日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

仏大手原発企業の経営危機から想う

2015年08月05日 09時23分37秒 | 日々雑感
 アレバは、フランスに本社を置く世界最大の原子力産業複合企業であり、傘下に複数の原子力産業企業を有する。このアレバが業績不振に陥っているようだ。2014年決算では、約6700億円の純損失、赤字は4年連続らしい。先進国における原子力発電需要の低迷と、独自に開発した原子炉建設の大幅な遅れが原因との報道である。
 現在、世界の原子力発電企業は5つの企業グループに分類される。斗山重工(韓国)、ロスアトム(ロシア)、東芝-ウエスチング・ハウス、日立-ゼネラル・エレクトリック、三菱-アレバ の5グループだ。このように日本は世界の原子力発電を寡占しているのだ。日本は核兵器を持たないが、原子力に関する技術は高く、潜在的な核保有国とも言える。日本が核兵器開発をしないのは核不拡散条約の縛りがあるかもしれないが、日本の平和憲法のお蔭でもある。
 核兵器の保有は政治的な意味で絶対的な抑止力となるであろうが、経済面での絶対的な優位さは無さそうである。原子力大国の米国でも発電事業は単独では存続が困難となり、日本企業と提携している。欧州各国は原発より自然エネルギーに舵を切り始めている。原発のリスク、新規開発のコスト高、廃棄物の処理問題等、問題山積みで曲がり角にあることを認識しているのだ。
 ところが、日本では、今年4月、政府自民党は2030年の総発電量に占める「ベースロード電源比率」を2010年時点と同じ6割に戻すという方向で検討に入った。その割合から計算すると、原子力よる電力供給が、全体の2割程度以上必要になってくるらしい。原発比率25%だとすると、震災前からとほとんど同じことになり、自民党の公約である「原発比率を出来るだけ下げる」に違反することになる。原発比率をストレートに出さず、ベースロード電源比率という形でひとくくりにしたのは、これを曖昧にするためだと言われる。
 先述のように、日本は世界の発電事業を寡占しているのだ。世界の流れは自然エネルギーに向かっているのに、日本は現状維持、すなわちこの寡占状態を死守したいのだ。一昔前のダム建設問題や最近の新国立競技場建設問題等、一旦決めると方向修正が極めて困難になるのが日本の特徴だ。縦割りの官僚機構ではそれぞれ蛸壺を掘りその中で一生懸命努力するが、蛸壺から出て全体を見回し方向修正する組織や人がいないからなのだ。官僚機構の名目長となる政治家は、すべての知識を官僚から受けるので、官僚を超えることがなかなか出来ない。
 一方、中国の地球温暖化対策では、国内総生産(GDP)当たりの排出量を2030年までに05年比で60~65%削減すると、中国の李克強首相が表明した。そこで活躍するのは原発であろう。現在中国は27基を建設中であり、原発の将来の成長の50~60%は中国になるらしい。そのうち世界の原発大国となろう。現在中国で建設中の原発に日本企業がどこまで寄与しているか分からないが、いずれ中国独占状態となり日本の企業は疎外される運命にあろう。日本の官僚はどこまで将来を見据えているであろうか。(犬賀 大好-152)