日本のエネルギー問題、財政問題や安全保障問題等は日本の将来を決める大きな政策課題であるが八方塞で身動き出来ない状態となっている。これらの問題は、長年問題があると認識されながらも、従来からの方針に囚われ、問題を先送りし、積もりに積もっている。
特にエネルギー政策は原子力関係で行き詰っている。すなわち核燃料サイクルがとっくに破綻しているのに、無駄と知りながらも莫大な資源を注ぎ込んでいるのだ。現在問題が顕在化しているのは核燃料の再処理工場の建設だ。原子力発電所で発生した使用済み核燃料を再処理する工場は高速増殖炉と共に、日本が国策として推進してきた核燃料サイクルの要だ。
しかし、高速増殖炉のもんじゅ計画が頓挫し、核燃料サイクルは既に破綻しているが、これに代わりプルサーマル計画を持ち出し何とか生き延びようと悶えている。
中止できない最大の理由がこれまでに原発で生じた使用済み核燃料の後始末だ。再処理工場の貯蔵プールには全国の原発から集まった使用済み核燃料計約2968本が保管されているそうだ。そこでの貯蔵施設はほぼ満杯状態で、電力各社は各原発施設内での保管を余儀なくされており、そこも近年中に満杯になるとのことで、再処理を急がなくてはならないのだ。
この難問を如何に打開するか、幾ら人工知能AIが進歩したところ解を示してはくれない。日本の最高の頭脳集団である筈の高級官僚群も任期は数年で、その間前任者の方針に従って大過なく勤めれば、次の役職を用意してくれるため、敢えて波風を立てない方が得だとの判断で、問題提起どころか、新たな提案も無く、問題先送りが専らである。
これらの高級官僚を使いこなす筈の国会議員も日本の将来より、自分の将来を最優先させ、この難問に目を背けている。
問題先送りの典型が、核ゴミの最終処分場だ。当面の問題を解決する為、最終処分場は県外に設置すると約束したため、今なお決められずにいる。2,3日前、北海道のある過疎地が候補として手を上げたが、補助金による地域興しが目的とのことで、住民の総意となるか極めて疑わしい。
日本の原子力政策はほとんどが国内問題であるのに対し、安全保障問題は米国との関係が深いため、政策転換はエネルギー問題以上に困難と思われたが、その一角を河野太郎防衛大臣が崩してくれた。7月15日、河野防衛相が、陸上配備型迎撃ミサイルシステム”イージス・アショア”を秋田県と山口県へ配備する計画を停止すると発表したのだ。
そもそもこの配備計画は、安倍首相がトランプ米大統領のご機嫌取りに導入を決めたと揶揄される兵器のひとつで、米政府に支払う費用は1兆円近いそうだ。河野大臣はこの配備計画中止を米国との相談無しに安倍首相との会談のみで決定したとの話であるが、トランプ大統領の怒りの声は聞こえてこない。してみるとイージス・アショアの配備は日米安全保障上からと言うより、単なる商売上の取引だけだったようだ。
さて、上記の配備計画の中止を受けて、ミサイル防衛戦略の見直しに伴う敵基地攻撃能力の保有論が再び頭をもたげて来たようだ。北朝鮮、中国を意識した戦略のようであり、核を有する国への対抗手段であるとすれば何とも考えが浅い。
一方沖縄の辺野古移転は、県民の反対、計画の杜撰さで問題山積みだし、折りしも防衛省は8月始め、鹿児島県の馬毛島の自衛隊基地の整備計画を発表した。両者の関係が不明だが、河野大臣の問題整理能力に期待したい。2020.08.15(犬賀 大好-626)