日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

韓国の半導体産業の黄昏

2019年07月31日 09時07分59秒 | 日々雑感
 韓国は国内総生産(GDP)の約40%を輸出が占める輸出立国で、輸出のうち20%を半導体が占め、半導体産業が国を支えているのだ。しかし、今、米中貿易戦争の煽りを受けて、半導体は不況の真っ最中、一年前と比べ、記憶素子であるメモリーの価格は半値になって、市場にあふれているのだそうだ。

 先日、日本が半導体製造に関わる3品目の輸出管理を強化したが、市場の混乱は思いのほか生じていないらしい。3品目の1つ、レジストは半導体の製造に使うが、日本政府が管理を強化したレジストは極めて高品位のもので、半導体の儲け頭のメモリーの製造用ではなく、仮に日本からレジストの輸入が途絶しても韓国メーカーは直ちには困らないそうだ。輸出強化の対象となったフッ化水素も同様で、これに関してもメディアが大騒ぎするほど、韓国の半導体メーカーは困らないそうだ。

 日本政府は、この輸出管理を大分以前から練りに練って立てた作戦と説明しているが、韓国に即致命的な打撃を与えない武士の情けを掛けた大人の対応であるが、韓国は気が付くであろうか。

 先日、韓国政府は、半導体の素材、部品、設備の開発に毎年約920億円規模の集中投資を行う方針を示したという。韓国は半導体の製造が国を支える一大産業だ。日本の輸出規制が無くても、半導体関連の素材などの国産化比率を引き上げる国の方針は当然だ。

 さて、半導体と言っても儲け頭はメモリである。その生産は、かっては米国であったが、それが日本に移り、そして今や韓国に、その内中国に移るであろうと言われている。

 1980年代に最盛期を迎えた日本のメモリ事業も、1991年半導体工場のリストラが始まったのを切っ掛けに次第に韓国が勃興してきた。日本では単独企業では立ち行かなり、複数の企業が集まり1999年にはエルピーダメモリが、2010年にはルネサスの国策企業が誕生したが、現在会社更生法の適用を受けたり、赤字経営に陥っている。

 韓国の半導体産業の立ち上がり時には日本技術者の貢献が大きかったと言われている。日本の不振に合わせて日本の技術者が韓国企業に大量に流れたからだ。現在は日本技術者の貢献はほとんど無いと思われるが、半導体技術は裾野が広い。将来に向けて10年間1兆円に近い投資を行おうとしているが、それを支える人材が十分育っているだろうか。

 さて、メモリーは儲かる一方で好不調が激しい。現在の不振の主原因は米中貿易戦争の煽りかもしれないが、それを使用するインターネット機器等の普及の程度等需要によって大きく左右されるからだ。

 それにもっと本質的な要因があるそうだ。半導体は技術の流れが速い一方で、その製造には莫大な設備投資が必要だ。一度設備投資をすると、その投資資金を回収するために時間がかかる。その間にも技術が進み次の投資が必要になるが、問題はそれまでに資金の回収が出来ているかである。もたもたしていると、新たな所に最新鋭の工場が生まれるとの歴史がある。

 半導体事業は人材と資金が必要だ。韓国の1兆円規模の投資計画は当然だとして、それを支える人材と資金はあるのか、他人事ながら心配になる。すぐ後ろには強敵中国が控えており、韓国の半導体事業も黄昏期に入ったのではないかと懸念される。2019.07.31(犬賀 大好-568)