TOMATOの手帖

日々の生活の中で出会う滑稽なこと、葛藤、違和感、喪失感……などをとりとめもなく綴っていけたらと思っています。

簡単には逝けまへん

2022年07月05日 | エッセイ
相続が発生したときの事務手続きを引き受けてくれるサービスがあるというので、概略を説明していただこうと、銀行に赴いた。
本来なら両親も伴いたかったのだが、コロナが再拡大中ということで、彼らは4回目の予防接種受けてから来所、または訪問を受けることになったのである。
ロビーで待っている間にラックを見ると、相続系だけでも、実にさまざまなタイトルのサービスがあることがわかる。
おひとり様のための終活応援サービスなどという、思わず手に取ってめくってしまうものから、人生100年応援信託、遺言について考えてみませんか?というようなもの、税金について漫画でわかりやすく解説したものまで……。
中をめくると、「万が一の場合」とは書かれはいるものの、その「万が一」が起こりうるべくして起こるような例として記載されているので、安心というよりもむしろ、ここまで準備しておかなくてはいけないのか……と不安になってしまう。
 順番がきて、コンサルタント氏が登場すると、説明し慣れているらしく要領よく説明してくださる。
あちらも商売なのでそこを差し引いて考えなくてはならないが、こちらにとっても、煩雑な事務をいくばくかの金銭と引き換えに引き受けてくれるのであればありがたいというような気持にさせられる。
一番救われたのは、被相続人の出生からの今までの全部の戸籍を取らなくてはならない事務も、(もちろん無料ではないが)、銀行からの紹介をうけた司法書士氏に委任できるという話である。
両親のように、田舎から出てきて何度も戸籍を移している者は、順繰りに遡るだけで大変な労力である。
村が市に併合されたり、町の表示が変わっていたりするのなんてざらである。
管轄の役所を探し出すだけでも大変だ。
両親とも、次男次女なので、彼らの両親を見送ったときの事務手続きを全く経験しておらず、そのため、娘のわたしに教えることができないのをたいそう残念がっていた。

今日、概略を聞いただけなのに、頭が飽和状態。
最初に耳の右から聞いたことが、左の耳へとどんどん抜けていくようであった。
こういう事務をチャッチャとこなせる専門の税理士や司法書士って、ホントすごいわあ、と純粋に感心するばかり。
たまーにその専門性を悪事に利用しちゃう人もいるみたいだけど、完全犯罪に使おうとするなら、さらに完璧な知識が必要になるだろう。

ともかく、噂に聞いてはいたが、相続財産の多寡に関わらず、このテの事務手続きのなんとなんと煩雑で面倒なこと。
これでは、死者をゆっくり弔う気持ちの余裕も持てないのではないかしら、と思うほどだ。
見送ったあとの哀しみに浸っているいとまもないように感じられる。
そして本人にしたって、生前にやっておかなくてはならないこと、考えておかなくてはならないことは山ほどもあり、一度でも(たいてい一度ですが)お亡くなるたびに、相応なお金もかかるので、そうそう簡単には死ねないのだということがわかりました。
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする