今日は、職場にある受水槽タンクの清掃日であった。
年に1度行われる。
清掃中、一時的に断水となることもあって、休日があてられる。
業者への支払担当者ということで、わたしが立ち会うことになった。
休日出勤は、ずいぶん前に、病院の医事課に勤めていた時以来である。
1年余り、籍を置いたが、どうしても自分の居場所とは思えず、そのまま
異動になった病院勤務であるが、ひと月に1度、土曜日の、半ドン出勤は、
どういうわけか、嫌いではなかった。
医事業務を委託されている会社の方と、ふたりひと組の当番制であった。
土曜日は、基本的に休診日である。
仕事と言えば、急患の受付や、ポツリポツリとやってくる、支払いの対応だけである。
平日のように、子供の患者の泣き叫ぶ声、走り回る音、それを上回る保護者の金切り声も聞こえない。
廊下を歩くスタッフも、早歩きではなく、普通の速度で歩いているように見える。
入院施設もあるので、建物の中には、それなりに大ぜいの人がいるのであるが、
外来の方はしいんと静まり返っている。
その静けさが、平日と対象的で、際立っていた。
電話もほとんど鳴らず、スタッフも滅多にやってこない、
何にも阻まれずに、たまった仕事を片付けるのは、爽快であった。
さて、本日。
事務所につくと電気はついておらず、誰も出勤していないようである。
年度初めと違って、この時期は、休日にまで来てこなす仕事もないのだろう。
電気をつけ、 暖房のスイッチをいれると、吹き出し口から、ボオーッと勢いよく風の
送られる音が聞こえる。
たったひとりのために、暖房をつける、ちょっとした罪悪感と、贅沢な感じ……。
業者さんはまだ来ていないようだ。
席に座り、ぼんやりと事務所の中を見回す。
職員の数の多い職場のこと、平日は、朝出勤すると、すでに室内は、
ざわついており、気の早いお客さんがすでに、カウンターで
接客を受けていたりする。
人気のない室内が、さらに広く感じられる。
柱時計の数を数えてみる。
丸い飾りけのない時計に混ざって、この建物ができた時から
あると思われる、年代ものの、柱時計がひとつ。
室内の空気を循環させるための扇風機が、数台。
右側の壁際に並んだキャビネの上は、本棚になっていて、資料や専門書が、
ぎっしり詰め込まれている。
普段は、職員のほうに、目が向いてしまい、こうしたものに注意が全く
いっていなかったことに気付く。
やがて清掃業者がやってきたので、挨拶をして、鍵を渡す。
するともう、さしあたって、することがなくなった。
医事課にいる時のように、たまった仕事もない。
そもそも、土曜日には、パソコンの会計システムは、動かないのである。
隣のS氏の席に目をやる。
机の上にある、スヌーピー柄のペン立てには、筆記用具に混ざって、
先日事務所で発見された、落とし物の、証明写真が差してある。
落とし主が見つかったら、早速手渡そうと思って、取ってあるのだろう。
職場で起こるすべてのことに、責任をとろうとする、S氏らしいことである。
机の左端には、大中小と切り分けられたメモ用紙が、几帳面にクリップに留められて
置かれている。
真ん中には、決裁のおりた大量の書類。
それらを覆うように、オレンジ色の大ブリなハンカチが、かかっている。
コーヒーの空き缶が、置いたままになっているのは、
仕事の途切れることのない、S氏のこと、どうやら、”捨てるヒマ”もなかったらしい。
手道無沙汰をもてあましたので、お茶の時間にする。
コーヒーだのお茶だのは、平日でも飲んでいるのだが、
なにぶん、人通りの多い職場のこと、さらに隣のS氏に用事を頼もうと、
職員がすぐ脇で、順番待ちをしていることもあって、
なかなか落ち着いた気分で、休憩できないのである。
かくして、2時ほどで、清掃が終わった。
今日やったことと言えば、挨拶をして、鍵を渡し、お茶を飲みつつ、
どら焼きを食べ、完了届に確認のサインをし、鍵を受け取って、車庫の戸締りを
したことぐらいである。
どら焼きはともかく、これだけだったら、何も職員をひとり、わざわざ
休日出勤させなくても、守衛さんにお願いすれば済んだことである。
こんなことを書くと、
「光熱費、税金から出てるんですけど!!
しかも、暖房の設定温度、バカみたいに上げやがって」という
お叱りの声が聞こえてきそうである。
が、まあ、早起きして、電車を乗り継ぎ、てくてくと歩いてここまでたどり着き、
とりあえず、用事は足りたのであるから、その辺は、免じてやっていただきたい。
年に1度行われる。
清掃中、一時的に断水となることもあって、休日があてられる。
業者への支払担当者ということで、わたしが立ち会うことになった。
休日出勤は、ずいぶん前に、病院の医事課に勤めていた時以来である。
1年余り、籍を置いたが、どうしても自分の居場所とは思えず、そのまま
異動になった病院勤務であるが、ひと月に1度、土曜日の、半ドン出勤は、
どういうわけか、嫌いではなかった。
医事業務を委託されている会社の方と、ふたりひと組の当番制であった。
土曜日は、基本的に休診日である。
仕事と言えば、急患の受付や、ポツリポツリとやってくる、支払いの対応だけである。
平日のように、子供の患者の泣き叫ぶ声、走り回る音、それを上回る保護者の金切り声も聞こえない。
廊下を歩くスタッフも、早歩きではなく、普通の速度で歩いているように見える。
入院施設もあるので、建物の中には、それなりに大ぜいの人がいるのであるが、
外来の方はしいんと静まり返っている。
その静けさが、平日と対象的で、際立っていた。
電話もほとんど鳴らず、スタッフも滅多にやってこない、
何にも阻まれずに、たまった仕事を片付けるのは、爽快であった。
さて、本日。
事務所につくと電気はついておらず、誰も出勤していないようである。
年度初めと違って、この時期は、休日にまで来てこなす仕事もないのだろう。
電気をつけ、 暖房のスイッチをいれると、吹き出し口から、ボオーッと勢いよく風の
送られる音が聞こえる。
たったひとりのために、暖房をつける、ちょっとした罪悪感と、贅沢な感じ……。
業者さんはまだ来ていないようだ。
席に座り、ぼんやりと事務所の中を見回す。
職員の数の多い職場のこと、平日は、朝出勤すると、すでに室内は、
ざわついており、気の早いお客さんがすでに、カウンターで
接客を受けていたりする。
人気のない室内が、さらに広く感じられる。
柱時計の数を数えてみる。
丸い飾りけのない時計に混ざって、この建物ができた時から
あると思われる、年代ものの、柱時計がひとつ。
室内の空気を循環させるための扇風機が、数台。
右側の壁際に並んだキャビネの上は、本棚になっていて、資料や専門書が、
ぎっしり詰め込まれている。
普段は、職員のほうに、目が向いてしまい、こうしたものに注意が全く
いっていなかったことに気付く。
やがて清掃業者がやってきたので、挨拶をして、鍵を渡す。
するともう、さしあたって、することがなくなった。
医事課にいる時のように、たまった仕事もない。
そもそも、土曜日には、パソコンの会計システムは、動かないのである。
隣のS氏の席に目をやる。
机の上にある、スヌーピー柄のペン立てには、筆記用具に混ざって、
先日事務所で発見された、落とし物の、証明写真が差してある。
落とし主が見つかったら、早速手渡そうと思って、取ってあるのだろう。
職場で起こるすべてのことに、責任をとろうとする、S氏らしいことである。
机の左端には、大中小と切り分けられたメモ用紙が、几帳面にクリップに留められて
置かれている。
真ん中には、決裁のおりた大量の書類。
それらを覆うように、オレンジ色の大ブリなハンカチが、かかっている。
コーヒーの空き缶が、置いたままになっているのは、
仕事の途切れることのない、S氏のこと、どうやら、”捨てるヒマ”もなかったらしい。
手道無沙汰をもてあましたので、お茶の時間にする。
コーヒーだのお茶だのは、平日でも飲んでいるのだが、
なにぶん、人通りの多い職場のこと、さらに隣のS氏に用事を頼もうと、
職員がすぐ脇で、順番待ちをしていることもあって、
なかなか落ち着いた気分で、休憩できないのである。
かくして、2時ほどで、清掃が終わった。
今日やったことと言えば、挨拶をして、鍵を渡し、お茶を飲みつつ、
どら焼きを食べ、完了届に確認のサインをし、鍵を受け取って、車庫の戸締りを
したことぐらいである。
どら焼きはともかく、これだけだったら、何も職員をひとり、わざわざ
休日出勤させなくても、守衛さんにお願いすれば済んだことである。
こんなことを書くと、
「光熱費、税金から出てるんですけど!!
しかも、暖房の設定温度、バカみたいに上げやがって」という
お叱りの声が聞こえてきそうである。
が、まあ、早起きして、電車を乗り継ぎ、てくてくと歩いてここまでたどり着き、
とりあえず、用事は足りたのであるから、その辺は、免じてやっていただきたい。