TOMATOの手帖

日々の生活の中で出会う滑稽なこと、葛藤、違和感、喪失感……などをとりとめもなく綴っていけたらと思っています。

おなじみさん

2021年06月04日 | インポート
近くにセブンイレブンがあるので、セブンミールを頼んでみた。
一食分の調理素材が小分けにビニール袋にはいっており、それを調味料と合わせて炒めるだけという便利な商品である。ほかにもご飯付、ご飯なしの弁当もある。
ひとりぐらしで、これだけの種類の素材をちょっとずつ集めるのはかえって割高になってしまう。いったん材料を買ったら、来る日も来る日も同じ料理を食べる羽目にもなるので、こういうサービスはありがたい。
2,3回ほど通ったころだろうか、会計を終わると、「いつもありがとうございます」というお礼の言葉がかえってきた。店舗のスタッフは年配、学生風、主婦、さまざまなかたがたでローテーションを組んでいる。とてもこちらの顔まで覚えているとは思われなかったので、非常に以外に思われた。
高級料理店のお得意さんなら自慢にもなるが、手抜き料理の素材を調達しようとはいったお店で、名前を覚えられるのってどうなの? とちょっと複雑。だったらおまけになにかつけてほしいな、と卑しい気持ちも湧き上がる。

そういえば、昔、職場の近くにモスバーガーがあった。来る日も来る日も、お昼近くになると電話注文して、ハンバーガーを食べに行った。そのうち、来店すると、やはり、いつもありがとうございますのご挨拶がかえってくるようになった。ファストフード店って基本的には匿名性の店である。しかし電話注文する際に名乗っているのだからしかたない。

さらに、電車でひと駅のところにお気に入りのコーヒー店があった。炭火アイスコーヒーとトーストとスクランブルエッグが、いつものわたしのお気に入りメニューである。いったん気に入ると、なにがなんでも同じものを注文し続ける性分なのである。決して偏食というのではないが、新しいものにチャレンジして、やっぱりいつものにすればよかったと後悔するのが嫌なのである。
ある日、新入りのウエイトレスさんが注文を取りに来た。
どういう風の吹き回しか、気分の変化か、その日はいつもとは違うアイスコーヒーを注文してみた。注文をとってカウンターに戻った彼女は、厨房のスタッフになにやら言われている。やがて、厨房から顔なじみのスタッフが出てきて、注文を繰り返した。いつもと違うので、ウエイトレスさんが注文を聞き間違えたと思ったらしい。
「それでいいんですよ、ちょっといつものとは違うものを飲みたくなったので」とわたし。わざわざ言い訳する必要があることなのかどうかわからないが、新入りのウエイトレスさんの無実ははらさなくてはならない。
どこでも、顔を覚えていてくれるようになるのは有り難いが、時にはそれがわずらわしいと思うできごとも発生する。


コメント (2)
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