新型コロナウイルス(正式名をCOVID-19と呼ぶようだ)の感染拡大が一向に収まらない。同じコロナウイルスの仲間であるSARSは発生から1年足らずで終息宣言が出され、現在終息宣言が出されていないMERSも感染拡大は余り心配されていない。
SARSやMERSのコロナウイルスのワクチンが開発されていないのに、感染拡大が抑え込まれているのは何故か。SARSの再生産数は2~5であり患者1人が最大5人に感染させるが、同じコロナウイルスであるCOVID-19は1.4~2.5と暫定的に見積もられており、今のところSARSよりは広がりにくいと考えられているのに、現状果てしなく拡大していく。感染力は学術的には再生産数で表現されるが、その数値は結果を表しているだけで何故そうなるのかを説明していないのが問題だ。
さて、SARSは2002 年の11月に中国の広東省で始めて確認され、インド以東のアジアやカナダに広がったが、翌年7月に1年足らずで終息宣言された。一方MERSは2012年にアラビア半島で確認され、これらの国々を中心にヨーロッパ地域などにも感染が拡大し、現在も患者が断続的に報告されているようだが、日本にはほとんど影響を与えていないし、世界的な広がりも見せていない。
症状は、両者ともに悪寒、頭 痛、全身倦怠感、筋肉痛などで、COVID-19の場合とほぼ同じだ。潜伏期間はSARSの場合、2~7 日程度、MERSの場合、2~14日程度と言われており、この点でも大差ない。これらの特性は同じ遺伝子を有するコロナウイルスの引き起こす疫病だと理解すれば納得できる。
感染経路もいずれも呼吸器系の疾患であるので鼻や口からの感染であり、接触感染、飛沫感染、や空気感染等が考えられているが、同じコロナウイルスであるからには大きな差があるようには思えない。
しかし、感染拡大の大きな要因は、SARSやMERSでは病状がある程度進行した患者からの感染が主であるのに対し、COVID-19では症状が現れる直前が感染力ピークらしいと言うことだ。発症の少なくとも2日前から感染性が非常に高い状態にあることを示す中国の論文があり、この論文だけでは信ずるに今一であるが、日本でも感染力は発症2、3日前から起こり、感染力のピークは発症後0.7日と推測されることが確認されているとのことだ。
WHOの関係者は、SARSやMERSのウイルスと異なり、COVID-19は上気道に付着し易く、ウイルスが上気道に存在することで、具合が悪くなり始めた段階で体内に潜むウイルス量がピークに達する可能性がある、と述べたそうだが、これが意味するところは素人にはよく理解出来ない。
ウイルスは自力では増殖できず、人間を含む動物の細胞の中でしか増殖できないことは知られている。病気はウイルスが細胞の中に入って悪さをすることから起こるのであろうから、このCOVID-19ウイルスは細胞に害を与えることなく増殖する能力があるとのことか。そうだとすると、無症状・軽症の感染者が全体の8割程度いると言われているが、どうも真実と思えてくる。
そうであるならば感染予防対策に力を入れるより、感染者の早期発見と重症となりそうな者の素早い見分け、高齢者や基礎疾患のある人の治療施設の確保、症状の急変に備える体制作り等が、最重要と思われる。2020.08.01(犬賀 大好-622)