年またぎ映画祭6本目『2001年宇宙の旅』2001 A SPACE ODYSSEY(1968年 イギリス・アメリカ)
監督・製作=スタンリー・キューブリック
脚本=スタンリー・キューブリック、アーサー・C・クラーク
撮影=ジェフリー・アンスワース、ジョン・オルコット
音楽家アラム・ハチャトゥリアン、ジェルジュ・リゲティ、ヨハン・シュトラウス、リヒャルト・シュトラウス
出演=キア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド、ウィリアム・シルベスター、ダニエル・リクター、ダグラス・レイン
Blu-ray発売元=ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
言わずと知れた、スタンリー・キューブリック監督によるSF映画史、いや世界映画史に(まさに作中の「モノリス」のごとく)屹立する金字塔的作品であります。
のちに『スター・ウォーズ』シリーズのチューバッカを手がける、スチュアート・フリーボーンによる冒頭の猿人のメイクといい、『未知との遭遇』(1977年)や『ブレードランナー』(1982年)などのVFXで知られるダグラス・トランブルらが手がけた、宇宙空間やラストの光の奔流を表現する視覚効果といい、すべてが50年前とは思えない完成度で驚かされます。
とりわけ、ヨハン・シュトラウスの「美しく青きドナウ」の旋律に乗せて、漆黒の宇宙空間を進む宇宙船や、ゆったりと回転する宇宙ステーションを捉えた映像のリアルさと素晴らしさは、CG全盛の現在においてもまったく色褪せていません。まだまだ技術的な制約も大きかったであろうことを思えば、視覚効果スタッフの創意工夫につくづく感心させられます。
説明や物語性を排除した本作の語り口は、たしかに観念的でとっつきにくいものがありますが、そのぶん観る側がそれぞれに想像し、考えを巡らせることができます。そのことで本作は今もまったく古びることなく、評価され続けているように思えます。
3年におよぶコロナ莫迦騒ぎの混乱ぶりや、いまだ終わる気配もないウクライナ戦争といった、現在の人類の愚行の数々を思うにつけ、映画のラストに登場した「スターチャイルド」のように、人類が真の意味で「進化」できるまで、まだまだ道は遠いと言わざるを得ないようで・・・。
3年におよぶコロナ莫迦騒ぎの混乱ぶりや、いまだ終わる気配もないウクライナ戦争といった、現在の人類の愚行の数々を思うにつけ、映画のラストに登場した「スターチャイルド」のように、人類が真の意味で「進化」できるまで、まだまだ道は遠いと言わざるを得ないようで・・・。
年またぎ映画祭7本目『2010年』2010(1984年 アメリカ)
監督・脚本・製作・撮影=ピーター・ハイアムズ
原作=アーサー・C・クラーク
音楽=デイヴィッド・シャイア
出演=ロイ・シャイダー、ジョン・リスゴー、ボブ・バラバン、ヘレン・ミレン、キア・デュリア、ダグラス・レイン
Blu-ray発売元=ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
前作『2001年宇宙の旅』から9年後。木星の上を漂い続けるディスカバリー号をめぐる事件と、黒石板「モノリス」をめぐる謎の解明に向かう米ソ両国の合同調査隊が遭遇するものは・・・。
16年後に製作された『2001年〜』の続篇で、アクションからSFまで幅広くこなす職人監督ピーター・ハイアムズが、監督のみならず脚本や製作、撮影までをこなして作り上げた力作であります。原作者であるアーサー・C・クラークとは、インターネット出現前のパソコン通信を利用しながら意見交換を行い、脚本をまとめ上げました。
映画史上の傑作として神格化されている前作と何かにつけては比較され、低い評価を受けている感がありますが、前作の繰り返しになるようなことを避け、誰もが楽しめるしっかりした娯楽映画としてまとめ上げたハイアムズ監督の手腕は、もっと肯定的に評価されてもいいように思います。『スター・ウォーズ』旧3部作(1977〜1983年)や『ゴーストバスターズ』(1984年)などにも関わったリチャード・エドランドによるVFXもなかなかいい出来であります。
本作における米ソ両国は、中米をめぐって交戦寸前の緊張状態にあるという設定で、木星に向かう合同調査隊の関係も良好とは言えないのですが、物語が進むにつれて両者の結束が強まり、最後には素晴らしい奇跡が起こります。その展開はたしかに、あまりにも理想主義的に過ぎるかもしれません。
とはいえ、ソビエトの消滅後にできたロシアによって引き起こされた、いまだ続くウクライナ戦争のことを思えば、この映画のような「すばらしいこと」が現実にも起こってくれればなあ・・・と願いたくなったのでありました。
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