』の最新号にも、安野さんの作品「なぞなぞ」が収められております。最晩年に至ってもなお、旺盛な創作活動に励んでおられたことに驚かされます。

最初のページに並んでいる「さる」「きびだんご」「すもも」などの16の絵から好きなものを一つ選んだら、ページをめくってその言葉につながる絵を探し当てて、さらに次のページへ・・・という、ちょっとひねった趣向の「しりとり」遊びが楽しめます。
最後は「りぼん」「ちょうちん」などの〝ん〟がつく言葉で終わるのですが、もし最後のページの言葉につながることができなかったら、そのまま最初のページの言葉へとつないでいって、さらに続きを進めていく・・・という凝った仕掛け。ちょっとしたゲーム感覚とともに、何度でも楽しむことができます。すっきりした水彩で描かれた、安野さんならではのユーモラスで温かな絵も魅力的です。

最晩年になってからも、こういう凝ったつくりの絵本を生み出した安野さんって、つくづくすごい方だったなあと思います。あらためて、お悔やみを申し上げます・・・。


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