情報技術(IT)の進歩がインターネットやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)等の情報サービスの普及を促し、社会は急激に変化している。ITは情報の伝達を容易にする技術であり、知りたい情報がすぐに手に入る、誰とでもすぐに連絡が出来る、等のメリットが大きい。
情報は単に受けるばかりでなく発信することも可能であり、発信の際に個人名を出す必要の無いことから信憑性の無い無責任情報を発信することも可能である。この匿名性を悪用した偽情報や他人への中傷や誹謗も可能であるためあらゆる情報が氾濫しており、受信する側は充分に注意が必要だ。
また、公的機関、銀行や証券会社等をインターネットを介して利用することも可能であり、わざわざ外出する必要が無く非常に便利であるが、その利用のためには名前、年齢等の個人情報を登録しなければならない。
また、スマートフォンやパソコンを通した個人の位置情報や、ホームページやテレビの閲覧等に関する情報もサービス運営者には筒抜けであり、このように得られる膨大なデータはビックデータと呼ばれ、その活用法はアイデア次第であり、使い方によって非常に価値の高いものになる。登録時に好みの情報は入力されなくても、どんな情報を検索したかが分かれば趣味や好みを立ちどころに知ることが出来る訳だ。
例えば、個人の趣味を集め、年齢別、性別に分類すれば世の中今後どんなものが流行るかを予想することが可能になり、先手を打って商品等を開発することも可能になる。また、就職情報サイトを運営する企業が学生個人の就職活動状況を把握することも出来る為、内定辞退の可能性を予測することも可能になる。このようなデータは採用する側の企業にとって是非知りたい情報であるが、この行為は学生の個人情報を他人に明らかにすることにもなるため、国からの注意勧告が行なわれたそうだ。
ITの世界における各種のサービスは概してデータ数が大きいほど正確な情報となるため、多数の顧客を抱えた方がより優位な立場に立つことが出来る。少ないデータしか扱えない企業は自然に淘汰される運命だ。すなわち大きいことが有利な弱肉強食の世界であり、主導権争いは熾烈である。現在GAFAと呼ばれる情報サービス企業が世界に君臨しているのが典型だ。
GAFAとは、「Google」は検索エンジンで、「Apple」はデジタルデバイスで、「Facebook」はSNSで、「Amazon」はネットショップで世界断トツあり、それぞれの頭文字を取った呼び方である。これらの企業は世界中の膨大な数の顧客を抱える為、各顧客の国籍、性別、年齢や好み等のあらゆる個人情報を知ることが出来る。
膨大なデータを統計処理すると言っても機械的な計算後のまとめは人のすること、そこに作為が働く恐れが十分にある。すなわち、サービス企業は情報を独り占めして、自分に都合がよいように情報を細工できることになり、世の中を自分に利する方向に導くことも出来る危険性がある訳だ。
このような背景の下、様々な規制が必要とされているが、変化が急な上、概してIT企業は一国内に留まらず世界的な活動規模であるため、その規制の難しさが思い知らされる。2020.01.018(犬賀 大好-564)