厚労省は2022年6月、2021年の出生数は81万1,604人で、過去最少となった前年の84万835人から更に2万9,231人減少したと報告した。15歳以上65歳未満の生産活動の中心にいる年齢層のことを生産年齢人口と称するが、大雑把に言えば生産に携わる15歳になる人間が15年後には前年より約3万人減少することになる。
生産年齢人口の減少は経済成長の鈍化を招き、強いては税収が減少する等がある他、社会保障制度の支え手である現役世代に対する受給世代の比率が高まることにより、社会保障制度をめぐる状況は厳しさを増すと言われる。
出生率と経済成長は一見関係ないようだが、歴代の政権が景気浮上の為の様々な施策を施してきたがいづれも旨く行っていない。出生率の減少は生産年齢人口の減少となり、経済成長の鈍化に結び付くとの関係は本質をついているのかも知れない。子どもは将来に対する希望であり、人々に生きる活力を与える。この活力が経済成長を促すのだ。労働力不足を外国人労働者の導入により補う動きもあるが,一時しのぎに過ぎないのかも知れない。
国の経済活動の活発さは国内総生産(GDP)で表され、その国の経済的な豊かさの指標とも言える。現在の日本のGDPは米国、中国に次いで世界第3位で今なお経済大国の位置を占めるが、1人当たりのGDPとなると2020年度日本は19位と低い。これは高齢者人口の増加に加え、デジタル化の遅れに起因する労働生産性の悪さが主因だそうだ。
昨年9月、菅前政権の目玉政策としてデジタル庁が発足した。日本の省庁や自治体は縦割り行政で、それぞれ個別の情報システムが構築され、そのため、省庁や自治体をまたいだデータのやり取りがスムーズに行えないと言う労働生産性の悪さの典型例があった。この改革には省庁の縦割り行政を打破しなくてはならず、官僚システムを大改築する必要があるが、その結果として労働生産性は上がるかも知れないが、GDPの増加があるだろうか。
国内総生産(GDP)は、国全体の人口にも密接に関係し、現在猛烈な勢いで人口が増加しているインドは、世界のGDPランキングでは、2030年には日本を抜き世界第3位になり、世界で第2位の経済大国になると予想されている。
しかし、生産年齢人口が増加する過程において経済成長が期待できるが、出生率が下がり始めると現在の日本と同様に少子高齢化の時代となり、インドも同様な問題を抱えることになるだろう。経済成長により生活が豊かになると出生率が下がる傾向にあることから確実にそのような時代がやってくるだろう。2022.08.06(犬賀 大好ー837)