暑い日が続きます。それでも北海道は平年並みとかで、日の当たらないところへ行けば割と過ごしやすい感じです。九州の大雨、関東の猛暑と水不足。
どうぞ健康管理には十分にお気を付け下さい。
噛むことの意味
「健康への取り組み」より
お口の健康を維持できれば、健全に噛むことができます。
よく噛んで食べることを実行する(一口で60回以上噛んで食べる)と、それまでの暴飲暴食が嘘のように小食で済むようになり、 肉類をはじめ、脂っこい食物があまり欲しくなくなります。体重も健康体重に変わり、病気が治っていきます。欧米には、 食物を噛んで病気を治すことを「フレッチャリズム」という表現があるくらいです。
日本咀嚼(そしゃく)学会元理事長の斎藤 滋先生は、時代と共に噛む回数がどう変化してきたかを、当時の食べ物から推測した結果:
現代人が1回の食事で噛む回数は、弥生時代の6分の1以下、食事時間も5分の1ということがわかりました。戦前と現代を比べても噛む回数、 食事時間ともに、半分以下に減っているそうです。
不十分な噛み方がどのような弊害をもたらすかを大勢の方たちにご理解いただき、実行していただかないと、私たちは次の世代に バトンタッチをする責任をきちんと果たせなくなります。
日常生活で「よく噛む」ことを実行すれば、次のような効果が現れますのでぜひ再び、お薦めしたいと思います。
むし歯と歯周病を予防する
よく噛むと唾液がたくさん出ます。この唾液がむし歯菌によって砂糖から作られた酸を薄め、歯の表面が酸で溶ける(脱灰)のを防ぎ、 溶けかかった歯の表面が、もとの状態に戻る(再石灰化)のを助けるのです。
つまり、飲食物によって、歯の表面が溶けかかったかと思えば、唾液がその溶けかかったところを元に戻す・・・・このような ダイナミックなドラマが絶えず起こるのは「唯一」お口の中だけです。よく噛むことが唾液の分泌を促し、むし歯予防につながるのです。
また、よく噛むと歯のまわりの食べ物の流れが良くなり、歯の汚れが落ち、歯ぐきもマッサージされます。そうすると、 歯ぐきは強くなり、歯の周りの骨(歯槽骨)もしっかりして歯周病にかかりにくくなります。
記憶力アップ! 頭が良くなる
よく噛むと脳細胞の代謝活動を盛んにさせ、脳の血液循環をよくします。つまり咀嚼には、脳の発達と活動を促進させる働きがあります。
現在、記憶や学習に関係する化学物質として、コレチストキニン、ボンベシン、ニューロペプチドや酸性線維芽細胞増殖因子(α -FGF ) などが知られています。
このうち特にα -FGF は新生児の脳の発達、脳細胞の再生修復、海馬の記憶中枢ニューロンの活動促進、条件回避学習の成績向上などの 作用があることが報告されています。
よく噛んで食べると、脳内にこのα -FGF が増加します。つまり、記憶力を増進させて学習能力を向上させることになるのです。
肥満を防止し、癌や糖尿病などの生活習慣病を予防する
よく噛んで食べると唾液と十分に混ざり、デンプンは消化酵素のアミラーゼで消化され、麦芽糖にかわり、早く血中の血糖値を高め、 脳がこの血中の糖分を察知して満腹中枢に知らせ、満腹感を感じさせて、それ以上食物をとることを中止させます。
したがって、よく噛んで食べることにより、過剰なカロリーの摂取を防止することができ、肥満や糖尿病を予防することになるのです。
また、唾液を 30 秒以上作用させるだけで、食品に含まれる様々な発ガン物質の毒性を唾液に含まれる酵素が消してくれるという研究結果が 出ています。つまり、よく噛んで(理想的には一口 30 ~50 回噛む)時間をかけて食事をとることで、癌の予防もできるのです。
容貌、表情が良くなる
「ブス」の語源
ひと頃、新聞紙上を賑わせたトリカブトという植物があります。このトリカブトを漢方薬(生薬)では「附子(ブシ)」といって、強心剤、 強精剤に用いていました。ヒトがこれを多量に飲んだり、傷口から入ったりすると、顔面蒼白、呼吸中枢に麻痺を起こし、同時に感情や思考力が 停止し、無表情となります。この状態を「ブシ」による顔、なまって「ブス」というようになりました。したがって、顔に動きのない、 感情のない能面のような顔をブスと表現するようになったわけです。
一方、顔を構成する要素の中で特に目と口は直接動的な機能をもって変化するので、外形の美醜に大きく影響すると考えられます。 よく噛む習慣をつけることによって、顔に動きが出て、明るい表情を作ることになるのです。
ボケを予防する
よく噛むことによる刺激によって大脳の細胞が活性化されます。具体的には噛む刺激が下顎骨をささえる顎関節やその付近の筋肉 (側頭筋、咬筋、内・外翼突筋)など口を開閉する筋肉群の感覚受容器(筋紡錘=錐内繊維という)に情報を送り、大脳皮質を刺激し、 また、覚醒中枢である脳幹網様体というところに伝わり、脳の活動を活発にします。したがって、噛む筋肉が活動しているときは、 チュウインガムを噛むように眠くならないのです。ということは、大脳の働きである記憶、認識、思考力、判断力、集中力、注意力などを 高め、脳の機能を著しく活発にし、老化やそれに伴うボケを防止します。
また、噛むことは下顎を動かすことであり、顎を動かすたびに脳と海綿静脈洞及び翼突筋静脈叢間の静脈環流が行われ、顎を動かす運動が ポンプとなって脳にあった古い血液を心臓へ送り返す循環作用が行われます。そして、新しい血液が脳にいき、脳の働きを活性化して、 その結果、仕事の能率をあげることにもつながります。
さらに、よく噛んで唾液をたくさん出せば、唾液線ホルモンに含まれる NGF (神経成長因子)と呼ばれるホルモン、これは神経の 発育促進に関係していますが、これをたくさん分泌させることになり、脳の神経細胞にもいい影響を与えますから、ボケ予防に役立つことになります。
肌が美しくなる
よく噛んで唾液をたくさん出すことで、それに含まれる唾液タンパク質の中で、パロチン(俗に若返りホルモンと呼ばれます)は、 骨や筋肉などを丈夫にして老化を防ぎます。この唾液タンパク質は耳下腺から分泌され、血色のいい顔、肌の張りをもたらし、若さを 保つのに大切なはたらきをしています。また、 EGF (表皮成長因子)と呼ばれる唾液タンパク質は、皮膚や歯、口の中の粘膜、胃腸、 血管等の増殖と増進に一役買っています。 皮膚などの細胞では、細胞分裂を繰り返して、古いものは死に、たえず新しく入れ替わって いますが、その細胞分裂を EGF が促進します。つまり、よく噛めば、 EGF などの分泌も盛んになり、若々しい体と美しい肌を保つことになります。
唾液にはアミラーゼ等の消化液が含まれ、噛めば噛む程消化液が分泌され、胃腸の負担を軽くしてくれます。 また、胃液の分泌も促してくれます。さらに、唾液中のパーオキシダーゼは、一口に30回以上噛めば発癌物質を解毒する作用をもちます。 また、よく噛むと耳下腺からパロチンという若返りホルモンも分泌されます。
人体の力は腸で作られるわけですから、身体の効果を最高に引き上げるには、まずよく噛む事が大切です。物は小さくすれば小さくする 程大きな力を生むのです。それだからこそ、スムーズに生気の流れが正され、健康を得ることができるのです。