日本の企業の今年5月の自社株買いは3兆2,000億円を超え、単月での金額としては過去最大となったそうだ。また昨年2022年の上場企業による自社株買いは過去最大の9兆2,220億円に達し、2002年以来最大となったとのことだが、今年は更に増えるだろう。
自社株買いが行われると市場に出回る株式数は減少し、1株あたりの価値が上がり株主は得することになるため、株主を重視する企業は自社株買いを増加傾向にあるのだそうだ。
また、最近株価の上昇が続いている。日経平均株価は6月13日に3.3万円台を回復し、所謂バブル景気の時期の1990年8月以来高値をつけた。株価はなぜ上昇しているのか。この原因は、以前海外投資家のマネーゲームの結果だと書いたが、企業の自社株の購入の影響もあるとのことだ。どちらの影響が強いのか、素人には分からない。
さて、自社株購入の資金に関してはメディアはあまり触れていないが内部留保からだとの話だ。内部留保とは、税引き後の利益から配当など支払われた後に残るお金とのことだが、2021年度の企業の内部留保が、金融・保険業を除く全業種で初めて500兆円を超えたそうだ。500兆円とは日本のGDPに匹敵する莫大な量だ。
これは異次元金融緩和で市中にお金が出回り、また異常円安で輸出企業は儲かり、本来は設備投資や人件費に回る筈の金が企業内に留め置かれた結果だそうだ。企業は、手元資金を内部留保として事業の将来的な成長のために充当するか、または自社株買いや配当として株主に還元するかのいずれかを選択することが出来るそうだが、有望な投資先が見つからないとして自社株を購入し株主に還元しているつもりだろう。
先述のように昨年の上場企業による自社株買いは過去最大の約10兆円となったようだが、企業の内部留保の500兆円からすれば、まだ氷山の一角だ。政府は従業員の賃上げ要求の原資に、安全保障や異次元子育て支援の財源不足の補充にこの内部留保に目を付けているとの話もあったが、現在どうなっているのだろう。筆者は内部留保の会計上の扱いに関して全く無知であるが、少なくとも企業は税金等で取り上げられるより、自社株を購入した方が得と考えているのだろう。
現在の株価の高騰は、マネーゲームの影響や内部留保のお金の為であり、日本の景気とは関係無いようで、喜ぶのは株を保有している資産家のみだ。このような状況が長く続くとは思えない。確実にやってくるのは少子化社会だ。
莫大な内部留保は異次元金融緩和の結果の金であり、投資先が見つからない企業は将来確実にやってくる少子化社会を見据えて、異次元少子化対策に投資すべきであろう。現在の政府の対策は婚姻数の増加に目を向けておらず、これでは少子化が解決されるとは到底思えない。内部留保の金を集めて、国際結婚促進財団設立等の知恵が出ないものだろうか。
2023.06.14(犬賀 大好ー922)