2020年11月予定の米大統領選の与党・共和党候補として、トランプ大統領の他に、サンフォード前下院議員とウェルド元知事が名乗りを上げている。しかし、近代のアメリカでは自分の所属政党の候補者指名争いに敗れた現職の大統領は存在していないとのことで、トランプ氏は間違いなく指名されることになるだろう。
トランプ氏はいろいろ物議を醸す人物であるが、共和党の先述の2候補は無名である上、トランプ氏の共和党員の間の人気は相変わらず高く、前例に寄らずとも指名されること確実である。しかし、大統領の本選で民主党の候補に勝って、大統領になれるかとなると五分五分とのようであるため、成果を上げようと焦っているが逆風も強いようだ。
目下最大の逆風は、ウクライナ疑惑をめぐる弾劾訴追決議案が米下院本会議で可決されたことで、トランプ米大統領は米政治史上3人目の弾劾訴追された大統領という不面目な称号を授けられたことである。
しかし、大方の予想に反し、直後の世論調査でも弾劾訴追で支持率急落とまではならなかったようだ。また、大統領を罷免するには上院の3分の2以上の賛成が必要だが、上院の共和党は結お束が固く、現状では罷免はほぼ不可能とのことであり、罷免が無理と知りながら弾劾訴追にこだわった民主党への風当たりが逆に強まるとの予想もあり、米国国内事情は複雑だ。
さて、民主党の大統領候補は10名以上が争っており、この春には指名争いが本格化するとのことだ。トランプ大統領は問題多い人物であるが、トランプ大統領の政策にとって代わる魅力的な政策が残念ながら誰からも聞こえてこない。
すなわち、トランプ大統領は、米国第1主義に基づく中国との貿易戦争開始、地球温暖化に対するパリ協定からの離脱、イランとの核合意離脱、更にロシアとの中距離核戦力全廃条約(INF)破棄等、国際協調を乱しているが、これらの問題にどのように向き合うか全く聞こえてこない。
今年11月の大統領選挙の争点は国際問題より国内の医療保険改革や移民問題であるそうだ。民主党の有力候補、サンダース上院議員はヨーロッパ型の社会福祉国家を志向し、ウォーレン上院議員は格差を是正するため、国民皆保険や富裕層への資産課税を主張しているそうだ。しかし、このような左派的な政策は、個人の自由を尊ぶ国民には評判がよくないとのことだ。
穏健派のバイデン前副大統領が最有力候補とのことだが、2度にわたり大統領候補に名乗りを上げていることから、新鮮味に欠きまた魅力的な政策を打ち出していない。
トランプ大統領の支持率は、40%を大幅に上回ることが無いが、米国経済の好調さを受けて再選されること間違いないとの声も聞かれる。日本はトランプ大統領に振り回され、世界もトランプ流自国第1主義が蔓延りつつあるが、民主党の誰かが大統領になっても国際情勢に余り変化が無いように思われる。
2020.01.04(犬賀 大好-563)