TOMATOの手帖

日々の生活の中で出会う滑稽なこと、葛藤、違和感、喪失感……などをとりとめもなく綴っていけたらと思っています。

『怪物』

2023年06月03日 | エッセイ
台風接近中、土砂降りの中、映画『怪物』を観に行った。
シニア料金(60歳)で鑑賞できるようになって初めての映画である。
コロナ以降、レジだけでなく、オンラインやシステム入力による手続きがあっちでもこっちでも増えて、そのたびに新しいやりかたの前にオタオタとする。
映画館でも、対面販売と端末操作の二本立てだったのが、もはや機械操作のみのチケット販売になっている。
インフォメーションで尋ねると、「機械操作にフォローは必要ですか」と聞いてくださる。
いかにも、機械音痴に見えたのだろう。(実際そうなのだが)。
ここは素直にお願いして端末機のところまでついてきてもらった。
操作自体は簡単で、わざわざ来てもらったことを申し訳なく思ったが、座席を選ぶときの画面が小さ過ぎてよく見えない。
このあたりの通路側の席、と指定して、教えてもらう。(やっぱり来てもらってよかった)。
最後に、「(60歳以上を確認するための)免許証の提示は必要ですか?」と尋ねると、あっさりと「必要ありません」と言われた。
なんの疑いもなく、60歳以上であると認められたことに、複雑な思いもする。
ちょっとは疑ってほしかったわ、とひそかに思う。
館内は、天候の影響か思ったよりも空いている。

肝心の映画はというと――。
最初、安藤サクラさん演じる母親が、もっともまともな”人”なのかと思っていたが、映画が進むにつれて、実は子供から見たら、うっとうしい”怪物性”を持った母という生き物だったというのがわかってくる。
映画の最初と最後とでは、登場人物に対する見方ががらりと変わる。
誰の心の中にも怪物は存在するのだが、それでも本物の怪物なんて存在しないんだよ、というようなメッセージ性。
ちょっとしたタイミングや偶然で”事実”は作られ、変えられていく展開もおもしろかった。
是枝監督の選ぶ子役は、本当に味わいのある子たちだなあと思う。
ちょとしたしぐさや、感情の表現のしかたなど、演技力も素晴らしい。
『万引家族』同様、虐待されていた子供たちはその後どうなるんだろうというモヤモヤした気持ちが残った。

ただ、時間軸が錯綜するので、過去場面との切り替えについていけないところもあったのが残念。
サクラさんたちの住んでいる家が、マンションなのか、戸建てなのか、矛盾しているように思える場面があった。
大きな賞を受賞した作品だとそれだけで、理解できない自分の鑑賞眼のほうを疑ってしまいがちだ。
できればもう1度、テレビで放送されるのを待って確認したい。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする