読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

NHKスペシャル『人体 ミクロの大冒険』第2回「あなたを変身させる! 細胞が出す"魔法の薬"」を観る

2014-04-05 23:15:32 | ドキュメンタリーのお噂
NHKスペシャル『人体 ミクロの大冒険』第2回「あなたを変身させる! 細胞が出す"魔法の薬"」
初回放送=2014年4月5日(土)午後9時00分~9時49分、NHK総合
テーマ音楽=葉加瀬太郎、音楽=羽毛田丈史
出演=山中伸弥・野田秀樹・角田光代・松嶋尚美・山本舞香
語り=首藤奈知子


シリーズ『人体 ミクロの大冒険』3回目は、人体に劇的な変化を起こすホルモンの不思議な働きにスポットを当てた内容でした。
冒頭、ドミニカ共和国のサリーナスという村の人びとに起こった不可解なことが語られます。思春期を迎える10歳になる頃を境にして、女の子が男へなったり、逆に男の子が女へなっていったりという現象が見られる、というのです。
子どもの時にはほとんどなかった男女の体格差を、思春期に大きく変えていくのが、内分泌細胞(GnRH細胞)がつくるホルモン。視床下部の内分泌細胞から血液に乗って全身へと行き渡った性腺刺激ホルモンが卵巣に到達すると、女性の体には劇的な変化が生じます。
卵巣内の卵胞細胞から放出された女性ホルモンは、胸部の乳腺細胞の受容体に作用し、それにより胸が膨らんでいくことになります。また、骨盤の骨芽細胞を分裂させることによって、ヒップも豊かに膨らんでいくのです。
冒頭のサリーナス村での不可解な現象は、子どもが母親の胎内で育つときにホルモンがうまく働かず、性器が未発達のまま生まれることにより男女が取り違えられ、それが成長とともに男女が入れ替わるようになってしまうことの原因だとか。

女性が出産するときに大きな働きをするのが「オキシトシン細胞」によりつくられるオキシトシンというホルモン。これが子宮を収縮させることにより陣痛が起こり、出産を促していくという仕組みです。
ところがこのオキシトシン、出産のときに高くなるだけではなく、出産後に最も値が高くなるとか。なぜか。
アメリカでの平原ハタネズミを使った研究によれば、それは母親と子どもとの「親密な絆をつくるのに欠かせない」働きをするというのです。子宮のみならず脳にも送られるオキシトシンは、恐怖の感情を生み出す扁桃体に作用して警戒心を解き、さらに側座核に作用して強い快感を生じさせることにより、子どもへの深い愛情を生み出すのだとか。このオキシトシン、男性にもちゃんと存在しているそうです。

人間の感情を支配するかのようなオキシトシン。逆に、これを人間によりコントロールしようという動きも。
これもアメリカでの研究によれば、他者に命を預けたり、キスをしたり、他人とともにダンスなどをやったりすることで、オキシトシンの値が高まり、「優しい気持ちになり、寛容でポジティブな人間になることができる」というのです。
さらに、東京大学と金沢大学との共同研究により、オキシトシンの血中濃度が低いという自閉症の人に「オキシトシンスプレー」を吸わせることにより、自閉症を改善しようという臨床試験が行われているとか。番組ではスプレーを投与している男性が紹介されていましたが、投与の3~4日後には、言葉がスラスラ出るようになった、といいます。この臨床試験の結果は、現在分析中の段階とのことです。

にわかには飲み込みがたい内容が盛り込まれたシリーズ3回目。今回も興味深く観たのですが、ちょっとまだ半信半疑なところがあったかなあ、というのが正直なところでした。オキシトシンの働きや、それが自閉症を改善できるかも、というあたりは、もっと研究の進展を見た上で判断したほうが良さそうに思われました。
とはいえ、研究により、人と人の絆を作り上げ、自閉症を改善できるかもしれないというオキシトシンの「実力」がはっきりと証明されるとすれば、それはそれで望ましいことではあるな、とは思いました。

4月刊行予定新書新刊、個人的注目本10冊+α

2014-04-03 22:02:46 | 本のお噂
ついに始まりましたね、新年度が。新たな場所で、仕事や学業に励んでいこうとしておられる方もたくさんおられることと思います。どうか、大いに健闘してくださいますよう。
この新年度には、消費税率引き上げというとんだオマケ(苦笑)もくっついてしまいました。ただでさえ慌ただしい年度またぎの時期に、なんともハタ迷惑なことでありましたが•••。まあ引き上げたのであれば、キチンとした使い道に活かしていかなければ承知せんからなオラ!•••などとイキがるのはたいがいにしておいて、4月に刊行予定の新刊新書から、個人的に気になる書目をピックアップしていくことにいたします。何か引っかかる書目があれば幸いに存じます。
刊行データや内容紹介については、書店向けに取次会社が発行している情報誌『日販速報』の3月17日号、3月24日号、3月31日号、4月7日号とその付録である4月刊行の新書新刊ラインナップ一覧に準拠いたしました。発売日は首都圏基準ですので、地方では1~2日程度のタイムラグがあります。また、書名や発売予定は変更になることもあります。

『日本語の考古学』 (今野真二著、岩波新書、18日発売)
「『源氏物語』を書いたのは誰。写本や文献の微かな痕跡から、昔の日本語の姿を推理する、刺激的な一書」との、なんだかちょいと謎めいた内容紹介。なんだか惹きつけられるものがありますねえ。考古学的な視点から見えてくる昔の日本語の姿とは、いかなるものなのでありましょうか。
4月はこのほかに、日本語に関する気になる書目がいくつかあるので、ここで合わせてご紹介しておきます。まず同じく岩波新書からは、「好評の『日本語雑記帳』に続くことばシリーズ第2弾」という『日本語スケッチ帳』(田中章夫著、18日発売)が。
新潮新書からは、文芸評論家・小谷野敦さんの『頭の悪い日本語』(17日発売)が。「『すべからく』『命題』といった誤用から、読むとムズムズする気持ちの悪い言葉まで、意味を知らずに使うと恥ずかしい日本語を網羅」とのことで、なかなか面白そうです。
さらに青春新書インテリジェンスからは、『その日本語、仕事で恥かいてます』(福田健監修、1日発売)も。「上司から、取引先から、ひそかに評価を下げられている300語。正しい日本語の言い換えとともに、気の利いた伝え方も伝授」とのことで、こちらは新社会人は要チェックかも、です。

『地下鉄車両の開発秘話』 (里田啓著、交通新聞社新書、15日発売)
「車両畑を歩んできた著者が見てきた営団地下鉄の車両開発の舞台裏。地下鉄網の発達と車両技術の発展を支えてきた人々の物語」と。派手さこそないものの、文字どおり「縁の下の力持ち」的に都市交通を担っている地下鉄車両の開発秘話には、知られざるエピソードがいろいろありそうで面白そうですね。

『発展コラム式 中学理科の教科書』物理・化学編&生物・地学・宇宙編(滝川洋二ほか編、講談社ブルーバックス、17日発売)
「世界標準の理科の内容を押さえた1話読み切り型コラム教科書2冊。大人の科学教養も身に付くと好評の既刊をアップデート」。わかりやすく読み物としても楽しめて、大人の学び直しにもうってつけで個人的にも重宝していた、2008年刊の姉妹編2冊の新版ということで、これはぜひ買い替えておこうかな、と思います。

『デジタル・ワビサビのすすめ 「大人の文化」を取り戻せ』 (たくきよしみつ著、講談社現代新書、17日発売)
「SNSを含め、デジタルを一番使いこなせるのは、酸いも甘いも噛み分けた『大人』。人生を豊かにするためのデジタル使いこなし術」という内容紹介に(いちおう)レッキとした「大人」のわたくしも惹かれるものが。デジタルの世界にも、もっと「大人」っぽいところがあってもいいかなあ、などと思っていたりしているので、そのための良い知恵になるような一冊になっていれば、と期待するのであります。

『露天商の近現代(仮)』 (厚香苗著、光文社新書、17日発売)
「めずらしいテキヤ集団のフィールドワークを行ってきた著者が、『テキヤさん』たちの伝承を主軸に露天商いの近現代を描く」と。テキヤさんたちの世界というのは、民俗学の面からも興味深いものがありますので、その近現代に焦点を当てた本というのはなかなか楽しみです。

『うわさとは何か ネットで変容する「最も古いメディア」』 (松田美佐著、中公新書、25日発売)
「デマ、口コミ、風評、都市伝説など多様な言葉を持つ歴史を辿り、ネット社会の今も、なぜ人間関係を結び、人々を魅了するかを明らかに」と。人々の結びつきを強める反面、悪意を持って広まったときには由々しき結果を招くことにもなる「うわさ」。ネット社会におけるそれは、従来の「うわさ」からどのように変容しているのでしょうか。注目したい一冊です。

『数学を歴史のように学ぶ』 (柳谷晃著、文春新書、21日発売)
「誰が何のために作ったかを知れば、数学がわかる、好きになる。2次方程式、3角比などの歴史をたどりその本質を伝える感動講義」とのこと。自慢じゃありませんが、数学は赤点が当たり前だったわたくしとしては、これでいくらかでも数学がわかるようになれるだろうかと、期待するところ大なのであります。4月刊行分では一番楽しみかも。

『中国の愚民主義 「賢人支配」の100年』 (横山宏章著、平凡社新書、15日発売)
「中国には人民大衆を愚民とみなし、政治的権利を認めない『愚民主義』という独特の考え方がある。この観点から中国現代史を辿る」と。確かにこのような視点から見直してみると、中国という国のあり方がよくわかってきそうな気もいたしますね。

『神と肉 日本の動物供犠』 (原田信男著、平凡社新書、17日発売)
平凡社新書からもう一冊を(4月の平凡社新書は、なんだか興味を惹かれるような書目が多いのです)。「近代以前も日本人は肉を食べていた。中国、朝鮮、沖縄の事例にふれつつ米の豊作のためにこそ神に肉を供える儀礼を日本史に抉り出す」と。近代以前における「肉」の利用のしかたには特別な意味があったようで、どのようなものだったのか興味津々。こちらも楽しみな一冊です。

『古代エジプトの埋葬習慣(仮)』 (和田浩一郎著、ポプラ新書、上旬)
「古代エジプト人の信仰と埋葬の関係性、ミイラの作り方などだけでなく、庶民の埋葬習慣についても詳しく触れた1冊」とのことですが、いずれのトピックも知るとなかなか面白いものがありそうな。とりわけ庶民の埋葬習慣は知りたいところです。


4月刊行分で他に気になる書目は以下の通りです。

『知の英断』 (ジミー・カーター、フェルナンド・カルドーゾほか著、NHK出版新書、11日発売)
『天体衝突』 (松井孝典著、講談社ブルーバックス、17日発売)
『科学検定公式問題集 5・6級』 (桑子研・竹田淳一郎ほか、講談社ブルーバックス、17日発売)
『毒蝮流!ことばの介護』 (毒蝮三太夫著、講談社+α新書、21日発売)
『「ストーカー」は何を考えているのか』 (小早川明子著、新潮新書、17日発売)
『金融史の真実 資本システムの1000年』 (倉都康行著、ちくま新書、7日発売)
『クール・ジャパンはなぜ嫌われるのか 「熱狂」と「冷笑」を超えて』 (三原龍太郎著、中公新書ラクレ、10日発売)
『黒澤明が選んだ100本の映画』 (黒澤和子著、文春新書、21日発売)
『ツアー事故はなぜ起こるのか マス・ツーリズムの本質』 (吉田春生著、平凡社新書、15日発売)
『ジャズは気軽な旋律 プロデューサーが出会った素顔の巨人たち』 (木全信著、平凡社新書、15日発売)
『江戸時代が面白くなる「春画」の秘密』 (白倉敬彦著、洋泉社歴史新書、10日発売)





第20回宮崎映画祭、開催日程が決定!

2014-04-01 23:01:01 | 映画のお噂
毎年夏の時期に、宮崎市内にて開催されている「宮崎映画祭」。
映画をこよなく愛する市民ボランティアを中心にして運営される、アットホームで手づくり感あふれる映画祭なのですが、目利きのスタッフにより選び抜かれた上映作品の質の高さには定評があり、いまやすっかり宮崎屈指の文化的イベントとして定着しております。
今年、いよいよ第20回目という節目を迎えることになる宮崎映画祭。その開催日程が先月末に決定し、アナウンスされました。

第20回宮崎映画祭、開催日程
2014年7月5日(土)-7月13日(日)


上映作品等の詳細はまだ未定ですが、これから徐々に固まり、アナウンスされていくものと思われます。それについては、ぜひとも映画祭公式HPをチェックし、注目していっていただけたらと思います(公式のTwitterアカウントおよびFacebookページもあり)。なお、実行委員ボランティアも募集中とのことです。

宮崎映画祭公式HP
http://www.bunkahonpo.or.jp/mff/

宮崎映画祭の20年間の歴史は、映画を取り巻く状況が激変していく20年間でもありました。
シネコンの伸長と「街の映画館」の衰退。フィルムからデジタルへの移行。ネットにおける配信•••。「映画を観る」という営みの内実は大きく変わってきていますし、今後もさらなる変化の波が押し寄せるのかもしれません。かく申すわたくし自身、恥ずかしながら普段は映画館で映画を観る機会はそう多くはありません。
しかしながら、映画館という特別な場所で映画を味わうことには、やはり捨てがたい魅力があることは確かです。加えて、映画を観る環境に恵まれているとは言い難い宮崎という地方において、良質な映画にまとめて触れる機会があるということの意義は、まだまだ大きいものがあるように思うのです。
そのような機会を毎年つくってくださる映画祭の実行委員やボランティアスタッフへの感謝と敬意を表しつつ、今年はどんな胸躍るような映画との出会いがあるのか、開催を楽しみに待ちたいと思っております。