しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

昭和20年6月23日沖縄戦終了②大和特攻

2023年06月23日 | 昭和20年(終戦まで)

戦艦大和は沖縄に出撃したが、
豊後水道で早くも米軍の潜水艦に発見され、薩摩半島沖で沈没した。

もし沖縄に突撃できていたら、上陸もかなわず飢餓地獄で戦死した可能性もある。
出撃命令が発令された時点で、悲劇しかありえない作戦だった。

せめてものとして、
3隻の駆逐艦が帰還できたこと。
なお、日本軍の戦死者総数は4.044名。米軍は13名。

・・・

「教養人の日本史・5」 藤井松一  現代教養文庫 

4月6日、大本営は航空肉弾戦と特攻艦隊のなぐりこみ戦術によって退勢を挽回しようと焦り、
生き残りの大戦艦「大和」以下10隻の艦隊に片道燃料のみをあたえて出撃させた。
しかし艦隊は潜水艦にとらえられて空襲をうけ、
大和は数千名の艦員とともに徳之島に沈んだ。
ここに日本海軍は完全に姿を消した。

・・・


「連合艦隊興亡記」 千早正隆  中公文庫  1996年発行 

4月5日、連合艦隊司令部の作戦会議に、
大和を中心とする残存部隊を沖縄に突入させる案が、突如として持ち出された。
その目的とするところは悲壮きわまりないものであった。
航空部隊がすべて特攻となって善戦しているとき、水上部隊も特攻となってこれに呼応すべきでないか、
またそうすることによってのみ、大和以下の残った戦力を戦局に寄与させることができるというのであった。
その作戦が成功するかしないかは、すでに討議の外であった。

日本海軍の最期の出撃命令を受けたのは、
大和、矢矧、雪風、磯風、冬月、涼月、初霜、霞、朝霧の10艦であった。
突如として降ってわいた必死の突入作戦の指令は、歴戦の指揮官たちをも驚愕させた。
批判的な意見すら聞かれた。
しかし伊藤整一中将の、悲壮な強い決意のほどを知らされ、全艦隊の気持ちは一つにかたまった。

豊田連合艦隊司令長官が出撃にあたって訓辞を述べた。
「皇国の興廃は正にこの一戦にあり。
ここに海上特攻隊を編成し、壮烈無比の突入作戦を命じたるは、
帝国海軍をこの一戦に結集し、
光輝ある帝国海軍水上部隊の伝統を発揚すると共に、
その栄光を後世に伝えんとするに外ならず」

4月6日午後6時、徳山湾を出港。
4月7日午前7時、大隅半島を通り抜けた。
4月7日午後0時30分、約250機の艦載機が襲う。2時間戦いを続けた後、沈んだ。

・・・

・・・
雑誌「丸」 潮書房  昭和44年11月号 

その日私は『大和』の艦橋にいた
海軍少尉・渡辺光男

待つものは死以外には考えられないものだった。
私は部下に何と説明するか考えた。
艦内のうわさをすでに耳にしていた部下たちはこわばっていた。
「心乱さず家族に心置きなく通信すること。
心身を潔める意味をかねて下着は必ず着替え、身のまわりの整理をしておくこと」
と申しわたしたのである。

食卓には酒盃がくばられ、乾杯の音頭がとられ、
いつとはなしに意気天をつく軍歌がはじまった。
今宵を最後と思う各人の心にはこめあげくるものがあるとみえ、
男泣きの涙、健闘を誓いあう固い握手が随所にみられ、海面はるかを望む者もいた。

特攻出撃の4月6日の時はきた。
三田尻沖を発進した。
豊後水道はすでに敵潜水艦の侵入するところとなっており、
”全軍警戒”の艦隊命令文がだされた。
そうこうするうち、敵潜水艦の発信を傍受した連絡がきた。
ほどなく”雷跡見ゆ”の報告が入る。

4月7日薩摩半島をすぎるあたりで白じらと明けてきた。
ふたたび故国の土を踏むことはできない。

雷撃機の攻撃をうけているのか、艦の動揺が感じられ、
広くない通路は弾薬、兵器材料を運ぶ者、
あるいは負傷者を運ぶ者に出会った。
ここかしこ血臭がただよっていた。
伝令に聞くと、第二波の来襲中だという。
数十メートルの水柱がときおり艦橋内にしぶきをかける。

二時すぎ第四波の来襲をまた受けた。
傾斜も二十度を越えてくると床上に流れている血痕と傾斜で歩行も困難になってくる。
「傾斜復元の見込みなし」
やがて、
「総員最上甲板」
の命令が出された。
大和から海中に飛び込んだ。
しばらく泳ぐうち大和の爆風、衝撃で海上にたたきつけられ気を失ってしまった。
気がついたのは雪風の士官室で寝込んでいた。

思えば、
敵攻撃は大和の左舷に集中されたようで、
その物量の差をまざまざと見せつけられた海戦であった。
巨艦の最期を飾るにふさわしい割腹自殺であった。

・・・

 

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