金沢で、弟子や縁者に囲まれ、すっかりくつろいだ芭蕉の様子が句にあらあれている。
金沢は、太平洋戦争で米軍の空襲をまぬがれ、現在も加賀百万石の城下町の雰囲気がよく残っている。
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「芭蕉物語(中)」 麻生磯次 新潮社 昭和50年発行
十七日は、浅野川の大橋付近にあった北枝亭に招待された。
曽良は気のゆるみが出たせいか、寝込んでしまって、お供はしなかった。
芭蕉はこの席で、
あかあかと日は難面もあきの風 芭蕉
という句を披露した。
越中路から金沢へ入る途中、十三日、十四日、十五日といずれも快晴で、暑気が甚だしかった。
加賀の大国に入るのだと、心をふるいたたせてみても、身心の疲れはどうすることもできなかった。
十四日は大暑と疲労のために気分がすぐれなかった。
炎暑の中を歩き続けたので身心ともに疲れ果てたのである。
あかあかとした夕日を顔にうけながら、うら寂しい秋風の吹く中を、旅を胸に抱いて、
とぼとぼと歩いて行く旅人の思いを描き出した句である。
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旅の場所・石川県金沢市
旅の日・2016年2月2日
書名・奥の細道
原作者・松尾芭蕉
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「超訳芭蕉百句」 嵐山光三郎 筑摩書房 2022年発行
あかあかと日は難面もあきの風
「あかあかと」は真赤な夕陽、「難くも」は「つれない顔をして」いること。
秋になったのに日は赤々と照りつける。ここにも一笑への追悼がある。
忍者寺で知られる妙立寺の裏が願念寺で、門前に芭蕉「塚も動け............」の句碑がある。
願念寺は小さいながらも、鐘楼があり、真宗独特の大屋根を持つ本堂といい、コンパクトに一山を構えている。
境内には一笑塚があり、一笑辞世の「心から雪うつくしや西の雲」の旬が彫られている。
芭蕉が金沢へ着いたのは七月十五日で、二十四日まで九日間滞在した。
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「わたしの芭蕉」 加賀乙彦 講談社 2020年発行
あかあかと日は難面も秋の風
これも、太陽と風の二点セットである。
「あかあかと」でA音の勢いがつき、残暑の日光の力を感じさせられる。
一転、秋の冷風で慰められ、そこにもA音が用いられていて、
自然の力と慰めが見事に表現されている。
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